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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第36話 感謝

 第36話  感謝


 アリシアにとって、観劇は素晴らしい経験だった。

話も良く練りこまれており、演者も素晴らしかった。

途中、剣舞も盛り込まれており現実の戦闘さながらの熱演に

アリシアは身を固くして、本当に刺さったらどうしようと

ハラハラした。それを見たシャアルはアリシアを引き寄せ

耳元で囁いた。

「アリー、大丈夫。演者はケガはしない。

種明かしは後でしてあげるから、心配せずに楽しみなさい」

ドキドキも加わり、アリシアは余計に落ち着かなくなった。

シャアルの言った通り、誰もケガをする事なく

次の場面に移っていった。


劇場を出て、シャアルは早めの晩餐にアリシアを連れて行った。

そろそろ夕暮れ時で、あたりは夕焼けに染まっていた。

ちょっとした丘のレストランのテラスに、1席用意されており

プライベートな空間と、街並みを見下ろせるように配慮されていた。

さすがにここでは自分で食べることが許されそうだ。

アリシアは、自分の心臓が持ちそうになかったので少しホッとした。


席に着くと、飲み物が出された。アリシアはまだお酒を飲んだことがないので

外出の際のお酒は父から禁止されていた。もちろんシャアルも

それを知っていたので、アリシアには果実のソーダが出される。

興奮したアリシアの喉に、それはとても心地良かった。

「シャアル様、種明かしをしてください。気になってしょうがないの」

そう言うアリシアに、シャアルは笑った。

「アリー、簡単だよ。君でも思いつく」

「すごく練習して、剣があたらないようになってるから?」

「それもある。でもそれだけでは、剣が思いもかけぬ方向に飛んでしまった時

誰かがケガをするだろう?」

「そうね、その通りだわ。……剣の刃が切れないようになってる?」

「おしい」

「シャアル様!!お願い、ダメよ、思いつかないわ」

アリシアが降参すると、シャアルは楽しそうに言った。

「剣が模造品だった。どちらかと言うと高級に作ったおもちゃだな」

その答えを聞くと、アリシアはあっけにとられた。

舞台の上では、どう見ても本物の剣にしか見えなかったのだ。

「アリー、君らしくて愛らしいアイディアだった。

偽物と見抜けない君をとても愛しているが、心配にもなる。

私がそばにいないときは、疑うことも覚えるのだよ?」

シャアルは冗談めかして、アリシアに優しく微笑んだ。

「シャアル様……、なんだか褒められている気がしないわ……」

つぶやくように言ったアリシアに、シャアルは楽しそうに笑い

食事が始まった。


今日の食事も、とても美味しかった。どれも計算され尽くしたコース料理で

ここはお父様に教えてあげなきゃと思うほどだった。

たぶん喜んで母を連れてくるはずだ。

デザートになると給仕はお茶を入れ、いったん下がった。

アリシアはテーブルの上に、そっとシャアルへのプレゼントの箱をおいた。

それは紺色の小さな箱に、こげ茶色のリボンがかかっていた。

「シャアル様、いつもありがとう。あの…あのっ、いつも

私を大切にしてくださってありがとう。これを良かったら使っていただきたいの」

少し頰を赤らめ、アリシアはシャアルに言った。

シャアルは、そんなアリシアを見て驚いていた。自分はただアリシアの側にいて、

アリシアの為になることなら、何でもしたかった。ただただそれだけで、

まさかアリシアからプレゼントを貰えるなど、想像もしていなかったのだ。

そんなシャアルの様子を見て、アリシアは不安になった。

プレゼント、お好きじゃないのかしら……。持ち物にはこだわりがあるとか……?


少しの沈黙の後、シャアルは静かに、そして本当に感動したように言った。

「アリー、ありがとう。とても嬉しいよ。開けてみても?」

それを聞いてホッとしたアリシアは、嬉しそうに言った。

「ええ、もちろん」

シャアルは丁寧にリボンをほどき、箱を開けた。

そしてとても優しく微笑みながら

「これは、アリーが選んでくれたのか?」

「ええ。シャアル様のお好みが分からなかったから、

アドバイスはしてもらったの。それから自分選んだわ。

お好みにあったかしら……?」

「もちろん。大切に使うよ」

「その万年筆は魔力をこめると、自分の好きな紋様が浮かぶんですって。

お仕事の役に経つかしら?それとも、もうこのような文具は持ってらした?」

アリシアは心配で尋ねた。

「もちろん、役に立つよ。いや、知ってはいたが、持ってはいなかった。

紋様を考えるのも楽しみだ」

シャアルは、まるで宝石を見つけたかのように万年筆を見つめていた。

その様子を見たアリシアは、心からホッとした。

自分が選んだプレゼントを喜んでもらうのは、とても嬉しい。


シャアルはアリシアの手を優しくとった。

いつものように優しく指を撫で、静かに言った。

「アリー、君の気持ちがとても嬉しいよ。本当に嬉しい。

ありがとう、アリー」


良かった、喜んでくださった……。

アリシアは赤くなりながらも、思うのだった。

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