第43話 最低なわたし
「颯太くん、大好きみたいで。よく遊んでもらっててありがとうございます。仲野澄晴の母です」
と、声をかけてくれたのは、同じクラスだというお母さんだった。颯太は照れているのか、反応しなかった。
「いやーこちらこそ、仲良くしていただいて嬉しいです」
他のお母さんよりもさっぱりとした顔で、服装も普通だったので安心した。それから途中まで一緒に歩いて帰り、色々と話をした。
そしてマンション前で別れて、わたしたちは中に入った。
「仲良しのお友達できてよかったね」
「すばくんと一緒にえんていで遊んでん」
そんな報告を聞く日がくるなんて……って思いながらマンションのエレベーターのボタンを押す。そして部屋のある階でとまり、2人をおろしてからわたしもおりた。ボタンを押して鍵を開け、部屋に入る。
普段着に着替えてから、ふたりをお昼寝させる。
そして、わたしはひとりトイレに向かう。まだ不確定だけど、体調の変化を感じたから、緒采と一緒にドラッグストアに行き妊娠検査薬を購入したのだった。
胃の不快感とか、お腹の違和感も生理前に感じることではあったけど、予定日ぐらいを過ぎてもこないしもしかしたらと思う。
でも、いつも検査する時よりもやっぱりドキドキする。検査薬を箱を握りしめてトイレの前に立つ。なかなか中に入る勇気がでない。
もし妊娠しているとしたら……。
タイミング的なことを考えると、類斗との子供だろう。
あの類斗と。
嬉しいはずやのに……。
望んでいるはずやのに、わからなくなる。
蒼くんには正直に話すしかない。最低なわたしでごめんなさい、と。なんでもするから、類斗と一緒にならせてください、と。
あかん、手が震えて箱が開けられへん。
わたしは、それでもトイレに入る。スリッパや……とか変に現実が歪んで見える。便座にとりあえず、座る。そして、箱を親指で押して開け、検査キットを取り出す。そしてキャップを外して、それからようやくズボンとパンツをおろした。
あ、出る、と思いながら尿をかける。これでだいたい5秒ぐらいかなって思ってスティックを取り尿が染み込んでいく妊娠判定窓を見る。キャップをつける。
1分待たずに、結果が出る。
妊娠している……。
どうなるかわからないけど、たぶん妊娠しているだろう。
あの夜だろう、恐らく。
壊される予定の校舎でした、あの時だろう。
望んで作ったはずなのに、恐怖で言葉がでない。
颯太……緒采……蒼くん……。
最低な、わたしに出会わせてごめんなさい。




