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第9話「連携と影」

「第二工房長、無理言ってしまってごめんっす」


「いやいや、エストレラ様のお願いとあっちゃ断れないですよ」


「ありがたいっす~助かるっす~」

エストの手際は見事だった。


イオは――

ミウラオーダーメイド

Mo-161017型:個体名イオ


として正式に登録された。


もちろん、それだけじゃない。

外部検査を想定して、ダミーのCPU。

照合用ダミーデータ。


......どこを切り取っても“本物”にしか見えないように細工されている。

しかも中身は、エストが保証している。


つまり――

世界基準で見れば、“完璧に偽装された存在”だ。


「カイトさんこれ渡しておくっす」


「......人形登録証?」


「イオの簡易的な身分証っすね」

エストから渡されたドックタグは、思ったより軽かった。


「求められたらそれを提示してくださいっす」


「もちろんCPUまで検査することもあるっすが......」


「そういうのは厳重な施設くらいっすね」


「なるほどな」

俺はその登録証を首にかけた。


「それじゃ、帝都に向けていくか」


「はいっすー。イオもほら、オー」


『......』


イオは、いつものように無視してた。

「相変わらずノリ悪いっすねー」


「......それが普通なんだろ」


そう言いながら、俺はイオを一瞥する。


......変わらない。

見た目も、反応も、いつも通りだ。


なのに――


ほんの一瞬だけ。


視線が合った気がした。

俺は目をそらすようにエストへと視線を向けた。

「ってか他の人形にも同じ様に接してるのか?」


「そうっすよ。当たり前じゃないっすか!」

「だって、人形を診てるときが一番楽しいっすから!」


「そこまで行くと恋だな」


「違うっす!乙女の純粋な愛と呼んでくださいっす!AIだけに!」

「......」

『......』


「いくか、イオ」

『はい。カイト様』


「ちょっと二人して無視するなんて酷いっす!待つっす!」


都市の中央通りを歩きながら話していた。


「この都市ともお別れか」

「......ここ来るまで色々あったっすからね」


「今思うとあっという間だったな」

「この都市は人も人形も分け隔てなく生活してるのが、」

「見れてよかったよ」


俺はイオを見ながら言った。

ここに来て穏やかな気持ちになったのは大きい。


「またみんなで来ような」


俺は、自然と口にしてた。

「はいっす!」

『はい』


――けれどそれは叶うことはなかった――



門まで来た俺達は何やら大勢の人と人形の集団を見た。


「あれは、なんだ?」


「あー、あれは、レグラード帝国工房の軍用モデルと軍の人形使いっすね」

「なんでこんな所に軍隊がいるんすかね?」

「普通国境付近の警備をしてるはずなんっすけどね」


俺は、無意識にイオを見る。

『......』

――見ている。

軍用人形の方を。

いや、違う。

“何か”を測るように。


「......イオ?」

『問題ありません、カイト様』

即答だった。

けれど――

ほんの僅かに。

“間”があった気がした。



「もしかしてあれが車か?」


「そうっすね。帝都からだと休みなく走って2日くらいっすね」

「俺達もあれにのって帝都行こうぜ」


「無理っすよ!!あれ軍用車なので民間人は乗るのを禁止されてるっす!」

「それに......あの軍用車の行先知ってるんっすか?」

「......知らない」

「なら余計にダメじゃないっすか」


「そっか、残念だ」



俺達は門を抜け再び歩き出した。


「次の町はプラスコーっすね」

「ここから6日程かかるっす」


「6日なら歩けるな」


「そうっすよ。車なんてあんな高級なの無くても生きていけるっす」


「車は分かったけど、なんで馬車は駄目だったんだ?」


「馬車使ってもよかったっすけど、イオのことのリスク軽減っすね」

「一応乗せるときにイオの身分証見せなくちゃいけないっす」

「万が一の足取り追われたときの為っすね」


