第17話 露天風呂
客室は、森林が見えて露天風呂まであった。絶対高かっただろうなってわかるもの。颯太にも離乳食が夕食に出された。
「ゆり、大丈夫?」
「え?」
「しんどくないかなって思って。ていうかよく考えたら、これ初めての4人での旅行やな」
「大丈夫。ほんまや、初めて」
食事を終えて、蒼くんは少しだけ仕事の電話に出たけど「やっぱ家族タイムやから」と言って電源を切ってくれたようだった。そんなんいいのにー……って思いながら、わたしは颯太と一緒に露天風呂にお湯が溜まっていく様子を見ていた。
わたしと颯太を抱きしめる蒼くん。
「幸せや〜」
「蒼くんのおかげやなあ」
「ゆりがいてくれるからがんばれるんやで」
「ありがとう……」
3人でゆっくりと夜空の下、露天風呂に入った。
「うおー気持ちい!」
露天風呂から湯が流れ出す。颯太はきゃっきゃ言ってとても嬉しそうにしている。
「星、きれい!」
「ほんまや〜曲かけそう」
「かいてかいて!」
「ほちー」
蒼くんの手がわたしの頭の後ろに伸びて、ぐいって優しく押されてキスされた。
「ごめん……あまりにも可愛いから」
ちょっと恥ずかしそうにする蒼くん。愛おしい存在すぎる。
それなのに……わたしの胸も頭も、類斗でいっぱいだ。
類斗……いまどこでなにしてるん? 妊娠したって伝えてから、連絡がない。そんな些細なことだけで焦る。
まあ逆の立場だったら、わたしは傷つきまくるか……。
先に蒼くんが風呂からあがって、それから颯太も上がって体を拭いてくれた。
「ゆっくりしてていいからな」
わたしはひとり残った風呂の中で、類斗を想う。星が輝く夜に。お腹を撫でる。まだぺっちゃんこなお腹を。
ずるいけど、類斗を繋ぎ止めておくにはどうしたらいいんだろうって思う。秘密の関係のまま、繋ぎ止めておくにはどうしたら?
わからない。
わたしはお風呂からあがり、シャワーで身体を流したあと脱衣所に出た。蒼くんが颯太の歯を磨いてくれている。
楽曲の制作に蒼くんが入ったら、スタジオに籠ることが多い。だけど、家に帰っては来るはずだ。制作が終わってリリースして、そのプロモーションで他の県に行くことがあるかもしれない。その時に、また地元に戻ろうか。結構先になりそう。
でもつわりもあるだろうし、安静にしておくのが無難かもしれない。
わたしはパジャマに袖を通す。シルクの肌触りがいいこれがお気に入りで、どこに行く時でも持って行く。
類斗の肌を思い出す。事故の痛々しい傷の跡もあるけれど、それ以上に綺麗な肌で羨ましくなる。いい匂いも思い出す。笑顔も。
とにかく、大好きだ。




