第47話 話し合い
颯太を迎えに行く道も、それから担任の先生や周りの父兄に話しかけられたことの内容も一切思い出せない。ただただ、自分のあほさに嫌気がさした。
類斗……類斗にも伝えないと……と思って、ふたりがテレビを見てくれている間に霞草の部屋に移動して電話をする。仕事中だろうなって思いながら。結局今日は昼間できなかったから。
「もしもし? 類斗。ごめん仕事中やんな」
「ゆり、ごめんな昼間、あん時実は今電話できひんねんって言おうとして」
「こっちこそ。そうやったんや。今は大丈夫?」
どうしよう、何から話そう。
「その実は……」
「うん、どした?」
「類斗との子供……妊娠した」
「え!? まじで言ってる?」
類斗の声が、高くなる。
「やば?! 嬉しい! やばいやばい! ゆりに今すぐ会いたい」
「喜んでくれてよかった。ただ、そのややこいことになってしまって」
「もう言ったん? 旦那さんに? 俺も一緒に……」
「昼間、類斗からもらった電話に出ようとしてたら切れちゃって、移動してからかけたつもりが、蒼くんから電話かかってきてたみたいで、わたし気づかへんっくて。その、類斗やと思って妊娠のこと伝えてしまって……」
「そうやったんや……俺東京行って、話するから」
「大丈夫大丈夫、わざわざええよ。今日早く帰って来てくれるみたいやし、そん時に話すことになってるから」
類斗の声を聞くと安心できる……。自分で招いたことやし、自分でなんとかしやなあかん。
「俺も行くわ。今から行くから待ってて」
「あかんあかん、類斗はそっちにおって。家族も心配するやろし」
「大丈夫、とにかくついたら連絡するから」
「ちょ、類斗……」
「大丈夫、ゆり、絶対俺がゆりを守るから。愛してるゆり、とにかく今は無理せんといて欲しい。ゆりと赤ちゃんを絶対に守るから」
そこで電話が切れる。
どうしよう……。とりあえず、ふたりにごはんをって思うのに、包丁の握り方もなんかわからへんし。引き出しをみると非常食用に置いてあった子供用のカレーのレトルトが目に入る。
今って非常事態よね、わたしにとって。期限も近そうやし、使っちゃおう。ご飯をといて、しばらくざるにあげておいてから炊飯器に水と一緒に入れた。そして炊飯ボタンを押す。
2人と一緒におもちゃで遊んでいると、ドアが開く音が。ああ、ついにこの時がきたか、と思いながらわたしは玄関の方を見る。
ギターを抱えた蒼くんが、立っていた。
「ゆり」
蒼くん、わたしなんかの名前呼ばんといて、そんな優しい声で。
蒼くんがギターケースを床に置き、それから椅子に座った。
「俺が忙しくしてたから、ごめん……ていうか、忙しいよな、現在進行形で俺。なんならまた夜スタジオに行くし。もっとそばにいられたら……」
「蒼くん」
わたしも蒼くんの椅子の向かい側に座る。
「わたしが全部悪いから、蒼くんはなんにも」
「A市で会った時に、俺なりの勘でわかってた。でも仕方ないよなって」
「え」
「わかってて、でも忙しくしてんのは俺やしって、黙認しようと思ってた。ゆりがそれで満足してくれるならって」
弱く笑う蒼くん。なんで笑ってんの? そしてなに言ってんの、蒼くん。




