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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第51話 支援

 第51話  支援


 シャアルはアリシアをサロンに案内した。

そこはアリシアの屋敷と違い、森を存分に眺められた。

葉の色が段々と新緑から、濃い緑に変化していく季節だ。

アリシアは、この景色を素敵と言って、喜んで窓際に眺めに行った。


興奮したアリシアは、木の名前をシャアルに尋ねては

感心したり、喜んだりしていた。

そこに柔らかな落ち着いた女性の声がした。

「これはまた、可愛らしい森の妖精が現れたわね」

アリシアが驚いて振り向くと、シャアルと同じ銀髪の

上品な女性が立っていた。


シャアル様のお母様……髪も瞳の色もお母様譲りなのね……。

アリシアがそう思っていると、急にシャアルの背中が目の前にあった。

「母上、驚かさないでください」

シャアルが、ため息をつく。

シャアルの母は、驚いたように息子を眺めて笑い出した。

「シャアル、あなた……親にまで隠さなくても良いじゃない?」

シャアルは、静かに答えた。

「隠したわけではありません」

母の隣に立っていた父まで笑い出した。

「どうやら本当に(つがい)を見つけたようだな」

シャアルの父は、カルロスと同じくらい体格が良かった。


シャアルは、アリシアの腰に手を添え、両親の前へ連れて行った。

「私の(つがい)、アリシア・ヴンサン・ヌヴェル殿です。

良いですか、父上、母上、前もってお知らせした通りアリーは人族なのです。

くれぐれもケガをさせないように、気をつけてください」

シャアルの過保護っぷりに、両親は目を丸くして

次の瞬間には、また笑い出した。

アリシアも、初めて見るシャアルの様子に驚いた。

何だかいつもよりも子供っぽく主張するシャアルが、可愛らしいと思ったのだ。

はにかみながら、シャアルのシャツをツンツン引っ張る。

ちょっとお行儀が悪かったかな……。

シャアルは、そう思って反省するアリシアを見て、とろけるような笑顔になった。

アリシアは、少し頰を染めながら淑女の礼をとった。

「初めまして。アリシアと申します。以後お見知りおきを……」

ドレスの裾をもち、可愛らしく膝を折った。

その様子を、シャアルが優しい眼差しで見ている。


両親も初めて見るシャアルだった。

幼い頃は違ったのだが、学生生活もあと少しという年代から

あまり表情を出さず、黙々とやらねばならないことを

片付けるようになっていった。

年頃になっても(つがい)は見つからず、でも遊び歩くわけでもない

シャアルを自慢にも、心配にも思ってきた。

(つがい)を見つけるために何回か、社交的な集まりに

頻繁に顔を出すように言ったほどだ。

その都度、シャアルは、社交は得意でもないし

仕事に差し障るからと、断り続けたのだった。

その息子に、まさかこんなに可愛らしい(つがい)が出来るとは。

半ば諦めていたのに、本当に妖精がやってきたようだ。


息子は、いかに人族をケガさせないようにすることが大切か、

懇々と説明しだした。

父は苦笑し、母は突然に扇子を広げ顔をおおった。肩が揺れている。


ついにアリシアが、真っ赤になってシャアルを制止した。

「シャアル様、……シャアル様。あの、……あの、

そんなに心配してくださらなくても大丈夫。

王宮でもケガはしなかったでしょう?」

「いや、アリー。大切なことだから。何事も最初が肝心なんだよ」

アリシアは、シャアルを止めるため、必死で考えた。

「シャアル様、大丈夫よ。最近は皆さんに優しくしていただけるもの。

あら?お茶の香りがするわ」

そのアリシアの言葉にシャアルの気がそれて、やっと説明をやめた。

シャアルの母が、感心したようにアリシアを見ていた。

シャアルは、せっかくだからお茶を飲みながら

ゆっくり話しましょうと、両親に座るように勧めた。


そこまでは良かった。

そう、アリシアの作戦通りだった。そこまでは……。

シャアルは自分の隣にアリシアを座らせ、足を組んで

いつものようにアリシアの手を愛でだしたのだ。

アリシアは真っ赤になった。


シャアルの父が呆れて、助け舟を出してくれた。

「シャアル、お前が真剣だということは分かったから

手を離して差し上げなさい。

そんなに恥ずかしがらせては、嫌われるぞ」

シャアルは嫌われるぞという言葉にピクッと反応し、

しぶしぶ手を離したが、ピッタリと寄り添うように座り直した。

シャアルの母は、まだ扇子に隠れて笑っていた。

そして、やっと息をついたかと思うと夫にこう言った。

「あなた、久しぶりに嬉しいし、楽しいし、とても面白いわ」

夫は、しょうがないと言った顔をして答えた。

「お前、分かるけど面白いは余計じゃないかい?」

「あら、そこが1番肝心よ。シャアルが面白いなんて、

そこが肝心の所でしょう?」


シャアルの両親は、アリシアを大歓迎した。

特に女の子と出かけることが夢だった母は

アリシアと婚約式の為の買い物に行きたいと言い、

落ち着いたら街中へでる約束まで取り付けていた。

シャアルの父は、この浮かれているバカ息子にイヤなことをされたら、

すぐに言いなさいと話す。

アリシアは慌てて、シャアルは、いつもとても優しいと話し、

シャアルは心外なと言わんばかりに、言い返した。

笑いが絶えず、とても幸せな時間になった。


こうしてアリシアに過保護な人物は、2人も増えたのだった。


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