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第8話「エストの選択」

「イオ、終わりっす......ありがとうっす......」

指先に残る感触が、わずかに震えていた。

......気になるっすけど、カイトを待たせるわけにもいかないっすね。



「“カイトさん、最後の指示よかったっすね”」

俺は手をギュッと握って、今はこの違和感を押し込めた。

……押し込めた、はずだった。


―この違和感が後に降りかかることになろうとはこの時の俺は知らなかった―



「いらっしゃいませー!ミウラ人形工房へようこそー!」


店に入ると明るい店内と活気がありたくさんの人形とパーツがある。

人も人形も数人いる。

さすが有名工房ではあるか。


まだイオの整備終わらないみたいだから折角だし俺も店を見るか。


色んなパーツがあるんだな。

このオススメ商品のガトリングハンドは右手専用なのか。

イオにこのガトリング装備してることは想像出来ないな。


人形本体のコーナーで足が止まる。


そういえばイオってDIVA型なんだよな。

どこで製造されたんだろうか。


「お、お客様お目が高いっすね。」

そう言って、整備を終えた二人が駆け寄ってきた。


「こちらはミウラオーダーメイドMo-1型です......っす」


店員口調だけど最後に素が出てるぞエスト。


「......オーダーメイド」


「そうっす。」

「ミウラ人形工房のオーダーメイドは設定も幅が広いから人気が高いっす。」


「そうなのか。イオもオーダーメイドなのか?」

エストは一瞬止まり俺の目を見ながら言った。


「それについて......ここじゃ話せないっす」



「......結論から言うとイオに関することは“分からなかった”っす」


「分からなかったってどういうことだ?」


「情報がかなり厳重にプロテクトされていて、」

「やっぱレグラード帝国中央工房に行くしかないみたいっすね」


「分かったこともあるっす」


「なんだ?」


「イオは正規工房の“どこにも存在してない”っす」

「つまり“違法人形”の可能性がかなり高いっす」


「......違法人形」


「違法人形ってのは、まぁ簡単に言うと――」

「正規ルートじゃない人形っす」


「一から造るワンオフと、」

「パーツを継ぎはぎするジャンク……」

「大きく分けてその二つっすね」


「帝国とくに帝都付近では近年この違法人形での犯罪が横行してるっす」

「一部で人形を非難する人も出てきてるくらい問題になってるっす」

「......さらにヤバいのが、三原則が“外されてる個体”が増えてることっす」


「三原則ってなんだ?」


「簡単に言うと、」


「人形及びAIは――」

「人を傷つけない、命令に従う、自分を守る」

「この三つが三原則っす」

指を一本ずつ立てながら、エストは静かに答えた。


「正規工房の人形なら、これが民間用なら必ず入ってるっす」

「軍用だと抜いてあるほうが多いっすね」


「……でも違法人形は、軍用でも無いのに“意図的に外されてる”っす」


「外されてるって……」


「......つまり」

「人を殺せる人形が出回ってるってことっす」


――カラン村

......鼓動が、跳ねた。


「アタシの見解だと――ワンオフタイプっす」


一拍置いて、エストは続けた。


「……でも、それにしては“おかしい”っす」


「なにがおかしいんだ?」


「仕事柄違法人形も診たことあったっすけど、」

「普通の人形と内部構造は大きく外れることがなかったっす」

「変な構造してたら、それこそまともに稼働してないほうが多かったっす」


「でもイオは、」


「そもそも内部構造が診れない、プログラムも書き換えられない、」

「......なのに、一切のズレもなく動作する」


「かなりやばい人形なのはまず間違いないっすね」


「正直、アタシも技師としてお手上げっす」


エストは手をヒラヒラさせながら笑った。


――けど、その琥珀色の目は笑っていなかった。


「そこでカイトさん、提案があるっす」


「なんだ」


「イオをミウラ人形工房の製品として登録しないっすか?」


「現状このままで行くとカイトさんとイオは国に捕まるっす」

「だったらミウラ人形工房の人形として登録しておけば、」

「捕まるリスクは多少は減る算段っす」


「いいのか?見ず知らずの俺達を匿うようなことをして......」


「正直に言うと怖くないと言ったら嘘っす」

「でも......お二人に会って悪事に染まるようにはどうしても見えないっす」

「それにアタシにもまだ知らないことあったと力不足を痛感したっす」


「お二人を守る為、」

「いや、アタシの未来の為にこの提案どうっすか?」


「俺は問題ないけど、本当にいいのか?」


「はい。それが私自身“選んだこと”なので、」


「......後悔は、しないっす」


――胸に手を当てそう言い切った。


けど、その声はほんのわずかに震えていた。




―同時刻レグラード帝国首都レグラード王城にて―


「カラン村が消失した......だと!?」

謁見の間に響く声。


「はい。定期納品が途絶えたことで商人から報告が入り、」

「兵士に確認させたところ、」


「―カラン村には人はおろか家屋も“何もかも消失”していたとの報告です―」


「一体、あの地で“何が起きた”……?」


「今すぐ兵士と人形兵を派遣する、原因を突き止めるのだ!」


「かしこまりました。陛下」


ヒュマリア王国の手か――


いや、人や魔物の仕業ではない。


人形......あり得る。

違法か。それが一番濃い線だろうな。

だが、機械文明を忌み嫌ってる国が、

違法人形を使うか?


......使うか?


......それとも。


そのどれでもない、

得体のしれない“何か”か。


「“何もかも消失”か......」


その言葉だけが――妙に、引っかかった。


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