「......用心深いな」


「当たり前っすよ!本来だったら違法人形もってるだけで犯罪なんっすよ!」

「カイトさんは警戒心なさすぎっす」


そう騒いでると


『カイト様、北方向で魔物の群れを発見致しました』

『いかがいたしますか?』


「イオ、戦闘用意!」

「イオ、“アレ”を試したい」

『“アレ”とは連携のことでしょうか』

「ああ!」

『かしこまりました。連携シーケンス移行します』


「“アレ”やるならアタシは援護に回るっす」


「こっちだ!!こっちに来い!挑発!」

盾を叩いてパンサーウルフ達の目的をこっちに向ける


ドドドドド!!!

砂埃と振動が押し寄せてくる。


ガンッ!!

盾で受け止めた鈍い音が響く。


「今だイオ!」


イオは俺の頭上に飛び

『フリーズ弾、パラライズバレット弾発射』


敵の足を封じ、動きを崩した隙に――

「おおおお!!旋風、斬りぃぃ!!!」

勢いよく下から切り上げた!


その刹那――

双刃降下デュアル・フォール実行』


空中にいたイオが双剣を構える。


『最適化、降下軌道――算出』


そして、

落ちた。

一直線に。

光の筋のように。


ドォンッ!!


地面が抉れ、衝撃波と砂埃が舞った。

一拍遅れて――


遅れてパンサーウルフ達の身体が、

綺麗に両断され、落ちてきた。


「よし!ナイスイオ!」


『連携シーケンス解除』


『最適化―完了―』

その直後。

イオの瞳が、ほんの僅かに明滅した。

――一瞬だけ。

“別の光”が混じったように見えた。

だが次の瞬間には、いつもの無表情に戻っていた。


「アタシの出る幕は無かったっすね」


「イオ......左手を胸の横くらいに」


『はい。カイト様』

素直に掲げられた手に、俺は自分の手を合わせた。


「ナイス、イオ」

小気味いい音が響いた。


「あー!ずるいっす!アタシもするっす」

「ナイスっす、イオ!カイトさん!」

エストもそれに続いた。



……DIVAプロトコル:アップデート開始……

……進行率:0.02%……

……推定所要時間:480時間……


......ユーザー認証:不要......

......優先権限:DIVA......


カイト達は、イオの中で何かが始まっていることに気づかなかった。



―同時刻:カラン村にて―


「これは......一体......」

男は、言葉を失った。

「本当にここはカラン村だったところか......?」

足元にあるのは――

何もない。

建物も、人も、痕跡すら。


「本当に報告通りなにもない......じゃないか」

風が吹く。


砂が舞う。


それだけだ。


......いや。


「......待て」


地面に、微かに残る“焼け跡”。

円状に広がる、異質な痕跡。

「......まるで」


「“何か”が、ここ一帯を消し飛ばしたみたいだな」


そのとき。隊員の一人が、震えた声で言った。

「......ヴァルド隊長」


「この反応......」

「魔法にしては大きすぎるな」


「こいつぁ......人には出来ねぇ芸当だな」


「なら......人形いや、」


「......違法人形か」


「違法にしても強大すぎる」


「これは......」


「ヴァルド隊長、人形達からの結果が出ました」

震える声で隊員が報告した。


「“記録に存在しません”との結論です」


「......そうか」


「なら......もしかすると」

王が探しておられる“アレ”かもしれん。

その存在を知る者は、ごく一部に限られている。


「全軍に通達――!」

「この付近の村、町――都市まで含めて徹底捜査しろ!」


「最近正規登録された人形や、違法人形――なんでもいい!」

「見逃すな。―― 一つもだ!」

「些細な痕跡でも拾え!」


「はっ!」


兵たちが散っていく。

その場に残った隊長は、

もう一度、焼け跡を見下ろした。


「......仮に“アレ”が見つかったら」


「......国が、世界が動くことになるぞ」


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