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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第35話 観劇

 第35話 観劇


 シャアルは週末の休みに、アリシアを評判の劇場に

連れて行く約束をしていた。劇場の演目は

恋愛をテーマにしたものが多いのが一般的だったが、

今日の演目はちょっと変わっていて、

架空の歴史物語になっていた。


アリシアはこの演劇を見ることを、とても楽しみにしていた。

架空の世界の話は、本でもワクワクするくらい好きなジャンルで

友達に聞いた話から、期待に胸を膨らませていたのだ。


劇場は、かなり古い時代の建築物で、

王宮とも違った建築様式になっている。

凝った内装を見るだけでも、長い年月を想像させる

人々を魅了する建物だった。


シャアルはボックス席をとってくれ、軽食と飲み物も

あらかじめ頼んでいてくれたようだった。

ソファ席にアリシアを着かせると、自分は当然のように

ぴったり隣に座り、いつものように組んだ足の上で

アリシアの手を愛でていた。

……ドキドキする……

毎日、このようにされていれば、いい加減に慣れそうなものだが

アリシアは、いまだに胸の鼓動に支配され恥ずかしくて

照れくさくてと、うまく頭が働かなくなるのだ。

時々、自分でも思うことはあった。

恋だからドキドキするのか?慣れなくてドキドキするのか?

家族にはドキドキはしない。友人にはこんなことはされない。

でも、シャアル以外男の人に試してもらう訳にもいかず

アリシアは自分の気持ちに、判断のつけようがなかった。


「シャアル様、私、今日の演目をとても楽しみにしていたの。

連れて来てくださってありがとう」

真っ赤になっている自分を意識しながら、それでもこれだけは言わねばと

アリシアは恥ずかしそうに話し出した。

シャアルは嬉しそうにうなずいた。

「アリー、喜んでくれると私も嬉しいよ。

これは私も観てみたかった演目だった」

「シャアル様も?シャアル様は、よく観劇はなさるの?」

「あまりしないが、時々付き合いで。

招待していただいたりするからね。恋愛ものは苦手なんだ」

「そうなのね?私も実は、あまり恋愛小説は読まないの。

友達に読むべきだって薦められるんだけど、

つい歴史の本を選んでしまって」

「たまには良いのかもしれないが、毎回はちょっとな」

シャアルは笑った。

その笑顔にアリシアは不思議な気分になる。

アリシアにとってのシャアルは、表情豊かな強くて優しい人だった。

でも周りにとっては、そうでは無いらしいと、つい最近気が付いた。

シャアルは普段、無表情で静かで、騎士団で もしも笑うことがあれば

それは訓練が3倍になることを意味するらしい。

氷結の賢者、それが騎士団での二つ名になっていた。

皆、優しいシャアルはアリシア限定だと力説するのだ。


「アリー、ほら」

シャアルは当たり前のように、小さなベリーをアリシアの口元に運んだ。

会話のおかげで静まった胸の激しい鼓動がまた始まり、アリシアは真っ赤になった。

シャアルは、期間を気にせずアリシアに考えて欲しいから、ご褒美を増やして欲しいと

話していた。アリシアに食べ物を食べさせたいと言って来たのだ。

シャアルはフクロウ属の特徴で、

自分が相手に食べさせる行為も愛情表現らしいと言った。

ただし、先祖もそうだったかは知らない。でも自分はそうなのだから

たぶん、フクロウ属の特徴なのだ。たぶん……。


アリシアも最初は子供みたいだからとか、

色々言ってみたのだが、シャアルに敵うはずもなく

いつの間にか、それもご褒美になっていた。

これも全然慣れない……恥ずかしそうに少し口を開けるのが精一杯だった。

シャアルは、アリシアが一口ずつ食べるのを楽しそうに見ていた。

シャアル様は楽しいのかしら……?

アリシアは不思議に思うのだが、実際のシャアルはとても楽しそうだ。

シャアル様が楽しそうだから良いか……。

今日はボックス席だったから、まだ良かった。

一度は王宮の食堂で、シャアルがせがんだので真っ赤になって

こういう事は2人だけの時にと、小さな声で頼んだのだ。


シャアルは、恥ずかしそうに口を開けるアリシアが愛らくして

しようがなかった。一日中、食べさせていたい。

アリシアが美味しいと言う物は、なんでも食べさせたかった。

実は食べ物だけではない、アリシアの世話は全て自分でしたいのだ。

誰になんと言われようと、自分は自制している。

だいたいやりたい事の十分の一もできていないのだ。

シャアルが、そう思いながらご褒美を堪能しきった時、

ちょうど演目が始まる頃合いになっていた。


ご褒美を堪能され尽くしたアリシアは、頰が上気し、

顔だけでなく、ドレスから覗く首から胸下まで真っ赤になっていた。

シャアルにとって、それはひどく煽情的だった。

大きく息を吸い、気持ちを切り替える。

これでまた当分の間、アリシアを待てるだろう。たぶん……。

シャアルは、そう思いながらアリシアと舞台へ視線を向けるのだった。

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