第33話 最高の約束
だけど……。
「類斗!」
類斗はお構いなしに、公園に入っていく。雑草が伸びっぱなしの公園の中に。
安全第一と書かれたガードフェンスを潜り抜けて類斗が中に入って、それからわたしに手を伸ばす。
「ん」
とびっきりの笑顔の類斗。楽しそうにしている。よく4人で遊んだことを思い出す。わたしも笑顔で、類斗の手を握る。間を潜り抜けて、公園に入る。
「すごい雑草のびっぱなし。でもシロツメクサが綺麗……」
一面にシロツメクサが咲いていて、ちょっと幻想的やった。
「なー俺も廃止になるって書いてんの見てびっくりしてさ」
類斗もここの公園を大切に思ってくれてたんやって思うと、嬉しくなる。
それから、きつく抱きしめられる。なんか類斗の体が以前よりもたくましくなった気がする。
「幸せ……類斗、出会ってくれてありがとう。こっちに戻って来てくれてありがとう」
「俺こそ……あの時ラブホ誘ってくれてありがとう」
「もー類斗嫌い」
「いややー冗談でも、言わんとって」
それから類斗が拗ねた顔するから、可愛すぎてわたしは類斗の唇目掛けて背伸びしてキスをした。それから立ったまま、深いキスをして、顔が離れる。
「実は、俺、サッカー本気でやってて、職場の社長の知り合いのチームがJ3で。俺なんかわからんけど気に入られて実はそのチームに入ることなってさ」
「すごーい……」
「まあ、いうて今の仕事しながらなんやけど」
「類斗……すごいやん……」
「ゆりに1番に伝えたくて」
「すごーい! おめでとう!」
類斗が滑り台の頂上にのぼる。わたしもあとを追う。そこで、ゆっくりとキスをして見つめ合いながら、唇を離す。
「ゆり……俺、ゆりを奪いたい」
奪いたい?
「ゆりの旦那さんみたいに世界で有名にはなられへんやろうけど、俺はもっともっとがんばるからさ……」
「そんなん、類斗は今の類斗のままでいいよ……」
「俺が嫌や。だからさ……」
と言って、類斗の後ろから大きな霞草の花束が出てくる。
「驚いた?! はは、実はさっき来て置いといてん」
「類斗……」
「霞草の花言葉は、無邪気らしい。あとは感謝とか。3歳から一緒やし、ちょっと離れた時期もあったけど……ゆりのこと考えるだけで、俺は俺らしくおれるし、笑ってられる」
「ありがとう、それ、わたしも思う」
「だから……」
花束を見ると、小さなぬいぐるみがのっていた。
「なにこの可愛いぬいぐるみ」
類斗がポケットからなにかを出した。街頭の灯りでわたしはそれを見る。小さなぬいぐるみがついたキーホルダーだった。
「可愛い、花束のやつと一緒やん!」
「修学旅行行った時に実は買ってて、ゆりに渡そうってずっと思ってた。俺の気持ちはずっと変わらへんよって意味で」
「嬉しい。10年ぐらい持ってくれてたってこと?」
「うん、ゆりにプロポーズする時に渡そうって思ってたから」
プロポーズする時にってことは……。
「ゆり、俺と結婚してほしい」
「え」
「なんか色々ぐちゃぐちゃやけど……ごめん。いつになってもいいから、ゆりと一緒にいたい。もっと堂々と会いたいし、周り気にせずそばにおりたいから」
「類斗……ありがとう」
「ここの公園で、言おうって俺ずっと決めてたから。なくなっちゃう前にどうしても言いたかってん」
大好きな、類斗からのプレゼント。
「なあ、ゆり」
「なに?」
ぎゅっと抱きしめられる。そして耳元で……。
「俺との子供作らへん……?」
って言ってにやって笑うから、もうドキドキしてそして恥ずかしすぎてわたしはひとり滑り台を滑って降りた。
類斗が追いかけてくる。
いくら約束しても、わたしたちは既婚者子持ち同士。この公園みたいに、たとえ壊されようともずっと繋がっていられる思い出みたいな関係なのかもしれない。




