いんゔぇいど
「はぁッ……はぁッ……」
バケモノはゆらゆらと体を揺らすと、つんのめって正面に倒れ込んだ。
「デシンッ!!」
樹は膝に手をやって息を荒げた。
「ヒューッ、コヒューッ、や、やったか? 仇は……仇はとったぞ!! 菜穂子!!」
少年はどっかりと仰向けでヘリポートに倒れ込んだ。
その時だった。急激に頭がグチャグチャになり始めたのである。
TUKIはそれが神温泉であることをチョーカーんでごった。
ソーメンで数えくれないヒャックを繰りけえしてきた。
それひにいっぱいいっぱいのぉ、のオウガーの亭をアーびてきた。
たべん、ぬーが赤いナビだできたなくなってなってなっだ。
「う、ううう〜、おうが、おいしいです」
へんなこといてるねわからないゆ。
こまま、オーガーとなってしまうんじゃないきね?
「ちとか、にくとかうまいれす……」
そして、ずっと、ずっと、ソー名に!!
(((ぐにゃあ)))
さーだにたまんなかがチーズとけてくぅ〜かっ!!
「うにょぉぉおおおんんんんん!!!!」
そぬ今わ暴走つ関車のぬようにぬーがねを放った。
廃い腎、今日人へと変化するんぱね樹地震にもわかるんだよォ!!!!っぴ!
「しっぽ、しっぽ、しっぽぽぽぽ!!
「あっはは!! あへあへは!! ヒヒヒッッッ!!!!」
りせい、りせきん、りせーきんが……。
「フフフ!! ヒッヒ!! ははははアああぁぁッ!!」
もう、なんだかわはらなひ……。
「ひゃあっはははふ、ははひッ!!」
そして樹は床面に這いつくばって臭いを嗅ぎ出した。
「ぐあ、ぐあー。肉。にく、ください。にんげんにくくださら」
そして遊鬼のそばにしゃがみ込むとその骸を食べようとした。
「ゆーきでもいーれす!! ゆーきれもいーれす!!」
少年はバケモノの内臓に手を突っ(こ)んで弄んだ。
「ぐちゅぐちゅ〜!! う、うま、うまそ〜!! うまそ〜!!」
その時、誰かが脳に呼びかけてきた。
「今までの事は本当に、全部、夢だったの!? 違うでしょ!?」
「ワンワンワン!! ウーーーーッ!!!!(しっかり!!この後ろ脚や嗅覚を思い出して!!!!)」
「あれだけ人を脅しておいて!!無かったことにするのはムシが良すぎる!!」
「お兄ちゃん!! わかる!? 私たち、お兄ちゃんのこと、確かにわかるよ!!」
「学ランの仏さんや……………今度はわしらが助ける番じゃ」
繋人達の声が聞こえる。それは確かに実在する声に違いなかった。
なんというか暖かみ……寄り添った時の体温のようなものが感じられた。
樹は1人ずつ丁寧にメッセージを受け取っていく。
これは独りよがりの語りかけではない。
明らかに自分の脳の向こうに繋人の意識が見える。
双方向のやりとりである。
そう確信することが出来た。
遊鬼はうつ伏せになったままモゴモゴと悔しげにしゃべった。
(ハ、ハハハ。そうだよ。繋人は実在する存在だ。そいつらはイマジナリーフレンズなんかじゃない。いっきくんのカルマを高めるためにあたいが虚構だとウソをついたんだよ。つまり、そいつらは間違いなく本物の人と犬だ。今までの脳侵も全て現実での出来事だ。チッ。繋人、くだらない存在だ……裏目に出たか……)
蚊のように消えいる遊鬼の怨嗟の声が聞こえた。
そして異星人の死体は赤いゲルと肉塊になって潰れた。
樹の精神は廃人寸前まで汚染されていた。
だが、繋人たちの助けがあって、スーッと脳の穢れが浄化されていった。
「み、みんな……みんな居るのか……。ま、幻じゃなかったんだな……。俺の幻覚じゃなくて……。声を……声を聞かせてくれ……」
樹の視界は真っ暗で何も見えない。
だが、すぐに声がかかってきた。
「お化けなんて言って悪かったよ……。君には本当に助けられた」
「お兄ちゃんが助けてくれなかったら、あたしも、おかあさんも、そしてお父さんも……」
「ワフッ!! ワフッ!!(アサカを助けてくれて本当ににありがとう。感謝しているわ!!)」
