表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
59/68

第58話 夜会

 第58話  夜会


 ついに夜会の日がやってきた。デビューを控えている家では

朝から、大騒動になる。女の子は朝から磨き上げられ、

男の子は、ダンスの復習に明け暮れるのだ。


アリシアも、ロゼッタも、シャロンも、ニコラでさえも例外はなく、

それぞれの家で、午後のお茶の時間にはグッタリだった。

アリシアは、両親と相談し、若々しい新緑のような色のドレスを選んだ。

母に、シャアルに選んでもらった濃い緑色の宝石がはめられた

アクセサリーをつけてもらう。

深い森の色のようで、アリシアはとても気に入っていた。


やっと一息ついたところに、シャアルが迎えにきた。

皆は、お茶を飲む間、サロンで2人だけにしてくれた。


シャアルは、アリシアのドレスに合わせ、胸ポケットに

濃い緑のチーフを入れていた。

シャアルの銀色の髪に、黒のタキシードはとても良く似合っており、

彼のスマートさを現していた。

アリシアは、初めてシャアルに見とれた。アリシアはあまり人の外見に

敏感な方ではない。いつも文献か本に夢中で考え事が忙しく、

人の外見を気にしているヒマがないのだ。

そんなアリシアでも、シャアルの立ち姿は絵画のように美しく、

ほのかな甘さも感じるくらいだった。

あっけに取られるアリシアに、シャアルは心配して名を呼んだ。

「アリー?どうした?疲れたのか?」

シャアルに声をかけられて、アリシアはハッと我に帰った。

「シャアル様、……大丈夫よ、シャアル様が、絵画のように美しかったから……」

真顔で言うアリシアに、シャアルはウッと動きを止めた。

思わず口に手を当て、少し顔をそらした。大きく息をつき、

アリシアを抱き寄せる。

「アリー?私は褒められたと、喜ぶところなのかな?」

「シャアル様、本当に美しいわ。

う〜んと、……この表現はダメなのかしら……?」

シャアルは笑い出した。

「いいや、とても君らしい。私も素直に喜んでおこう。

君もとても綺麗だよ。美しい黒髪に、緑がとても良く映える。

美しいよ、アリー」


シャアルはソッとアリシアを抱きしめた。

シャアルは婚約式の後から当然とばかりに、

毎日アリシアにキスを落としている。

今日も甘い口づけが、たくさんアリシアに降り注いでいた。

最初のうち、アリシアはとても恥ずかしがった。

でも、だんだんと自分の心の暖かな所を増やしてくれる

そして愛情をもらう、大切な行為に変化した事に驚いていた。


シャアルは、笑いながら言った。

「アリー、これ以上は私が止まらなくなりそうだ」

それを聞いて、きょとんとするアリシアをソファーに座らせ紅茶のカップを渡す。

アリシアは以前感じたような、フワフワした感覚を持ちながら

紅茶に口をつけた。

その時、グラントがやってきた。

そろそろ出発だと告げる。

カルロスとフィルは、王族の護衛の為、今日は特別に多忙だった。

本来ならシャアルも騎士団の仕事があるのだが、

(つがい)のデビューとあって免除されたのだとアリシアに話した。


王宮は、いつも以上にきらびやかだった。

勤めている者も今日は交代で参加できる。

誰もが楽しそうな顔をしていた。


広間に入ると、もうたくさんの人が集まっていた。

シャアルは、アリシアの手と腰を取り片時もアリシアを離さなかった。

母はグラントにエスコートされ、挨拶に周っていた。

シャアルも色々な人から声をかけられ、祝いの言葉を受ける。

年配の好々爺達が、これは珍しいと、祝福を重ねてくれた。

「デヴォン辺境伯、ご無沙汰ですな。あぁ、おめでとう。

ついに(つがい)を見つけたそうで。

おぉ、こちらの方が、森の妖精ですな」

そう言われながら、挨拶と紹介を受け

名前を間違えないようにするのが精一杯だった。

だいたい挨拶が終了した頃、王族のお出ましとなった。


シャアルは内心、笑っていた。

ニコラが、あの嘘くさい笑顔で現れたからだ。

まあこれから起こることを考えれば、気持ちが分からなくもない。

間違いなく、ニコラは最大限に不機嫌なのだ。

王の挨拶と乾杯が済むと、音楽が流れ始めた。


いったん音楽が鳴り止む。それを合図に、そこかしこで

デビューの者にダンスを申し込むため、ひざまずく姿が見られた。

シャアルもアリシアの前でひざまずき、手を差し出す。

「アリー、どうか君の初めてのダンスを私と……」

アリシアが、はにかみながら手を取ると、

その手にシャアルの口づけが、優しく落とされた。

この年の(つがい)のカップルはアリシア達しかいなかったので、

周りは、シャアルを冷やかす者、うらやましいと話す者、様々だったが、

皆、暖かく祝福していた。


フロアへ出ると、シャロンや、ロゼッタの姿が見えた。

お互いに目配せして少し微笑む。

シャロンは兄と、ロゼッタは父と踊ることになっていた。

一方でニコラは、次の曲から踊ることになっていた。

最初はシャロン、ロゼッタ、アリシア、

それからは母である女王のリストの順番に。

シャアルは、ニコラが踊る曲数を考えて苦笑していた。

アリシアは、ニコラ、グラント、フィル、カルロスと踊った後、

休憩させることにしてあった。


アリシアはシャアルのリードで、とても楽しく踊れた。

デビューする者達のダンスは、若々しさと躍動感が強みになる。

多少の失敗は、笑って許されるのだ。

いつの間にか、仕事を抜けてきたフィルやカルロスとも踊る。

カルロスは特に幸せそうだった。

「アリー、デビューおめでとう」

カルロスは、踊りながら愛娘に言った。

「お父様、ありがとう。お父様と踊るのが夢だったのよ。

小さな頃、屋敷でよくお母様と踊っていたでしょう?

綺麗だなって思っていたの」

「そうだったのか。良かった。私もお前の夢を叶えられたんだね」

「ええ、そうよお父様」

自分と踊るアリシアは、幼い頃のままの素直さで、とても楽しそうだった。

アリシアは、いつでも楽しみを見つける天才だった。

花が咲いたと喜び、雨が降ったとバケツを持ち雨粒を貯めようとしたり、

葉の色が変わったと並べ、葉の形が違うと庭中の葉を集める。

土産に絵本を渡せば、何回もそれを読み、

それを得意そうに話して皆に聞かせていた。


「アリー、これでお前も大人の仲間入りだ。

ゆっくり進むんだよ」

「はい、お父様」


その言葉は、カルロスから自分を認めてもらったようで、

とても誇らしい気持ちになった。

そしてアリシアは、嬉しそうにうなずくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