第46話 罪
颯太を登園させ、緒采と過ごすこの時間もあと少し。冬にはーーちょうどわたしと類斗の生まれた日の間にーーこの子は生まれてくるんだ。まるでわたしたちを結びつけるみたいに……。
何度も滑り台を滑りたがる緒采を見守りながら、わたしは公園を見渡す。
O県のあの夜の公園。類斗からのプロポーズ。そして廃校になった中学の校舎。思い出の場所がどんどん壊されていくのに、わたしはそこで新しい命を宿らせた。
だけど、あのぼろぼろになった校舎や、バリケードをされた公園を思い出すと、明るい未来が想像できなかった。それでも、このお腹の中にいる類斗との子供を抱きしめたいし、類斗と一緒に育てたい。
でも、颯太と緒采のことも心から愛している。離したくない。でもそんなことが許されると思わない。
罪を償いながら生きていくしかないだろう。
類斗……わたしは心の中でつぶやく。
たとえ罪を犯したとしても、幸せになったらあかんってことないよね? ひとはやり直せるよね?
この結婚を解消しておいたらよかったんかな? 正直な気持ちを伝えて、愛するひとがいるからって‥…。何度そのことについて自分で考えただろう。繰り返し考えてはやめ、そしてまた日常に戻った。日常が好きだ。3人のことが本当に。だけど、類斗との関係はそこからは離れた別の場所に確実にあって……。
距離がありすぎる。
宇宙空間でもない、地球なのに別の場所というか。表現できない。
ツアーが終わったら、言おう。蒼くんに。そしてその前に、類斗に。
「もしもし……」
緒采がお昼寝したタイミングに、類斗から着信があった。あの部屋に移動している間に、切れたのでわたしが折り返した。だけど、手が震える。指から感覚がなくなってしまったみたいだ。
着信履歴の類斗の文字を見つめる。こんな風にスマホで繋がれる日がくるなんて。ずっと繋がっていられる未来がくるなんて。
そして、ふたりでしか、ふたりだけにしか得られないふたりの子供を妊娠できる未来くるなんて。あの幼かったわたしに言いたい。言ってあげたい。
真っ直ぐ類斗に向かって進めばいい。進めば、必ずわたしは報われる日がくるからって。いくらすれ違っても、糸がもつれても繋がっているからって。
「もしもし……?」
「類斗……わたし……妊娠した。類斗との子」
「……」
返事がなくて焦る。そりゃ類斗も悩むよね、どうしよって。
「ゆり」
「類斗」
「今日早く帰るから、ゆっくり話そう」
思わず、わたしは耳からスマホを離す。
スマホの画面を見ると、
〝蒼くん〟
という文字しかなかった。




