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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第41話 無邪気

第41話  無邪気


次の日の朝、アリシアはいつもより

スッキリと目覚めたように感じた。

相変わらずフワフワした感じがするものの、

久しぶりに熟睡できたからか目覚めが良かった。

ここ最近は、寝ても多くの夢を見ていた気がする。

昨日は、夢も覚えていないくらいグッスリ寝ていたようだ。


ロゼッタと朝の支度をし、彼女の家族と朝食をとった。

ロゼッタの家族は、陽気な家族だ。

朝から冗談を言い、みんなの予定を話し、

彼女の弟、8歳のマルコムと、妹のロレーヌは、

アリシアに物語を読んで欲しいとせがんだ。

ロレーヌは5歳になったばかりで、特にアリシアと遊ぶのを喜んでいた。


アリシアは喜んで約束し、彼らの可愛い部屋で

何冊も本を読んだ。

アリシアは末っ子だった為、小さな兄弟への憧れが強かった。

小さな友達の、お世話をするのも遊ぶのも、彼女が好きなことだった。

アリシアの脇を取り合ったり、表情をくるくると変えて

物語を聞く幼い子供達は、アリシアの心も癒してくれる

可愛い存在だ。本を読んだ後は、カードゲームに

お絵かき。小さなお友達は大満足し、アリシアに口々にお礼をいった。


アリシアは、ふと自分の心にかかっていた霧のような薄い幕が晴れ、

しっかりと辺りが見えるようになった事に気が付いた。

小さな友人と無心で遊んだのが、良かったのかもしれない。

ボンヤリしていた事が、だいぶ遠くに感じられる。

まだフワフワした感じはするが、少し考えられるようになるかもしれない。

そんな事を思って、昼食を済ませた所に、ニコラが到着した。


 ニコラはお忍びで来ていた。

フィルには、お忍びの回数が多すぎると苦笑いされるのだが、

正式な訪問にすると、迎える側に準備が必要になる。

ニコラはその事を、とても嫌がった。


ニコラの訪れを1番喜んだのは、マルコムだった。護衛で来たフィルと一緒に

剣の稽古をつけて欲しいとせがまれ、ニコラは制止するロゼッタを止めて、

1時間ほど、稽古をする。

マルコムは大喜びだったが、ヘトヘトになっていた。

ロゼッタの母がお礼を言い、お昼寝するロレーヌとマルコムを

子供部屋に連れて行くと話した。


ロゼッタは冷たい飲み物を用意し、ニコラとフィルに

少し休憩するように言った。

「ありがとう、ニコラ、フィル。マルコムはこの間

学校で初めて剣の授業があったの。楽しかったらしくて

剣術の稽古に夢中なのよ」

それを聞いてアリシアが笑った。

「男の子って最初、夢中になるわよね」

その様子を見て、アリシアに分からないように

ニコラとフィルがロゼッタへ視線をやる。

ロゼッタが、もう大丈夫とでも言うかのように、小さくうなずいた。

「剣の授業を楽しいと思えているうちは、大丈夫だよ。

まあ、あと5年もすれば良い心の鍛え方ができる」

フィルが笑った。

ニコラも、いつものように穏やかに笑っていた。

「騎士の候補は幼いうち程、たくさんいるからね。

騎士にならなくたって、自分の身を守れるようになるんだから

やっておいて損はないよ」


ひとしきり自分たちの近況を話し、冗談や笑い話で

盛り上がったころ、お茶の時間になった。

ロゼッタは自分で給仕し、お茶の感想を求めた。

「これはね、いつも使う薬草を少しずつブレンドしたの。

薬草って、苦いものもあるでしょう?毎日少しずつ飲めば、

効能もありつつ、苦味を抑えておけないか考えてみたのよ」

ニコラはビックリしたように、カップを手に取った。

「君が器用なのは知っているけど、ついに薬草茶にまで

進出したのかい?」

そう言って、一口飲んだ。

「……ほんとだ、苦くない」

ニコラに続いて、フィルもアリシアも苦くないと驚いた。

「ありがとう。では第一段階は突破ね」

ロゼッタは、茶目っ気たっぷりに笑った。

