第11話 参拝
小さな水族館にはそこそこひとがいた。だけど、いない場所でキスしたりいちゃいちゃを楽しんだ。
イルカショーが始まる時間になったので、移動する。海が見える場所だった。大きなヴォリュームで音楽が流れる。拍手をしてイルカを迎える。調教師のひとの合図で、潜ったり出てきたりを繰り返すイルカたち。
「すごいなー」
「すごーい!」
ふたりで関心しながら見る。類斗との普通のデートが嬉しすぎる。もちろん類斗とのえっちもいいけど、こんな風に楽しむこともしたかった。やっぱりなんでも類斗にはお見通しだ。
それから、水族館の近所の蕎麦屋さんでご飯を食べる。
「隣がいい」
って類斗が言うから、並んで座る。
「美味しい!」
「まじやばい!」
大盛りをすぐに平らげてしまう類斗。また身長伸びてない? って思うぐらいに大きくなっている気もする。もちろんわたしには「あーん」って食べさせて世話してくれる……。
嬉しいのに、なんかひとりじゃなんにもできないみたいだ。大学生で留学したときは、なんでもひとりでがんばらないといけなかった。英語もままならないのに、ホームステイ先の家族とも上手くやっていかないといけない。
だから、このままでいいのかなって思う時も多い。
店を出たら、すでに2時を回っていた。今日は弟や従兄弟も揃って夕ごはんを家で食べることになっている。もう少ししたら帰らないといけない。
財布をかばんにしまい、わたしを抱きしめる類斗。
「よっしゃー戻るか」
助手席のドアを開けてくれる。だけど、わたしは乗り込まずに類斗に抱きつく。
「まだ……離れたくない……」
類斗の顔を見上げる。
「そんなん俺もに決まってるやん」
類斗もわたしを抱きしめてくれる。
「えっちしたい……」
わたしは類斗の胸に顔を埋めながら言う。
「もちろんええよ。ただその前にちょっと俺も行きたい場所あって」
車に乗ってシートベルトを締める。静かに車が進んで行く。行きたい場所ってどこやろうって思いながら、わたしは流れていく景色を眺める。
そこは小さな山の上にある、神社だった。
「母さんと来たことあるんやけど……」
わたしたちは階段をのぼって、境内に入る。ここだけ空気が透き通っている気がする。
参拝の列に並びながら、類斗が言う。
「ゆり以外いらんから」
「類斗……」
「まあさ、俺はやけどな。ゆりにそれは強制しないし、このままの関係続けていってくれてもいい」
類斗、でも子供はどうするん? あまりにも自分たち本位すぎひん?
「ここさ、母さんが離婚する前にきた場所で」
「そうなんや」
自分たちの番がきて、わたしたちは参拝した。お賽銭が音を立てて箱の底に流れていく。
「類斗」
「どうした?」
「わたしは正直わからへん」
類斗が微笑む。そんなに優しく微笑まんといてよ。わからへんようなるやん、自分の気持ちが。




