第28話 弱すぎる
それから、颯太もお風呂を済ませたのでわたしもお風呂に入って寝ちゃおうかなと思いながら、類斗たちを探す。まだ嬉しそうにボール蹴ってるし。なんかいいな〜。やっぱり類斗の笑顔。
奏也が「類斗はやっぱりセンスが違う」って言ってたのをよく思い出す。
わたしは風呂場に向かう。久しぶりにひとりでゆっくり入れる……と嬉しくなる。類斗がそばにいるしなおさらだ。だから、そうなのだ、今は奥さんと一緒にいないことになる。その距離が実は嬉しかったりする……って何考えてるんやわたし。
大きくなっていくお腹。もう少しで出産か。1度経験してるが故か、やっぱり怖い。あの痛み再びかーって思うと恐ろしい。超安産やったけど。
わたしはお腹を抱えて、お風呂から上がって体を拭く。出産したら、類斗にまた会えるんかな? しばらくは会われへんやろな……お世話もあるし。落ち着いたら、そうや温泉行こうって約束してたけど守れるかな? 家族にはなんて言ったらいいんやろ。友達と旅行って?
文香……事情伝える? わかってくれるわけないよね……。旅行は無理かもしれへんけど、ちょっとだけなら会えるよね。
わたしがパジャマ姿でリビングに行くと、類斗たちが戻って来てるところだった。
「類ちゃん、ありがとうねほんまに。いつでも遊びに来て。また悠莉連絡したって」
「うん」
「こっちこそ、ご馳走になりました」
「類斗くんほんまにありがとう」
「また来てや〜」
家族みんなで類斗を見送る。颯太も「あいあーい」って可愛い手を小さく振っている。
「じゃ、おじゃましました」
玄関ドアが閉まる。みんながリビングに引き返す。だけど、わたしはパンプスを履いてパジャマ姿のまま、外に出た。もう類斗の姿がなかった。どこやろうって思って探したけどいなくて歩くと、角を曲がったところを歩いていた。歩くん早いなーって思いながら、わたしは追いかける。
「類斗!」
気づかない。
「類斗!」
やっと振り返ってくれた。
「ゆり……? ちょ、なにやってんの、そんな格好して」
そばまで走って来てくれる。
「類斗……ごめん、追いかけてきてしまった」
「どうした?」
「嬉しかった、お嫁さんにしてくれるって言ってくれて」
「おう。じゃあ、遅いしさ。帰って。出産がんばってや」
「類斗が今日、車運転して奥さん乗せてるの見て、目合ったのに逸らされてすごい寂しかった」
「ゆり……」
「ただそれだけ伝えたくて。ごめん気をつけて帰って」
「ゆり……」
「ん?」
「俺がどんな気持ちして毎日過ごしてるか知ってるか?」
「え」
「腹おっきくなったゆり見てどんな気持ちかわかるか?」
「……ごめん」
「いや、ごめんごめん。気にせんといて。家まで送るから」
わたしたちは引き返す、わたしの実家に。手も繋いでくれない。目も合わせてくれない。そんなことだけで不安になるわたしは弱すぎる。




