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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第44話 網

 第44話  網


 ニコラの怒りは、すさまじかった。

まず、次の日の朝1番に父のところへ行き、細かい話をした。

そして、登城したシャアルを呼び、アリシアの護衛にはフィルをやる。

アリシアの部署にはコナーもいるのだ。

護衛なしは、もはや考えられなかった。


「おはよう、辺境伯」

ニコラは笑顔で話しかけたが、シャアルは、おや?と思った。

たぶん、普段ニコラとよく話すものしか分からない微妙な違いだ。

シャアルは、このウソくさい笑顔の下にニコラの怒りを読み取った。

「おはようございます、殿下。お話があると伺っておりますが」

「そうなんだ。急でごめんね。って言っても

もう分かっているよね。例の件だ」

ニコラは、ウソくさい笑顔を存分に振りまいて続けた。

「僕が手配した内容は知っているよね?

辺境伯が手配してくれた内容は、聞いてあるよ」

シャアルが知っているのは、さも当然と言わんばかりに

ニコラは、ものすごいスピードで話を進めた。


なるほど、真の王子というわけか……。

シャアルはニコラの様子に、王族としての重要な資質を見つけた。


ニコラとシャアルは、綿密に情報を取り込めるように仕掛けた。

問題はアリシアへの嫌がらせだった。

ニコラが()()通りかかり、クギをさすこともできる。

ただ、それでは標的が地下に潜る可能性があった。

そこで、標的以外から潰していく事にした。

後ろ暗いことをしている何名かは、その件を明らかにして

法の裁きを受けさせる。

ニコラは、標的に気がつかれぬようジワジワとやる事に決めた。

自分も辺境伯も、姿を現さず排除できる。


極めつけは、ニコラの満面の笑みだった。

「辺境伯、分かっていると思うけど

僕は許すつもりがないんだ」

シャアルは、穏やかに答えた。

「殿下の思うままに」


こうして、ニコラはあっという間に第一段階の手はずを整えた。

そして、疑問を投げかける。

「ねえ、辺境伯。お茶の種類はなんだと思う?」

ニコラのことだから当然、

本来の目的を隠して問い合わせているはずだ。

そう思い、シャアルは問い返した。

「薬剤の部門からは、返答はあったのですか?」

「いくつかきているが、お茶にするには苦味が強くて

むかないんだそうだよ」

そう答えたニコラが、突然ハッとして口元に手をやり

考え込んだ。

「苦味……苦味を抑えればいいんだ。」

シャアルは、疑問を投げた。

「殿下、苦味を抑える方法は難しいかと思うのですが、

何か方法があるのですか?」

ニコラは昨日、ロゼッタの入れてくれたお茶について話した。


シャアルは考え込んだ。影の話だと、最初は皆にお茶を飲ませている事に

疑問は持たなかったようだった。その位この王国では

お茶を飲む習慣が浸透していた。当初、体の揺れなどの報告もなかった。

影が持った違和感は、ここ最近の感触と言う事だ。

シャアルはニコラに答えた。

「殿下……もしかすると長い時間 摂取すると

中毒性があるのかもしれません」

ニコラもうなずいた。同じ考えを持ったらしい。


ニコラは、ものすごい笑顔で毒づいた。

「ホント、うんざりだよ」

シャアルは苦笑いし、同意した。

「そうですな」


いくつか想定したが、確定するには情報も物証も足りない。

今日はここまでだった。


すると、ニコラが急にいつもの笑顔になってシャアルに言った。

「そういえば辺境伯、今日の午後はアリーは非番にしたから。

デートしてきて」

あまりにも唐突で、さすがのシャアルも面食らった。

「殿下?何かあったのですか?」

「いいや、何もないよ。アリーに休みを取らせたかったんだ。

コナーの護衛は別の者をつけるよ。フィルが人選していたから」

何もないとニコラは言うが……さて……?

まあ、チャンスをもらえるのは大歓迎だ。

「かしこまりました、殿下。ご配慮に感謝します」


そう言ったシャアルを見て、ニコラはめずらしくニヤッとした。

「辺境伯、頑張ってね」

ニコラは久しぶりにウィンクしたのだった。

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