第9話 揺れる
夜中をふたりで歩く。点滅する信号。左右から車がこないのを確認してから渡る。側から見たらわたしたちはどう写るのだろうか。
中学の横を通る。
あの頃、告白して成功していたら、わたしたちは今も一緒にいたのだろうか。どんな関係になっていたのだろうか。答えなんて出ないのに。そんなことを思ってばかりいる。埋まらない空白を埋めることばかりで頭いっぱいで。今をもっと楽しまないといけないのに、蒼くんや颯太、それに類斗の家族のことがどうしても頭をよぎる。
ただ、逆に蒼くんたちといても類斗が頭を占領してくる。もうどうしたらいいかわからない。
「類斗」
「ん?」
呼びかけると、優しい目で変わらずわたしを見てくれる。それだけのことが嬉しくて仕方ない。
「ゆり」
「なに?」
互いに呼び合って笑う。
高校生の頃に戻ったら、わたしは蒼くんに恋をしないで、類斗だけに真っ直ぐ生きることができるのだろうか。でもそうしたら……。
大好きな颯太には出会えなかった。
「ゆーり」
「類斗……」
確かに、蒼くんや颯太との日々も大好きで堪らない。でも類斗との思い出の方が色濃く残っている。
それなのに、そうだから、そばにはいられない。
この関係が行き着く先は……特にない。
わたしは手を繋ぎながら目を閉じる。なんでやねん。なんでやー。
隣を見ると、類斗も目を閉じて、泣いていた。それを見て、わたしも静かに涙を流した。
「やばー嬉し過ぎてさ、俺泣いてる」
「へ?」
わたしは類斗の泣き顔を見て涙が止まらなくなる。
類斗……類斗……わたし、類斗の全てが欲しいよ……。欲張りでどうしようもないね。最低なわたし。
「ゆりーゆりの泣き顔は見たくないわ」
中学の裏門辺りの塀に、ふたり並んで座る泣きながら。
「ごめん、類斗が泣くから、わたしも涙出てきて」
「だって、嘘みたいやん、大好きなひとのそばにいて大好きって言ってもらえるのって」
きらきらとした類斗の純粋な気持ちがまぶしすぎる。それに比べてわたしは……。わたしが拒否れば、元の生活に戻ってみんな平穏に暮らせるのでは? 類斗も正直こんなわたしといたらしんどいんじゃ? そんなマイナスなことばかりが頭をよぎる。
「ありがとう、そろそろ送るわ」
今日ここでバイバイしたら、どれだけ気持ちが楽になるだろう。だけどその反面、後悔しか残らないだろう。
だからわたしは……絶対に類斗を離さない。