アリシアは驚いて聞いた。

「ロゼッタ?まだ改良するの?」

「ええ、味は大丈夫になったから

香りがもう少し欲しいのよ。でも効能も維持したいの」

フィルはあっけに取られて、質問する。

「それは欲張りにならないか?」

ロゼッタは、笑って答えた。

「そうね、欲張りよ。効能がなくては意味がないから

ダメならあきらめるわ」

それを聞いて皆で笑いあった後、ニコラは

今日の核心にふれた。


ゆっくりとアリシアを見て、穏やかに切り出した。

「アリー、気分はどう?この1週間の記憶はある?」

そんなニコラに、アリシアは驚いて返した。

「気分?そうね、昨日ロゼッタにも話したのだけれど、

何だかフワフワした感じがするの。1週間の記憶……、

あるわよ?。お仕事の事は覚えてるもの。

300年前の薬師の文献を読んでたの。薬の名前だと思うのだけど

読み方が分からなくて、手間取ったわ。まだ半分も進んでないの」

フィルがため息をついた。ニコラがまあまあとフィルに笑う。

ロゼッタが、昨日アリシアとした話を2人に教えた。

ニコラは、感動したように話した。

「心の中を、伝えたかったんだね。それは素敵だな」

アリシアは困惑したように尋ねた。

「ニコラ?大丈夫?」

ニコラは笑って答えた。

「もちろん大丈夫だよ、アリー」

アリシアは続けた。

「……どうしたら、あの暖かい気持ちを

シャアル様に分けられるのか、まだ答えが見つからないの」

そう言ってため息をついた。


アリシアがふと気がつくと、

お昼寝から起きたロレーヌが、ぬいぐるみを抱えて

目をこすり、1人で立っていた。

「あら、ロレーヌ。目が覚めたの?1人で起きてきてしまったのね」

そう言うと、ロレーヌを抱っこしに立ち上がった。

まだ眠そうに目をこするロレーヌを抱き上げると、

ロレーヌはアリシアの首にしがみつきながら聞いた。

「アリシアお姉様、(つがい)を見つけたの?」

アリシアはビックリして、優しく問いかけた。

「ロレーヌ?夢を見てたの?」

「ううん、夢は見てない。さっきお姉様達とお話してたでしょう?

アリシアお姉様の心の中のお話」

「起きてきていたのに、私達が気がつかなかったのね。

そうよ、心の中のお話をしていたわ。でも(つがい)

お話はしていなかったわよ」

「ううん、していたわ。絵本の話と同じだもの。

(つがい)を見つけると、キラキラ光るだけじゃないのよ。

心も暖かくなるんですって。アリシアお姉様は知らないの?」

ロレーヌを抱きながら、アリシアはその言葉に唖然とした。

最初はロレーヌが、何を言っているのか理解できなかった。

夢でも見たのか?でも話を聞く限り、そうではない。

いまさっき、話していた自分の事を言っているらしい。

困惑しているアリシアに、ロレーヌは話し続けた。

「暖かい心だけじゃないのよ。その絵本には、楽しい気持ちや

大切にしたい気持ちも入っているの。その気持ちを、(つがい)

分けっこしたくなるんですって。アリシアお姉様の心もそう?」

アリシアは、この小さな友人に自分の心の内を当てられて驚いた。

「確かに……同じ気持ちになってくれると私も嬉しいと思うわ……」

そう言ったアリシアに、ロレーヌは幸せそうに話した。

「じゃあ、ご本と同じよ。アリシアお姉様は、(つがい)

見つけたのね」

そう言うと、ロレーヌはアリシアの頰に親愛のキスをした。

「おめでとう、アリシアお姉様。私、アリシアお姉様の(つがい)

いつ会えるの?」


小さな友人からの祝福に、アリシアは動けないでいた。

予想もしていなかった、自分の心の中の気づきだった。


私……私……恋に……落ちたんだわ……。


ニコラとフィル、そしてロゼッタは、思わぬ小さな助っ人に

あっけにとられ、そしてロレーヌの純粋さに微笑んだ。


ニコラはホッとした。

他意のないロレーヌの言葉の方が、アリーに響く。

さて、忙しくなるぞ。


ニコラは楽しみが増えたと、喜ぶのだった。



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