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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第48話 荒れ模様

 第48話  荒れ模様


 アリシアとシャアルは、屋敷に到着するとサロンに通された。

そして、カルロスとリリアーナに、婚約したいと報告した。


マリーは後ろに控えて居て、こりゃまた速かったと

目を見張っていた。さすが猛禽類……。展開が速すぎだ。


シャアルとリリアーナが段取りについて話し、

日程が、どんどん決まっていく。


アリシアは、婚約式をどのようにする風習があるかも知らなかった。

マリー、……視線が痛いわ……。しょうがないじゃない……。

知らなかったんだもの……。

今晩は、マリーの盛大なため息を聞くことになりそうだ。


そんな時、シャアル宛のレティユ鳥が飛んできた。

普段は屋敷か部署に届く。シャアルの場所を把握している

人物といえば、なんでも知っている王子だろう。

シャアルは失礼と言い、レティユ鳥を指先に留らせた。

するとレティユ鳥は小さなつむじ風の中、キラキラと光って手紙に変わった。

差出人はフィルだった。

なるほど、用心深いことだ。

シャアルはニコラの、ちょっとした工夫に感心していた。

フィルが自分の屋敷に手紙を送っても、なんの不思議もない。

中身は就業時間後に、王宮へ戻るようにとの伝言だった。

その様子を見たカルロスの瞳に、急に力が入った。


ここ最近、アリシアが王宮で仕事しだしてからの

プライベートな事で、カルロスの出番は全く無かった。

リリアーナが上手にカルロスを立てながら、先回りしているからだ。


伯爵は、仕事では やはり別人か。


シャアルは、満足する。王の直属の騎士団長なのだ。

強いだけでなく、優秀でなければ務まらないと思っていた。

自分の考えが、その通りで満足だった。

たぶん、一連の流れも耳に入っているのだろう。


「失礼しました。終業後に、確認しなければならないことが

できたようです。王宮に戻りますが、まだ時間はありますから、

他にご心配な点が無いように、ご意見を伺いたい」

にこやかに言って、話を切り替えた。


カルロスはシャアルの様子を見て、事が動き出すかもしれないと

思っていた。カルロスの耳にも当然のように影からの報告はきている。

カルロスには、人族を絡めることによって、人々の関心を

人族に集めておきたいような意図が感じられる。

アリシアが嫌がらせを受けていることなど

とうに知っていた。小さな頃から、情報だけは集めるようにしていた。

リリアーナが気になる時だけ、手を出すようにしていたのだ。

アリシアが仕事をしたいと話した時と同様に、

カルロスがリリアーナの意見を聞かず自分の意思を通したこともあった。

でも経験上リリアーナの言う方法が、結果アリシアの

役に立つことは明白だった。

今回はシャアルに、人族はおとりかも知れぬと伝えてもよかろう。

王からも、そう伝言を受け取っていた。

シャアルが王宮に再び登城する頃に、手紙を出さねばなるまい。

ニコラとシャアル宛に……。

全く、よりにもよってアリーが婚約しようと言うときに……。


カルロスは、ニコラと同様にウンザリしていた。

不平を訴えるものが、全て間違っているとは思わない。

でも人を落とし入れてまで、主張する理論は正義では無い。

長年の勤めから得た哲学が、人としての生きる道を解いていた。

ナラタナ王国では、意見を述べる事が間違っているわけでは無いのだ。

その意見を吟味し、今のこの時点で、それを採用するかしないか、

ただそれだけなのだ。時に、それを不当だと受け取るものがいる。


いつの世も、ただただ それだけなのだ。

その意見が正しいのかどうか、それは後世が判断するもの。

そして、それを活かすかどうかも後世がする事なのだ。

我々は、今この現在、これが最善と想うことをする。

それだけだ。


カルロスはアリシアと仲良くなったばかりの幼い王子が、

真剣にカルロスに話したことを覚えていた。

王族とは、国民全ての幸せを祈るもの。

あの王子は、それが一生かけても叶わないと知っていて

それでも、それを願うのだ。


その王子を想うと、たのもしいと思うと同時に少し胸が痛む。

王族に仕えている限り、そう想う王族を尊敬し、

自分を差し出してでも守りたいと思うと同時に、

王族の抱える哀しみを想い、胸が痛む。


カルロスは、改めて幸せそうな自分の娘を見つめた。

愛娘も、国のために、そして自分自身のために働いているのだ。

そう想うと、自分たちの年代も踏ん張らなければならない。


シャアルは、自分の蜜月を邪魔された腹いせを、

存分に思い知らせるだろう。

カルロスは、この後届ける手紙の内容を考えていたのだった。

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