第39話 たわいもないことでも
次の日の夜、文香たちと待ち合わせた駅前のお好み焼き屋に向かう。
「わー文香、久しぶり」
「悠莉、元気してる?」
立ち話していると、奏也がジャージ姿でやってくる。
「おー大川」
「奏也ひさしぶり」
「類斗はサッカーで遅れるって連絡あったわ。あいつすげえな。またチーム復帰したみたいで」
「そうなんや」
どこまで知らんふりしたらいいんやろ? 迷うけど、まあてきとうでいいっか。
わたしたちは先に店に入る。わたしは文香の隣に座った。メニューを見ながら適当にお好み焼きやサイドメニュー飲み物を頼んで届くのを待った。
「すげーよなあ、大川が2人目って」
「自分が1番驚いてるよ、奏也はどうなん?」
「俺は特に、彼女とも順調っていうか、まあ結婚はまだかな」
「そうなんや。文香はなんにもないよー仕事しかしてへん」
近況報告をしていたら、注文していた料理が次々運ばれてきた。すでにお好み焼きは完成されていたので、あとは目の前の鉄板から切り分けて食べるだけだった。
お好み焼きの隣にはとんぺい焼きや、焼きそばや海戦も焼かれていて、とても美味しそうだった。わたしはお茶を飲み、ふたりはビール片手に料理をつまむ。
同級生だった〇〇はどうしてるだの、結婚したとか、結婚式に行ったとか東京に行ってる奴がいるとか、そんな話だった。
そんな時に、店のドアが開いてスーツ姿の類斗が入ってくる。店の雰囲気が明るくなったような気がした。どう反応したらいいんやろ、って思いながらわたしは斜め前に座った類斗をちらっと見た。
「お疲れー」
「お疲れー」
「飲みもんどうする?」
「俺もお茶で」
「酒は?」
「やめてる」
「まじ?」
「体作ってるからさ」
「まじかー。でもまじで体ごつなったよなー」
「そういえば、室田知ってる?」
「チームGの?」
「うん、F県で戦ったことあって、ほんまは一緒の大学行く予定やってさ。だからもうがぜんやる気でたよね」
類斗は奏也と、サッカー話に花を咲かせる。わたしは文香と、子供の話をしたり、共通の友人の話をした。
そばで類斗の声が聞こえるだけで嬉しい。昨日はあんなに距離が近かったのに、今日は本当に対岸のひとみたいだ。
「大川はどう?」
「あーさっきさ、2人も子供おんのすげーよなって話しててん」
「ほんまに、あの悠莉やで? 類斗から離れた場所でさ」
「意外と大川って芯があるしさ、しっかりしてると思うけど。まあ抜けも多すぎるけど。でもそこが可愛らしいんちゃう?」
「そう! とにかく悠莉は可愛いのよ! 放っておけへんねんなー」
「な、なんかありがとう……。3人がおらんかったら、今のわたしはなかったと思うわ」
それからまた話題はサッカーのことになって、みんなで笑って盛り上がった。




