第25話 のんびり
類斗はどうしても外せない家族との用事があるからと言って、名残惜しそうに去って行った。ちょっとだけでも会えただけでわたしは満足だ。それにおねだりしてたくさんキスもしてもらったし。なにより夜にはまた会える。
わたしは実家でのんびりさせてもらいながら夜を楽しみに待った。
《着いたかな? 送っていけんくてごめんな》
蒼くんからラインが届いていた。実家まで車で送ってもらうことになっていたけれど、急遽外せない打ち合わせが入ったため来れなくなったのだ。
《大丈夫。さっきついたよ。安心して》
蒼くんが送れなかったおかげで、類斗と早い時間から会えた。
「類ちゃん、ほんまかわらず優しいなあ。更にイケメンなったのに」
「そ、そう……?」
お母さんから言われるとちょっと動揺してしまう。そうそう類斗は昔から優しいんだった。
お母さんは夕食の準備があるので、わたしと颯太で公園にでかけた。夕食の準備しなくていいし、颯太のお世話も一緒にしてくれるひとがいるのは本当に助かる。お腹も結構重くなってきたからなおさらだ。
類斗たちとの思い出の公園の前を通る。大きな滑り台とブランコがあるシンプルなものだ。ここで無限に鬼ごっこしたな……と思う。だけど、颯太とはなんとなく入りづらくて、わたしは少し遠い公園に出向く。
颯太は走って遊具に向かう。わたしも後を追う。滑り台などを楽しんだあと、意外とあっさり「ばあばの、おうち、かえる」と言って帰ろうとしてくれたので助かった。手を繋ぎながら歩くと、前から見覚えのある車が走ってくる。
黒色のワンボックスカーだ。運転席に類斗、そして隣には咲良さん……。
嫌だな……って思ってると、類斗と目が合った気がしたけど、すぐに逸らされた。そりゃそうだよな、奥さんが隣にいるんやしって気持ちを切り替えようと思ったけど、あかん……辛すぎる。倒れそう。
それでもなんとか颯太の手を引いて実家に戻る。
約束の18時まではまだ時間があったので、さらにのんびり過ごしたり洗濯物をたたんだり颯太とテレビを見た。
「ただいまー」
悠太郎が学校から戻ってきた。
「おー颯くんやん」
久しぶりの再会に颯太が緊張してわたしにべったりくっつく。
「お姉ちゃんおめでとう。そして類斗くんが来るの嬉しすぎる」
「ありがとう。よかったわ。喜んでもらえて」
お母さんが着々と準備を進めているので、わたしも皿を運んだりして手伝う。颯太はわたしの脚にまとわりついている。
ピンポーン……
「あ、類斗くんや! 行ってくるわ」
悠太郎が嬉しそうに玄関に向かう。
「おー悠太郎、おっす」
類斗の声がする、わたしは思わず頬を緩めてしまう。
「類ちゃん〜いらっしゃい」
「おじゃまします〜」
「お父さん、もうちょっとしたら戻ってくると思うわ」
類斗がビニール袋を抱えてやってくる。
「このビールは父さんから」
「わーありがとう」
悠太郎が受け取る。
そうそう、さっきそういえば類斗に目逸らされたんやった……って気づいてへんかったんかな? でもなんか落ち込むわ。
「類ちゃんのお父さんも元気してんの?」
「あ、うん。めちゃくちゃ。彼女もいるみたいで」
「あ、そー。お母さんは?」
「母さんも元気元気」
わたしは颯太を抱っこしたままで、台所に立っている。距離感が難しい。




