第4話「0と1」
「母ちゃんと村人助けられなくて......ごめんな」
俺は小さな命だったものを埋め、
手を合わせた。
土に残る熱が、
まだ消えていない気がした。
――俺が、消したのに。
なのに、俺だけが生きている。
イオには森に食料を取りに行かせてる。
今は、一人で居たかった。
......一人で。
ザッ
静寂を裂く音。
―近い。
「あの、ちょっといいっすか?」
振り返る。
そこにいたのは―
大槌を担いだ女だった。
「......なんだ。今は一人で居たいんだ。放っておいてくれ」
だが、女は引かなかった。
一歩、踏み込んでくる。
「......さっきの、見てたっすよ」
――止まった。
呼吸が。
背中を、冷たいものが伝う。
(見てた......?)
責めに来たのか。
敵討ちに来たのか。
それとも――
「さっきのあれなんすか!!」
「......は?」
「凄すぎでしょ!!あんな動きする人形みたことないっすよ!!」
「いや待て」
「あれは軍用人形っすか!?新型っすか!?あの速度どうなってるんすか!?てかあの爆発やばすぎでしょ!!」
――なんだこいつ。
「......ドール?」
「え、違うんすか?」
「いや......アンドロイドじゃないのか?」
「アンドロイド!?聞いたことない!!やっぱ未発表の新型じゃないっすか!?」
―駄目だ。
全然、話が通じてない。
「とにかく!今は一人で居たいんだよ!......ってか誰だよさっきから」
「アタシっすか?よくぞ聞いてくれました!」
胸を張る。
「アタシはミウラ人形工房の一人娘の星!エストレラはアタシってことよ~!」
「...それでエストレラさんよ―」
「エストって呼んでねー!」
「......エスト。人形ってイオみたいな―」
「えー!あの人形イオって言うんだ!!」
「人の話を聞け!!!」
エストは仕事で人形の材料を取りに
近くの鉱山に来ていたらしい。
その帰り――
カラン村から上がる火を見た。
そして、ここに来た。
......間に合わなかった場所に。
(あの時には、もう――)
だが。
「いやーでもマジでヤバかったっすよ!あれ!めっちゃカッコよかったっす!!」
こいつは。
「......お前、怖くないのか」
思わず、聞いていた。
エストは一瞬だけきょとんとして――
「そりゃ怖いっすよ?」
あっさり言った。
「でも、それより気になったんすよ」
目を輝かせていた。
......いや、少しだけ、狂気が混じっていた。
「だって、あんな人形......見たことないっすから」
「一度分解して中見てみたいって思ったっす」
「壊れ方も見てみたいっすね」
――理解出来なかった。
こいつは、
何を見ていたんだ。
「それで麗しのレディの名前を聞いたのにそっちは何もないっすか?」
俺は溜息をついた。
「......俺はカイト。」
「少々事情があって田舎暮らしの引き籠りだったから分からないことがある。」
めんどくさいからぼかした。まぁ田舎なのは、間違ってない。
ふーんとまるで俺には興味ないという素振り。
「カイトさんは、イオってどこで手に入れたんすか?」
話すか悩んだけど話した。
「......なるほど。遺跡から発掘品っすか。」
「過去に製造されたヴィンテージ品ってことっすね。」
ぶつぶつと話す横目に俺の腹は叫んだ。イオ遅いな。
ザッ、ザッ
誰かが歩いてくる音がした。
『カイト様、帰還いたしました』
「おかえりイ―」
「きゃー!アナタがイオっすね!」
「なに!?この材質!今までこんなの見たことないっす!!」
イオがカイトを見る。
『カイト様、こちらの方は―』
「アタシ、エストレラ!エストって呼んでね!」
「アタシもイオって呼ぶね!」
一瞬だけ、間があった。
『カイト様―排除対象ですか?』
―村が消滅した光景が、脳裏に焼き付く。
「いや、たぶん敵じゃないからとりあえず自己紹介してやってくれ」
『かしこまりました、カイト様。』
『製造名DIVA:個体名イオ、よろしくお願いします。エスト様』
一瞬エストの動きが止まった。
「......おかしい。」
「何がおかしいんだ?」
「普通、人形は必ずA~Zが工房コードになっていて、そのあとに型番があるっす。」
「...でもイオにはそれが無い。―どういうことっすか?」
俺を見ても何も分からない。
唸るエストを差し置いて、
「イオ、何か食料になりそうなのあったか?」
『こちらになります』
どこからか猪っぽい生物が出てきた。
「へぇー。収納持ちなんすね」
捌き方知らないと顔してたら、
「アタシ、捌いちゃっていいっすか?」
腰に装備してた小さなナイフで捌きだした。
「イオ......ありがとうな」
『最適化した結果です。カイト様の生存確率を最優先としました』
・
・
・
「......よしっ、捌き終わったからとりあえず焼くっすね。」
火は無いけどどうするんだろう。
「ファイアボール」
すると準備してた木材に火がついた。
「魔法...やっぱあるのか」
「......もしかして、魔法知らないっすか?」
「......ああ。」
「まぁ。何も知らないって言ってたから仕方ないっすね。アタシが教えてあげるっす。」
自分の胸にポンと手を当て話始めた。
「魔法は火・水・風・土・雷・氷・光・闇の8つ」
「属性持ちは1属性は必ず持ってるっす、多くて3つとかっす」
「ちなみにアタシは火だけっすね」
「人や魔物しか使えないんで、人形は無理っす」
「ステータスで確認できるっすよ」
「ステータスオープン」
「アタシのステータスはこんな感じになってるっす。」
「カイトさんのステータスはどんな感じっすか?」
「ステータスオープン」
「...え」
「え......」
二人して声が出た
適正魔法の欄。
“0属性”
―ありえない。
この世界には存在するはずのない値だった。
―その瞬間。
世界から弾かれた気がした。
―“存在してはいけないもの”を見る目で、
俺を見ている気がした。




