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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第43話 王子の怒り

 第43話  王子の怒り


 ロゼッタの屋敷で、久しぶりに楽しくプライベートな時間を過ごし、

思いがけずアリシアの進展も見られ、充実感にあふれて

王宮に戻ったニコラに、父の影から報告が入った。


 執務室でフィルも同席させ、報告を受ける。

影はシャアルにした報告内容を繰り返した。

「それで、父上は僕にどこまで動いて良いと?」

そう言ったニコラは、恐ろしいほど無表情になっていた。


フィルも驚く。この表情を見た事は、数回しかない。

相手はニコラを完全に敵に回したことになる。

不正や策略を企てる者は、まず許される事はないだろう。

ニコラは治世者の息子だ。ただ優しく思いやりがあるだけで、

それができるはずも無い。

いざとなれば、誰よりも冷酷な判断をする。

それが王子というものだった。


影は答えた。

「まずはデヴォン辺境伯と密に連絡をとっておくようにとのことです。

人族の安全に力を注ぐようにとのことでした」

ニコラは、無表情のまま影を見た。

「なるほど、デヴォン辺境伯と居るようにして緊急事態は動くようにするよ」

影は驚いて言った。

「殿下……、あまりご無理は。デヴォン辺境伯にお任せになっては」

ニコラは影の意見を切り捨てた。

「国民が危険にさらされているのに、自分の安全を考えるのか?

君の気持ちはありがたいが、僕なら そんな王子はいらないね」

影は大人しく引き下がった。ニコラが判断したのだから、

王に報告するしかない。あとは王が決断する事だ。


影にいくつか指示を出し、ニコラは下がって良いと言った。

フィルは立ち上がる。ここから自分の出番だからだ。

さすがのニコラも怒りが頂点に達すると、荒れるのだ。

彼が幼かった学生時代から、それを鎮めるのは近侍か自分の役目だった。


フィルが、執務室に置いてある強い酒をグラスに注ぎ

自分で毒味した後に、ニコラの前へ出した。

ニコラはかなり酒類に強い。

どんなに飲んでも、酔ってしまうことなど無かった。

ニコラは無表情のまま、グラスを握り、一気にあおった。

そしてテーブルに置かれたグラスは、粉々に崩れ落ちた。

「フィル、今日の楽しかった時間が台無しになった」

そう言ったニコラには、もはや普段の穏やかさは欠片も無かった。

フィルは答えずに黙って聞いていた。

「幻覚だと……?そんな危険な物に手を染めて、

逃げ切れるとでも……?そこに人族を巻き込むだと?」


ついこの間、自分は全ての国民の幸せを祈っていた。

それは自分が歳を重ねても、決して消えない

ニコラの願いなのだ。


「フィル、相手の目的が分からないが、そんな事はどうでも良い。

僕は、許さない。そんな事に関わるヤツは許さない。絶対にだ」

ニコラの愛嬌のある丸い目が、スッと細まった。

フィルは答えを返した。

「目的は辺境伯が調べるだろうよ。俺もお前の意見に賛成だ。

ただ、利口に動かないとな。ずいぶんとキナ臭い」

ニコラは、静かに答えた。

「そうだな。利口に動かないと。僕を優秀だと言った者が

さらに目を見張るぐらい、利口に動いてみせるさ」


それを聞いていたフィルも、内心では相手を許す気など

毛頭無かった。自分の妹を巻き込むだと?

せいぜい後悔してもらおう。

黒幕をあぶりださねば……。


自分の持っているツテを総動員して、シャアルの情報戦略に

加担するつもりだった。我々を敵に回して、

さて相手は生きていられるか?


近衛兵にしては、思いつきすぎる策略を

フィルは最大限活かすつもりだった。


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