第45話 パンク
翌日になり、颯太を園に送って行った足で緒采と一緒に2人を出産した産婦人科を受診した。派手やかな見た目ながら、先生が優しいのでとても人気の産婦人科だった。
「おめでとう、妊娠してますね」
膣から器具を入れられる。嬉しいのに、3度目ともなると辛くて長い道のりを思い出す。奇跡だし、神秘的な出来事なのにわたしは怖さでいっぱいだった。
「今藤さん、大丈夫?」
「え」
「つわりとか」
「違和感はあります」
「上が2人いるんだし、無理しないでくださいね」
待合に戻り、緒采をキッズスペースで遊ばせる。しばらくすると会計で呼ばれた。
「次回までに母子手帳もらってきてくださいね」
「はい」
わたしはお金を支払って、外に出る。あれ? わたしなんか忘れてへん? って思って振り返ると、クリニックに緒采を残して来てしまっていた。あかんやん、わたし。ぼんやりがすぎる。
とにかく、しばらく黙っておくか……バタバタして、お腹の子に負担がかかったらあかんやろうし。そんな風に思うなんて、やっぱりわたし、もうこの子のお母さんになってる。
……類斗には1番に伝えたい。
それから蒼くんに……どのタイミングで言おう。答えが出えへん。
誰の子供か言わずに過ごして、出産したら言うとか? そんなんいいんか?
ああ、あかん。もう頭がパンクしそうや。
それからクリニックの帰りにスーパーと公園に寄って、帰った。ふー疲れた。
暑い夏を越えて少し肌寒くなる頃に、類斗との子供を出産か……嘘みたいや。幼い頃の類斗の顔が浮かぶ。鬼ごっこをした時や、サッカーをした時。
類斗……類斗……どうしよう。
この日も、蒼くんは2人が眠ったあと21時ごろに家に帰って来た。
「ただいま?」
「あ、蒼くんおかえり」
リビングで抱きしめられる、きつくきつく。それからキスされる、今日は深くて驚く。
それから顔が離れる。
「ゆり、次のアルバムがリリースされたら全国とあとアジアにヨーロッパツアーに出ることになってん!」
「ほんまに? すごい! おめでとう」
蒼くんが相当な努力をして、アルバムを完成させようとがんばっていることは知っている。
だからしばらくは……ツアーが成功するまでは黙っていよう。
そんな風に思った時に、蒼くんがわたしのパジャマを脱がせようとしてきたので、思わず「ごめんなさい」と言ってしまった。
「ごめんごめん」
「いやその……蒼くん」
「え……もしかして」
「うん、今日緒采ちゃん連れて病院行ってきた」
「まじ?! めちゃくちゃ嬉しい! おかあさんたちには?」
「まだ……もう少ししてからなって、何があるかわからへんし」
「そうなんや。嬉しい! 最高! ありがとう、ゆり。また大変な思いさせるやろうけど、俺もっとがんばるわ」
「ありがとう」
「寝て寝て、ゆり」
「うん……」
嬉しそうに蒼くんはわたしを抱きしめてくれる。
だけど、ごめんなさい。
蒼くんの子供じゃないの。




