第41話 ファン
東京に戻ったわたしたちは、颯太の入園のお祝いで旅行にでかけた。キッズスペースや近くに遊具も併設されている、子供にも大人にも優しいホテルだった。
そのホテルの近くの遊園地で半日遊んで、昼寝のためにホテルにチェックインして、颯太と緒采を眠らせ、わたしも横になった。生理が近いためか眠気が襲ってくる。添い寝しているつもりが、わたしもベッドで一緒に眠っていた。
「ゆり」
と、声をかけられて目を覚ますと蒼に手を引かれる。そして、隣のベッドの中で抱きしめられ、キスされた。それから抱き合って眠る。幸せなはずなのに幸せではない。
ここにいるのが類斗ならって思う最低なわたし。
そのまま家族3人で眠り、夕方に颯太たちの方が先に起きて部屋にあったおもちゃで遊んでいた。
わたしはその音に飛び起きて、2人のおむつを急いで替えた。
よかった、蒼くんは眠っている。疲れているのに、いつも家族のためにもがんばってくれるから、わたしは申し訳なく思う。わたしがしっかりしていないから。
わたしは2人を連れて、外の遊具で遊ばせようと準備をして連れ出した。
2人は広い遊び場にとても喜んでいる。緒采は颯太を追いかけようとするから焦る。おっとりしている颯太に比べて、緒采は活発になる気がする。同じ親の子供やのに、きょうだいやのに、全く違うから驚く。
でもそうか、わたしと悠太郎は全然違うもんな。って納得。
小さな滑り台を嬉しそうに何度も登っては降りていた。
もう幼稚園か……と思う。
昨日出産したような気分だ。それなのに、もう幼稚園。時の流れは早いなって思いながら、あれ? 夕食はいつからだっけ? と思って、2人を連れて部屋に慌てて戻った。
ベッドで眠る蒼くん。
「おとーさーん」
「とーたーん」
可愛く起こしてくれるふたり。蒼くんが目を覚まして眼鏡をかける。
「ゆり、ごめん」
部屋に灯りがないと、もう真っ暗だった。
「ううん、大丈夫。もう夕食かな? 時間忘れちゃってさ」
「何時?」
「17時ぐらい」
「あーそっか……。じゃあ行こうか」
4人でレストランに向かう。
部屋は個室になっていたので助かる。先に子供達のごはんが届いて、それを食べさせながらわたしたちもコース料理を堪能した。
海鮮に肉、採れたての野菜も豊富でとてもおいしかった。
デザートが運ばれて来た時に、ホテルの従業員のひとが数人やってきて、申し訳なさそうに「AOIさんの大ファンなんです」と教えてくれた。
「嬉しいです、写真でも撮りましょうか?」
「えーいやーだめです。家族水入らずなのに。ただ伝えたくって。いっつも元気もらってます! またライブ行きます!」
「わたしも大ファンです!」
「もう最強です!」
「本当に失礼しました! ごゆっくりお楽しみください」
と言って足早に去って行ってしまったので、わたしと蒼くんは呆気に取られながらも吹き出した。
「めちゃ気遣わせてしまったなあ、ははは」
「いいひとたちやったね」
子供たちがごはんを食べ終わり退屈そうにしていたので、わたしたちは部屋を出た。先ほどの従業員のひとたち以外にも見送ってくれて、なんか申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「奥さんめちゃ綺麗ー」「やばいよね? 子供さんももう目くりくり」
いろんな言葉が聞こえる中、わたしはひとり暗い気持ちになる。
彼らのことも、わたしは裏切ることになるんだと。