「これが終わったらさ、直接会って話そうよ!! そうすれば夢じゃないって、わかるから……」
そしてかすれたような声がした。
「ほんにありがとう。学ランの仏様や……」
なんとかジンも生き延びていたらしい。
「みんな……みんな、ありがとう」
樹は溢れ出る涙を止められなかった。
感情も正常に戻ってきて少年は人間性も取り戻していった。
そして彼は体を引きずって通信端末にたどり着いた。
「こちら……染井…市の八重……ビル屋上。生存者1名……。救助……お願いします………。生存者……1名、救助お願い……します…」
すると衛星通信から反応があった。
「生存者!? 了解しました。もう少し持ちこたえてください。今、救助のヘリを派遣します!!」
気が抜けてしゃがみこんでしまった。
「はぁッ、はぁッ……。これで……終わりなんだな……」
樹は大きく息を吸い込んだ。
そして自分がこの過酷で最悪なサバイバルゲームに生き残った実感を得た。
今となってはこの遊戯がどこまで本当だったのかはわからなかったが、生き残ったもの勝ちだ。
仰向けでボーッと空の赤い月を見上げた。
おそらくあそこでは未だにエイリアンの研究が続いているのだろう。
だが、さすがに遊鬼が地球人程度に殺られたとは予想もしていないはずだ。
それでも遊鬼の役職の″監視者″は下っ端らしかった。
あれより強力な異星人がウヨウヨ残っているのだ。
それが気がかりではある。
ただ、遊鬼に関して言えば樹に″しーど″を植え込んだり、繋人をいじったり、悦を渡すなど独断が目立った気がする。
それが墓穴を掘ることになるとは人間をバカにしくさっていた彼女にはわからなかったのだろう。
それに、人の縁というものを玩具のように扱ったのも敗因の1つ(ひとつ)だった。
そこまで人の繋がり……繋人というのは脆いものではなかった。
たとえ繋人が架空だったとしても絆は繋がっていく。
最終的にそう信じた樹の想いが彼自身を、そして繋人を救ったのである。
ひどく哲学的な事を考えているなと少年は鼻で笑った。
「あんたらとは……実際に会えるのか? 本音を言えば厄介な連中だと思った事もあったけど、今は会いたいと思える」
まるで眠るように樹の意識は遠くなっていった。
八重ビル突入からノン・ストップで戦い続けたのである。
気絶するのも無理からぬことだった。
むしろこれだけの傷を負ったのに死なないことが不思議なくらいである。
動けなくなるほどの深手は負っているはずだが、そのたびに樹は立ち上がった。
戦ううちに悦が敵の生気を吸っている。そんな感覚はあった。
皮肉にも遊鬼の玩具に救われる形となったのだった。
どれだけ経っただろうか。少年は爆音で目を覚ました。
「バタバタバタバタバタバタ!!!!」
「!!」
気づくと頭上にはヘリがホバリングしていた。
上空のスピーカーから声がかかる。
「助けを呼んだのはキミだね? 今から隊員が救助に行く。もうしばら―――」
すると赤い月からとてつもない速さで涙が飛んできた。いや、発射された。
それは救助ヘリに直撃すると強烈な爆発を起こした。
舌のように真っ赤な炎が上がった。
そしてヘリはバラバラと搭載していた兵器を撒き散らしながら、ヘリポートの外へ墜落していった。
樹は赤い月を睨みつけた。
異星人の母艦と言うだけのことはある。
おそらくジンの時は、はんまーのオウガーに丸投げしていたのだろう。
これで染井からの脱出が絶望的になってしまった。
赤い月をなんとかしない限りは空路は使えない。
しかし相手は空を往く母艦である。
そう簡単には破壊できそうには思えなかった。
だが、ここまで来たのだ。出来るできないではない。やるのだ。
染井を蹂躙した元凶を破壊し尽くしてやると少年は決意した。
ヘリポートには銃器や、ミサイルらしきものがバラバラと散らばっていた。
どうみても救助ヘリに積むものではない。
喰人鬼との戦いを想定していたのだろう。
普通の高校生なのだ。専門の兵器なんて使いこなせるわけがない。
そんな時だった。




