第30話 幸せな気持ち
東京に戻る途中で夕食を済ませて、それからすぐに蒼くんは仕事に行った。
わたしは颯太がおもちゃで遊んでいるのを見ながら、台所で類斗に電話を入れるけど仕事中だろうか出てくれなかった。
もやもやする……。類斗怒ってるやろなーって。とにかく謝ろう。
いくら待っても類斗からの折り返しはなくて、諦めてわたしはお風呂に入ってすぐに颯太と一緒に眠ろうとベッドに入る。
それやのに、眠れそうにない。泣きそうや。ただでさえ距離離れてるのに、あんな別れじゃなおさら辛すぎる。お腹も重いし……辛い。
とにかく今は安静にして出産するしかない。出産して落ち着いたら、類斗にまたゆっくり会おう。大きくなったお腹を撫でながら「ごめんね」とつぶやくわたし。
なにも知らない颯太の寝顔を見ても胸が苦しくなる。
じゃあやめろって話やのに……。
〝ゆりを嫁にください〟
頭の中で思い出して幸せな気分になる。類斗……。
わたしは夜にハッとして目を覚ます。蒼くんが帰って来た……? と思ってリビングや浴室に行くけど誰もいない。
スマホを慌てて確認すると、
《ごめん、帰られても夜中やわー寝ててな》
蒼くんからのラインだけだった。いっつもすぐに折り返してくれる類斗やのに。忙しいんかなと思ってると、
スマホに「類斗」の文字が。
「もしもし」
「あーごめんごめん、サッカーの練習あったりしてなかなか電話できひんかった! まじ、ごめん。無事東京よな?」
心からほっとする。
「類斗……ごめんね連絡して」
「いやーごめん」
だけで、まだ類斗は何か言いたげで一瞬間が空く。
「どうしたん、類斗大丈夫?」
「いやー……かっこ悪いけど、めちゃくちゃ嫉妬したわ」
「ごめんなさい、謝りたくって」
「ちゃうねん、俺が勝手に」
「迎えに来てくれるってほんまに知らんくて」
「ゆりの妊娠にも、旦那さんの助手席に乗るゆりも」
「類斗……」
「言ってもしゃーないのに。全然俺余裕なくって、もっともっとかっこよくなりたいなーって、ゆりだけのためにもっとかっこいい人間になりたいし、なんなら奪いたいって本気で思った……」
なにそれー!!! もう……悩んであほみたいやった。
「とにかく、出産が終わったら会おう、で、やろう!」
「もう、類斗またー」
「はは。とにかく、俺もこっちで精一杯がんばるから、ゆりも色々あるやろうけど体大事に過ごして」
「ありがとう」
一気に満たされる気持ち。わたしは幸せなまま、ベッドに潜り込む。




