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第26話「星々のセレナーデ編 最終話:空は星と共に」

―ラフェリウスが居なくなって数日後―


カンッカンッ

金属を叩く音が響く工房内。


「......ラフェリウス皇子居なくなってからこの工房も広く感じるわね」


「......そうだな」

「あいつは将来この国の王になる者だ。なにか理由があって学園も去ったんだろう」


「......そうね、卒業したら各々離れ離れになるのね」


「お前はどうするんだ?」


「......一度帝国工房に入ろうか考えてる」

「カエルムは?」


「俺は、工房を立ち上げる」

「小さい工房だけどそこから始めてみようかと思ってる」


「あなたは夢に向かって歩くのね」

「私は......」


「――怖い」


「自分の手で工房をやりたいと思ってたけど、いざ1人でやろうと思ったら、」

「足が中々竦んでしまって」


「......みんなと同じ道に行こうかなと」


「お前がその道を選んだならいい」

「だが、後悔しないほうを選んだほうがいい」


リラは何を迷ってるんだ?

夢って言ってた工房を叶えられるかもしれないのに


カンッカンッ

金属を叩く音は規則正しく奏でている。


「ねぇ......それなら夢を叶えてくれないかしら?」


カンッカンッ


「俺がお前の為に場所も資金も出せって言うのか?」


カンッカンッ


「ち、違う......」


カンッカンッ


「その......一緒に......」


カンッカンッ


「......聞こえねぇ、もう一回言ってくれ」


カンッカンッ


「だから......一緒に二人で工房立ち上げたいって!」


ピタッ

(無音)


「え......リラそれってどういう意味で言ってるのか分かってるのか?」


金属を打つ手が止まった。


「分かってるわよ......その......」

「カエルムってきちんと原価計算も店の維持とか出来なさそうだし......」

「私、一応商家の出だから計算とかその辺は得意って......その......」


「一緒に......居たいから......」


「私じゃ――」


「ダメかしら?」


(無音)


「......俺も――」


「リラが居るのが当たり前になっちまった」


「これからもずっと一緒にそばに居てくれないか?」


急に背中に暖かさが加わる。


「これからも......よろしくねカエルム」



あの時と同じ宵の時間、俺達は誓った。



無事に卒業し、二人で立ち上げたミウラ工房。


始まりは小さい工房だったが、リラと一緒なら何も怖くなかった。


店舗も増え、市場も大きくなり、


――子供も授かった。

壊れそうな手でまるで星みたいな手のひらだった。


エストレア。


二人で決めたその名前は元気に成長していき、


人形に対する想いも溢れていた。


順風満帆な人生を歩いてた。


ある日、エストが珍しい人形を持ってきた。


――イオ


あまりにも綺麗で洗練されてて、俺が目指してる人形像そのものが目の前にあった。


瞬きも、視線移動もしてる。


それだけじゃない、人らしい動き方、肌の感触、髪の自然さ。


それくらい精巧な造りをしていた。



王は――ラフェリウスは認めなかった。


なぜ、死刑を下した?

俺は納得出来なかった。



雨が強く降っていた日だった。


俺は王に直談判を言いに行こうと玄関のドアを開ける瞬間――


エストが家に戻ってきた。

その顔は雨具でよく見えなかった。


「お父さん、お母さん」

「これから――帝国を離れるっす」

「だから今日付けでミウラ工房を辞めます」


雷と雨が響く。


決意した目が見えた。


「そっか......気をつけてな」

「ここはエストの家だ、いつでも帰ってこい」

「俺達、みんな待ってるからな」


「いってきますっす!」


バシャバシャ。

エストはそのまま店に入らず立ち去った。


「俺も行ってくる」


「カエルム......」


「リラ、行ってくる」

「好物の母ちゃん特製のハンバーグ用意しておいてくれ」


「それじゃ行ってくる!」



帝国を離れるって言ってたな。

せめてこれだけは伝えないといけねぇ。


「黒髪は東方面に逃亡中!」

「見つけ次第、殺害しろ!」


「カイト......無事でいろよ」


俺は雨の中、愛馬を走らせた。

痕跡は残っていた。


いた......


――なんだあれは?


光の玉?その先にはイオがいるじゃねぇか......

あんなのが地上に落ちたら


――全員死ぬ――


させねぇ!

カイトをイオを、


人殺しにさせてたまるかぁあああああ!!


「うぉおおおおおおお!!」


「それを、使うんじゃねぇ!!!」


ガンッ!!!


光は宙に舞い、爆ぜた。


「あぶねぇ......間に合ったか......」


......助かった――


「ヴッ」


俺の腹から剣が突き抜けてやがる。


......なるほどな

最適化をするには俺が邪魔って認識したか。

間違ってねぇな。


「......やっぱ、システムが許さなかったか......」

「いい判断だ......」


俺は振り返りながらイオを見た。


イオは一瞬だけ顔を歪めたように俺の目には見えた。


「なんだよ......お前......泣いてるじゃねぇか」

この声はイオにしか届かなかった。



俺はカイトに伝えた。

お前なら大事にしてくれると信じてるから。


エスト、人形を嫌いになるなよ。

人形に携わった以上いつかこうなる時もあるからな。


リラには一度も言ってなかったっけ?



「リラ......世界で1番愛してる――」



その言葉を聞く者は、誰一人いなかった。


――リラの顔が、浮かんだ。


空には虹がかかっていた。



「私はこれからどう......生きていけばいいの?」


雨音が打ち付ける夜中に


その問いに答えてくれない人と、二人で居た。


「......」


「ただいまの声すらもないの?」

「なにか言ってよ......」


「......」


冷めたハンバーグがテーブルの上にあった。


【俺、母ちゃんが作るハンバーグが好み】


【ここ詰めれば、ほんのわずかだが出力あげられる】


【......いつもありがとな】


ポタッポタッ......


「幸せそうな顔で逝ったんだね......」



「カエルム......」


「――心から愛しています」



「だから......お願いだからぁ」


「いつものようにずっとそばにいてぇ!!」


「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



雨はいつの間にか嵐に変わっていた。


その声は――届かなかった。



「......そうか、回収出来たか」


「我は唯一の友を失ったか......」


「......友に免じて、カイトはそのままにしておいてやる」

どのみち、ヒュマリア王国に逃げたらこちらから手出し出来ないからな。


「あのお方にも......知らせておかないと」


「......今日のワインは渋いな」



〔ヘーラー様、データを送るのでご確認ください〕


「ラフェリウス国王からのデータを確認......」

「ミウラ工房のカエルム・ミウラの死亡を確認」


「次のシーケンスに移行する」


―帝国工房にて―


――SYSTEM LOG――


DIVA Protocol:進行中

進行率:6.29%


対象:マスター(カイト)

精神状態:不明


感情解析:不明

怒り:不明

判断精度:不明


――最適化演算中――


推奨行動:不明

排除:不明


……


承認待機中......



『私が、カエルムを殺した』



星々のセレナーデ編 ―最適解、未完了―

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