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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第52話 息抜き

 第52話  息抜き


 その日、シャアルはレモンドとコナーと居た。

毎日の気の滅入るような報告に、レモンドが根をあげたのだ。

レモンドの屋敷で、飲むことになっていた。


レモンドの奥方は、気を利かせて男達だけにしてくれた。

レモンドの惚気が増幅されそうだ。


「ありがとう、僕の気晴らしに付き合ってくれて」

レモンドは笑いながら、グラスを上げる。

お互いにチンッとグラスを合わせ

笑いながら、ささやかな宴会が始まった。


コナーが気の毒そうにしていた。

「何だか大変そうだねぇ」

シャアルは苦笑した。

「仕事だ。仕方あるまい」

レモンドは珍しく語気強く答えた。

「よくもまあ、あんな方法を思いつくもんだ」


コナーは、慎重に聞く。

「答えられなかったら、そう言って。

人族で何かできることはないの?」

シャアルが、くるくると氷を回しながら答えた。

「とにかく身の安全を優先してくれ。

まだ全容が分かったわけではないんだ。すまんな」

レモンドもコナーに申し訳なさそうに言った。

「コナー、不自由はしていないかい?

魔道具も充分な数が確保できているから、

君も使ってくれて構わないんだ」

そう言ってくれた友人にコナーは微笑む。

「ありがとう。教えてくれたメンバーを見たけど、

僕は対処できると思うよ。他の子供や女性に

回してあげて」

レモンドとシャアルは顔を見合わせた。

確かにメンバーは教えたが、個々の魔力や

得意なことまで詳しくは話していないはずだ。

レモンドは笑い出した。

「コナー、やっぱり部署を移動しよう。

あ、もっと良いことを思いついた。普段は今の部署で仕事して

短期とか、夜だけを隠密でどうだ?」

コナーも笑い出した。

「え〜〜、給金が5倍になるなら考えてみるよぉ」

そう言ったコナーに、レモンドが本気になった。

「5倍?3倍なら、なんとかなるかも知れない」

「待った、レモンド。君、本気で考えているでしょ?」

「当たり前だろう?こんな身近に、優秀な人材を見つけたんだ。

放っておいたら、僕が怒られる気がする」

「僕、古文書と本に埋もれて過ごすことが夢だったんだ。

部署を移動しなくて良いなら、考えておくよ」

そう言ったコナーを、シャアルが気遣った。

「コナー、イヤなら初めにはっきりと断っておけ。

レモンドが喜んで実現させるぞ」

そのシャアルに、コナーは優しく微笑んだ。

「ありがとう、シャアル。僕ねぇ、君達と友達になって

少し考えが変わったんだ」

「考え?」

「そう。考え。最初はね、身を守るために強くなろうと思った。

痛いのはキライなんだよ。でも握手して痛いだけで

魔法を使うわけにいかないだろう?僕はね、

悪意を見分けることが必要だったんだ。それには

観察と情報が必要だった。僕ね、自分で言うのもなんだけど

器用なんだ」

そう話し出したコナーにレモンドがおもわず笑った。

「そうだな、優秀でなければ色々な能力は身につかない」

「今までは、その身につけた事を自分のために使うだけで

良いと思っていたんだ。そうしたら誰の迷惑にもならない」

シャアルは、思わず口を出した。

「コナー、分かっているとは思うが、迷惑だなどと

思ったことはないからな」

「分かってるよ。分かってる。でも自分が、守られるだけが

イヤだったんだ。だから自分のためだけに使っていた。

でもね、アリシアを囲む君たちを見て、そしてアリシアを見て

ちょっと変わったんだ。獣族を助けられることが

あるかもしれないって。若さって良いよね、アリシアは真っ直ぐだ」

レモンドが仏頂ずらになる。

「待て、コナー。僕達だって充分若い」

皆、思わず笑ってしまった。シャアルはまだ笑っていた。

「そうだな、私達も充分若い。ただ初々しくないだけだ。

だいたいこの仕事について初々しくいられるなど、あるわけなかろう」

コナーは楽しそうに笑った。

「本当だね、2人が初々しかったら国が潰れちゃうよ。

だからね、僕の能力を、誰かのために使うのも

良いかもって思ったんだ」

そこまで聞くとレモンドはご機嫌になった。

「コナー、大丈夫だ。給金はもぎ取ってやるからな」

コナーは、うなずいた。

「うん、でも相場でいいよ。変なやっかみが入ると

皆、面倒だろう?期待してるからねぇ、レモンド」


こうしてレモンドの憂さ晴らしは、最高の結果になった。

信頼できる、そして将来には自分達と

中枢を担うであろう仲間ができたのだ。


コナーは自分でも、厄介な事に首を突っ込むなんて

僕らしくないなぁと思っていた。

でも、これで良かったなと思うのだった。


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