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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第60話 疾風

 第60話  疾風


 控えの間に落ち着いた皆に、グラントはフルーツやお茶を

運んできた。少しでもリラックスできるよう、まずお茶を進める。

シャアルはシモンと騎士団で休憩時間になっているものを集め、

指示を出していた。

ロゼッタの父が、ここはグラントと一緒に引き受けようと言い、

シャアルは騎士を2名残し、動くことにした。


ここにアリシアを残して行くことが辛かった。

シャアルの腕の中で、アリシアは何度も大丈夫だと言った。

「シャアル様、大丈夫よ。今度も皆が一緒にいてくれるもの。

ご自分の思うままに動いて。私は大丈夫」

そのアリシアの言葉に、シャアルは自分の弱さを振り払った。

自分が1番にアリシアを信じなければ。

練習通り、彼女は結界を張れたのだ。

シャアルはまず、国王とニコラの元に向かった。


ニコラヘ、目配せして合図した。

ソツのない王子は、自然に人の輪から離れ、

カーテンの後ろに隠れる。

シャアルは急ぎ報告し、ニコラと打ち合わせしていた通り、

ある人物の捕縛を騎士団の精鋭部隊に指示した。

ニコラは父に、満面の笑みで近寄り

何やら話していた。国王も、にこやかな笑顔でニコラに話している。


ニコラがシャアルのところに戻ってきて言った。

「夜会が終了したら、動く」

フィルは後ろの近衛兵に指示を出していた。

ニコラは休憩と称して、控えの間へ向かった。

皆、夜会に出ずっぱりなわけではない。

こうして控えの間を使い、上手に休憩するのだ。


ニコラは部屋に入ると結界を張った。

「皆、大丈夫だった?!」

ようやっと落ち着いたところだったアリシア達は、

ニコラが現れて、驚いてしまった。

「ニコラ!!あなた、夜会を抜け出しても大丈夫なの?」

シャロンが、本当に驚いたように話した。

「大丈夫だよ。今日1日、真面目に王族の責務を果たしていたからね。

それより、気分はどう?」

「皆、大丈夫よ。グラントがお茶を持ってきてくれたの。

だいぶ落ち着いてきたわ」

ロゼッタが話した。

ニコラは、ホッとしたように息をついた。

「良かった。アリー、皆、ごめんよ。僕の注意が甘かった」

悔しそうにするニコラに、アリシアはとんでもないと首を振った。

「何を言っているの、ニコラ。大丈夫よ。あなたのおかげで

魔法も身についた。自分で身を守れることが証明できたわ。

半分以上、シャロンとシャアル様のおかげだけど……」

アリシアは、わざとふざけて話した。そんなアリシアに

ニコラは、申し訳なさそうに笑った。

「今、ヌヴェル伯爵がこちらへ来られるように手配したから。

グラントは、それぞれの家族を探してきて。君が戻るまでここにいる。

皆、ヌヴェル伯爵の指示にしたがって帰宅して。

ごめんね、せっかくの夜会なのに。

この埋め合わせは必ずすると、父上が約束してくれたから」

皆、笑ってありがとうと言い。口々にニコラの(つがい)は見つかったか聞いた。

「やだな、そんなに簡単に見つからないよ。僕より先に見つけなきゃいけない人が

たくさんいるだろう?ね、フィル?」

フィルは、眉間にしわを寄せて答えた。

「護衛中に見つけたら、仕事にならんだろ?

俺は(つがい)を見つけたら、仕事はしないんだ。

今までの休暇を全部使うんだからな」

そう言ったフィルに、皆で大笑いした。そのおかげでだいぶ気持ちが軽くなった。

皆の、その顔をみてニコラの気持ちも軽くなる。

グラント達が戻り、全員が揃ったのを見てニコラとフィルは夜会へ戻って行った。


その頃シャアルは、女性を取り押さえた時に出した指示の報告を受けていた。

今日もアリシアに影の護衛をつけていたのだ。アリシアを廊下で捕捉できたら、

連絡をよこすはずだった。しかし、少し待っても連絡がこない。

シャアルが、おかしいと思って廊下に向かったところに

ロゼッタが走ってきたのだった。

その影は、柱の陰で眠らされていた所を発見されたとの報告だった。

幸い、怪我もしていない。騎士団へは一般の女性と話したので、

彼女はまた影に戻れるだろう。

アリシアに影の護衛をつけていることは、ほんの数人しか知らない。

そして、柱の影に隠れ場所がある事を知っているものも少数だった。

シャアルは、ため息をついた。

やはり自分の考えに、間違いなかったのか……。


早風のように動かねばならない。

シャアルは、いつものように感情を押し込め、ニコラの元に向かうのだった。

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