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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第49話 効果

 第49話  効果


 シャアルが王宮に戻り、用心の為いつもの自分の仕事を片付けてから

ニコラの元に向かった。


「殿下、遅くなりました」

シャアルが部屋に入った時には、もうフィルも居た。

ニコラは、さすがに申し訳なさそうにして言った。

「辺境伯、呼び戻してごめんよ。ちょっと影からの

報告も入ってね」

自分が部屋で座る頃には、結界も張られ準備万端だった。


「ヌヴェル伯爵から、手紙がきているよ。僕と辺境伯宛だ。

父上とも色々話しているらしい。人族はおとりの可能性があると

見ているようだ」

シャアルはそれを聞いて、なんとも思わなかった。

おとり。その可能性は考えていた。

ただ、中毒性の薬草が使用されているかもとなった時点で、

おとりかどうかは重要ではない。

人族は狂信者から狙われる可能性が高まったのだ。

シャアルはニコラの意思を確認した。

「殿下。おとりだとしても、それが保護から外れる理由になると?」


ニコラは大笑いした。

「あるわけないだろう?」

「では僭越ながら、私の意見と相違はございません」

シャアルは、出されたお茶をゆっくり飲んだ。

そして切り出す。

「殿下、そろそろ陛下とご一緒に、会議に出席なさるのですか?」

ニコラは正直に顔をしかめた。

「嫌なんだけど」

それを聞いてシャアルは笑ってしまった。

「申し訳ありません、失礼しました」

「いいよ、もう普通に話してほしい。探り合いみたいで面倒だ。

名前で呼んでもいい?年下だからイヤかな?

笑い事じゃないんだよ、会議に出なくてもこの有様だからね。

中枢の話を聞いただけで、仕事が倍になりそうだよ」

「もちろん名前で呼んでくださって構いません。

仕事は……、まあ、そうでしょうな。

ただ陛下が考慮してくださると思うのですが……」

「父上はね、穏やかに僕の能力ギリギリで付加を加減するんだ。

そのお陰で伸びたところもあるけど、毎回能力を試されるんじゃね」

ニコラは笑って言った。シャアルは、優しく答えた。

「ご自慢のご子息なのですよ」

「愛情をもらうのは嬉しいけど、これ以上の仕事はゴメンだな」

そんな話をしながら、自分達の持っている情報を確認することにした。


シャアルは、かなり色々な人物を破滅、

または最大限ダメージを与える情報を持っていた。

集会に集まっている人物、アリシアに嫌がらせをしている連中。

傍で聞きながら、フィルは苦笑する。

まったく……全て筒抜けだというのに、傲慢な貴族は

いつの世も減らないもんなんだろうか……?

フィルは近衛の職についていてよく思うことがあった。

よくもまあ、自分を破滅する方向に時間と能力を使えるものだ。

自分の職務を考えると、そんなヒマは無い。その一言に尽きた。


そんなシャアルに対し、ニコラは新興貴族について調べ上げていた。

別に格差があるから結婚が認められないわけでは無い。

王国は(つがい)を優先させることを誇りとして、

太古より栄えてきたのだ。何かしらの目的を持って

結婚制度を利用し、人の心を傷つけるから忌み嫌われる。

そこに本人の意思がないなら、なおさらだ。

シャアルが影に頼んだ依頼の結果も、ニコラの元にも入っていた。


ニコラは、にっこりと微笑みながら言った。

「僕もね、不思議だったんだよ。(つがい)でもないのに結婚して

あげくに家を乗っ取られていく。分かっているのに、結婚するものがいる。

でもね、結婚したいって言われたら家のものが反対しない限り

入れないだろう?そこを突いて狙われたわけだ」

シャアルは、うなずいた。

「調べたらね、結婚後、かなりの確率で当主が幻覚、

記憶喪失の症状を出していた。

介助なしでは生活できないほどにだ。まあ、自業自得の当主も

かなり居たけど。何かの薬を使っているのかと思ったが、

やはり全員、服薬などしていなかった。辺境伯、カギはやはりお茶だよ」

それを聞いたシャアルは1つの疑問を提示した。

「殿下、私もそう考えております。

ただ、今回そのお茶を飲んでいる可能性がある者に

ニア・アバウが入っております。

なぜ彼女は、分かっているのに飲んでいるのか。

新興貴族は、相手にそれを飲ませて野望を達成します。

彼女の得にはならないのです」

ニコラもうなずいた。

「可能性としては、いくつかあると思っているよ。

まず、彼女が邪魔になったものがいる。要はお家騒動だね。

それから、彼女自身が享楽的なものに流されやすい。

もう1つは、黒幕の実験台にされた」

シャアルは片眉を上げた。

「黒幕の実験台……?」

それは考えつかなかった。

「殿下……、何の目的を持った実験台だとお考えなのですか……?」


ニコラは、静かに言った。

「これで人の思考を操れるかどうか」

シャアルは、王子の前で舌打ちしたくなるくらい、気分が悪くなった。

悪意は、人の心を蝕む。そして悪意に晒された者の心も蝕むのだ。

取り込まれてはならない。シャアルは直ぐにニコラ同様に冷静になった。


シャアルは腰を上げた。というよりは腰を上げざるを得なかった。

「殿下、のんびりする時間は終了しました。

明日、()()()()に同席をお願いいたします」

そのシャアルを、嫌そうに眺めてニコラが言った。

「シャアル、君だけで良いだろう?」

「いいえ、殿下。殿下のお知恵が必要です。

現に私は、その可能性を思いつきませんでした」

めずらしくシャアルは、譲らなかった。

ニコラは大きなため息をついて、あきらめた。

「あ〜あ、シャアルがいれば大丈夫だと思ったのに。

分かった、分かってるよ。観念すれば良いんでしょう?

頑張るよ。やるってば」


そんなニコラを見て、フィルが笑い出した。

「いや、辺境伯、申し訳ない。

ニコラの往生際が悪いのは、いつものことなんだ。

もちろん全力で対処するし、いつでも適当に対処なんてしないんだが、

出来るだけ自分は表舞台に出たくないらしくて」

フィルは、まだクスクスと笑っていた。


そんな2人を見てこれは頼もしいと、シャアルは盛大に微笑んだ。

立ち上がり、うやうやしく王族への礼をとる。

「殿下、御助力いただけてありがたいことです」

そんなシャアルに、ニコラは分かったよという顔をするのだった。

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