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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第61話 王子の決断

 第61話 王子の決断


 ニコラは、にこやかに夜会に華を添えていた。

彼との会話は楽しく、年代を問わず話しかけられた。

若き賢い王子は、存在だけで国民を明るくさせる。

今、ニコラに求められるデビューの年の役割としては

充分の事をしたのだった。


夜会が、何事もなかったかのように閉会し、

ニコラは顔つきを変えた。

父からは、既にこの件について全権をニコラにと通達が出ていた。

新しい世代への活躍が望まれている時代が来たのだ。


ここからだ。シャアルはフィルにかけられた言葉を繰り返す。

ニコラの元には、精鋭が集まっていた。

思いがけずメンバーに入っていたシャアル、レモンド、コナーも

時代の変わり目に自分が一緒に立っていることに、不思議な気持ちだった。

こうして少しずつニコラの目指す王国を作っていくのだろう。


ニコラは報告を聞き終えると、成果のあった事にうなずいた。

ハワード伯爵、家の者、栽培者、全て身柄は押さえてあった。

次の手配は集会のリーダーだ。

シャアルが、騎士隊を引き連れ、屋敷に向かう。

レモンドは、取りおさえたものの身辺を徹底的に洗っていた。

ニコラとシャアルは、この日を迎える前に

アリシアに嫌がらせしていた者全員を、別件で法にかけていた。

その後、中毒症状を抜くため医療部門と連携している。

残るニア・アバウが今日、アリシアに危害を加えようとした女性だった。

彼女は、運悪く法にかけられなかった。その為に中毒症状が強まったのだろう。


シャアルが戻ってきたら、尋問の結果を精査しなければならない。

コナーは人族の安全確認に追われていた。

幸い子供達は皆、無事だった。しばらくすると全員の安全が確認された。

ニコラはホッと胸をなでおろした。

この状況の中、どれほど無傷で国民を救えるか、

ニコラの中では、そこが第一目標となっていた。


そして、父とシャアルから受けた忠告についても考えていた。

どこで線を引くか。この言葉は、ニコラにとって重く、深く

今でも答えは見つからない言葉となった。

ニコラは思った。結局、王族は国民全ての幸せを願い、

それが完全に達せられることはないのだ。

だったら、自分は生涯をかけて、それを願おう。


そう決心した矢先、アリシアが危険な目にあった。これはニコラにとって

屈辱以外の何物でもでもなかった。手配もした、優秀な(つがい)もいた、

友人もいた、友人の騎士もいた。そうしてでさえも、友人や国民の完全な安全を

守ることは難しい。現実を思い知らされた瞬間だった。

やはり本人にも自衛の力が必要なのだ。


ニコラは父の歩んできた道に、想いを馳せた。

今では考えられないようなことで、つまずき、試行錯誤している。

自分が父と同じ道を目指すということは、自分も父と同じ道を歩むと言う事だ。

これから試行錯誤するのだろう。

歴史の流れを見れば、正義は必ず勝つと言うことなど幻想にすぎない。

そこに関しては、運や運命なのだろう。あとは自分が何を目指すかだ。


ニコラは真っ直ぐに顔を上げた。

表情を変えずに、指示を次々と出していった。

フィルは思った。これが普通の人として、

ただただ平穏な日々を送る能力の王子だったら、どうだったのだろう?

補佐する重役で、責務を分担するのだろうか?

王族は、いつ何時も最善を尽くさなければならない。

学生の頃からニコラは、いつも1番困難な道を選んできた。

彼が王子として産まれてきた事は、

もはや彼自身にその意思があったとしか思えない。


沢山の味方を増やさねば……。フィルは考える。

ニコラを真に想う者を増やさねばならない。

それでも、彼の重責は誰も変わってやれないのだから。


早くもシャアルが帰還した。自分が現場に到着するまでに

捕獲するように、指示を出していたらしい。

もうすでに自ら尋問に入っているとの伝言がニコラに届いた。

フィルは苦笑いした。シャアルの怒りの具合がわかろうというものだ。

ニコラと同じく、誰も許す気は無い。まあ、自分も同じだが……。


レモンドがニコラの元に戻ってきた。

ハワード伯爵の身辺調査が終了したと話す。

屋敷からは、山のような証拠が出てきた。

明日、もう一度屋敷を調査するように指示を出す。

ニアが中毒症状になっており、アバウ伯爵家も拘束されていた。

アバウ伯爵も彼女の兄弟も、知らないの一点張りを通していた。

屋敷の捜索で、何が出るかだ。


シャアルも報告に現れた。

「殿下、やはり借財の為に脅されておりました。

父君の投資の失敗で、どうにもならなかったようです」

ニコラはうなずいた。

「シャアル、ハワード伯爵の元へ」

「かしこまりました」

シャアルは直ぐに尋問に向かった。


ニコラは、窓の外に目をやった。

それは、この陰謀のように深く暗い漆黒の空だった。

これで、あとは黒幕を……。

ニコラは最後までやり遂げる為、再び瞳に力を込めるのだった。


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