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第7話「人形使い」

「イオ! 左、ゴブリン3体――パターンF!」


『かしこまりました。カイト様』

乾いた発砲音。

次の瞬間――

ゴブリンの足元が凍り付き、動きが止まる。


「今だ――右のウルフ、パターンPからA!」


『はい。』


ウルフが跳びかかる直前、麻痺弾が命中する。

体が硬直したところに、イオの動きが変わった。


――オートモード。


無駄のない軌道で、急所だけを正確に撃ち抜く。


「やあああ!!」

残った一体を盾で受け止める。

衝撃が腕に響く。


重い。けど――


「――いける!」


剣を叩き込み、体勢を崩したところへ――

バンッ。

ウルフはその場で崩れ落ちた。


「サンキューイオ!」


「エスト、こっちは終わった!そっちは?」

「こっちも――!」

グシャアァ

「これで!終わりっす!!」

大槌が振り抜かれ、鈍い音が遅れて響く。

その下には、ゴブリンだったものが押しつぶされていた。


「練習の成果が出たんじゃないっすか」

エストが大槌を担ぎながら軽く笑う。


......三日前。


「最初は混乱するっす。だから“狙い”と“パターン”だけ決める」


「......あとはイオがやる、ってことか」


「そうっす。人形が“最適化”する」

一拍おいて、エストは少しだけ目を細めた。


「――それが、人形との対話の第一歩っす」



「カイトさん、最後の指示よかったっすね」

「イオに右を終わらせた後、」

「回り込ませてカイトさんと中央で挟むの、あの指示具体的でよかったっすね!」


「ぅんああ。まぁな。」


......いや、待て。


俺、そんな指示してないぞ?


――なのに。

イオは、俺の“考えていた通り”に動いた。


オートモードだからか?

背中から貫かれたウルフの死体を見下ろしながら、考える。


「カイトさんはリースペリアに戻ったら討伐達成をギルドに報告っすね」

「アタシ達二人はお楽しみの――」

イオを見て、エストは意味ありげに笑った。


「整備タイムっす......はぁはぁ」


人形絡みになると、こいつはこうなる。

......一歩間違えれば、ヤバいやつだ。



「こっちがウルフの毛皮と牙で、こっちがゴブリンの耳だ」


「......確かに受け取ったぜ」

「それにしても長年ギルドに身を置いてるけど、」

「魔法適正0っていうのは、初めてみたぜ」


納品しに来た俺達に素材受け取り担当のドミニクが言った。


「まぁ、俺もよく分かってないですし」

......心当たりがある。あいつ(神)がやったと確信してる。

魔法いらないって言ったからこうなったのか。たぶん調整ってこれのことだろうな。


「確かに魔法はダメかもしんねぇけど、兄ちゃん若いから大丈夫だろ」

そう背中をバシバシ叩かれた。

「それに人形持ってるから心配してないぜ」

「人形ってやつぁ、結構頼りになるが如何せんマスターによって差が出ちまうからな」

「ただ、その点“ミウラ人形工房の星”が付いていれば大丈夫だろう」


“ミウラ人形工房の星”

さっき門でも聞いた言葉だ。

そういえば、エストに初めて会った時も自分で言ってたな。


「なぁ、その“ミウラ人形工房の星”ってなんだ?」


「なぁんだ?人形使いで“ミウラ人形工房の星”を知らねぇやついるんか」


「そもそもミウラ人形工房が知らない」


「おいおい、しっかりしてくれよ。」

「兄ちゃん...モグリか?人形使いでミウラ人形工房を知らないやついるんかよ。」


「......すまない、俺は田舎住まいで人形は訳あって譲ってもらったんだ。」


それを聞きふーんと言い、ヒゲをじょりじょり手で弄りながら話す。


「ミウラ工房は帝国で人形を製造している工房だ」

「首都と各都市に工房を構えていてな、」

「レグラード帝国人形工房の次に大きい大手人形工房だぞ」

「エストレラはそのミウラ工房創始者の家系で、」

「次の総工房長候補って言われるくらい、人形に対する情熱がすげえ」


......たしかに。イオのこととなると目の色が変わる変態にしか見えない。

あれも情熱と言えば情熱か。


「なるほど、教えてくれてありがとう」


「いいってことよ」


イオ大丈夫かな......


今二人はイオの整備に行ってる。

話聞いて気になったし俺も工房観に行くか。



電子音が響く部屋で、エストは一人。

画面を睨みながら、低く唸っていた。


「......やっぱおかしいっす」


イオの工房と製造番号が書いてない。


ハッキリ表記されているのは“DIVA”の四文字。

正規人形コードで検索しても、この文字はどこにも無かった。


......この厳重なシステム、何なんすか。


普通の人形なら、内部構造やコードはある程度見えるはずだ。

......なのに、これは違う。


完全にプロテクトされている。


そして当然未登録。遺跡から掘り出したヴィンテージものをいくつも診てきたけど、

ヴィンテージものでも修復や調整履歴のログが残ってる。


それが全く無い。

登録されていない。

ログもない。

システムも異様に厳重。


......ありえないっす。


誰かが意図的に、これを“外に出した”としか思えない。


これは――

明らかに“違法人形”っす。


「......一体“キミ達”は何者っす?」


電子音だけが響く部屋で、エストは一人、画面を睨んでいた。

その隣、整備台にはイオが横たわっている。


エストの視線は、画面と――イオの両方に向けられていた。


その視線の先にあるのは、“DIVA”が刻印された身体。


......のはずだった。

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