第36話 既婚者子持ちでありながら
颯太は幼稚園の面接も無事にクリアして、入園が決まった。大きな木が園庭にある、清々しい園だった。蒼くんも気に入っていた。
高額な入園金を支払ったあとは、制服など必要な用品を購入しなければいけなかった。颯太もあまりよくは理解していないかもしれないけど、楽しみな様子だった。
「家まで送るから」
と言って、早朝に車を発車させて、わたしたちをO県の実家に送り届けてくれた。颯太も緒采もとってもいい子だけど、やっぱり3人での新幹線は不安だったのでとってもありがたかった。
高速道路で移動しながら、わたしは類斗を想った。
既婚者子持ちでありながら、婚約者がいる。
今日は昼間に類斗と会うことになっている。午後から仕事を休んでくれたのだ。夕方からサッカー練があるからそれまでだけど。十分だった。
実家に着くと、すぐに母と父が出て来てくれて、颯太と緒采を家の中に連れて行ってくれた。
「ゆり、友達と会うん?」
「え、あ、うん」
「そっか、楽しんで。颯太たちよろしく」
そして車を発進させて行ってしまった。わたしは鞄を肩からかけて、玄関から入る。
類斗とバッティングしたこともあり、ちょっと怪しんでたりして……? って頭をよぎったけど、まあ、大丈夫かって変にポジティブなわたし。
ふたりはじいじとばあばに買ってもらった新しいおもちゃに興味津々で、もう夢中だった。
「悠莉、出かけるんやっけ?」
「うん」
「もしかして、類ちゃん……?」
「いや違う! 文香とか中学の子」
「そうなん? 類ちゃんかと思ったわ。文ちゃんにもよろしくね〜楽しんできて」
緒采はもう卒乳している。だから、妊娠の可能性はある……って思うとドキドキしてきた。
っていうか、お母さんに嘘ついたし、それに文香にも申し訳ない。
文香……どうしてるんやろ……せっかく地元に戻ってきたし会いたいな。スマホを取り出して地元に戻ってきたことを伝える。
あんなに文香、奏也、類斗そしてわたしの4人で夢中で、当たり前のように遊んでたのに類斗と関係ができてからあんまり会わなくなっていった。
2人は気づいてるんかな……? わたしたちのこと。離れないように繋いでくれてたのは、もはや2人のような気もする。
《おかえりー! また4人で遊ぼうや》
文香から返事がすぐにあった。
2人になら、打ち明けてもいいかもしれないし、なんなら打ち明けるべきかもしれない。でもこのタイミングだったら……なんか巻き込むようで卑怯な気もする。正式にわたしたちが結ばれたら−−紙だけじゃない強力なもので−−そしたら、2人に話そうかな。




