第25話「星々のセレナーデ編 第4話:宵空のセレナーデ」
奥から出て俺とヴェスパー・デュアリスに光が当たる。
「チーム双星のカエルム・ミウラです」
「自分たちは今回このヴェスパー・デュアリスを製造致しました」
「コンセプトは合理的な非合理」
「ご覧ください。これがチーム双星のヴェスパー・デュアリスでございます」
機敏な動きをする。
バンバンッ!
的に射撃し全弾命中。
リラが組んだ基礎骨格は無駄がない。
動きが止まった。
ヴェスパー・デュアリスは、的を撃ち抜いた姿勢のまま、ゆっくりと首を動かした。
客席を、見る。
ただの索敵動作じゃない。
ただの照準補正でもない。
まるで、自分を見ている人間たちを、こちらから見返しているようだった。
ざわざわ……。
さっきまでの歓声が、別の音に変わる。
称賛でも、驚きでもない。
――戸惑いだ。
その瞬間、ヴェスパーが瞬きをした。
一度。
そして、もう一度。
その二度目で講堂の空気が変わった。
「今の......なんだ?」
「瞬きと眼球が動いたぞ」
「一瞬、人に見えたぞ......」
「兵器じゃない......?」
その声は届いていた。
ふぅ......
胸の奥に溜まっていたものが、ようやく抜けた。
“瞬き”は――動いた。
あいつの思想は――
ちゃんと、形になっている。
最後に瞬きをしながら剣舞をし発表会は終わった。
「お疲れ様カエルム、ラフェリウス」
「お疲れカエルム、リラ嬢」
「お疲れリラ、ラフェリウス」
三人でハイタッチをし発表会を終わった喜びを分かち合った。
「ところでリーダーのお前じゃなくてなんで俺が発表者になったんだ」
「ああ、それは皇子だから色眼鏡で正当評価されないから」
「だからこそ、今回の発表は僕は何も関わってないことになってる」
「いいのか?」
「いいさ、それに言っただろ?」
「面白そうだったから」
「僕は満足を通り越してお腹いっぱいだよ」
「――ああ、ちゃんと“変わった”」
「世界の見え方がね」
......どういう意味だよ。
リラに視線を配ると顔を背けられた。
......調子狂うな。
『ただいまを持ちまして発表を終了します。審査に入りますのでお待ちください。』
性能は他の人形と比べて性能はかなり上だった。
問題は瞬きと思想か。
「大丈夫、私たちは全力を尽くした」
「自分を――仲間を信じて」
『審査が終わりましたので全生徒は講堂へのご移動お願いします』
「いくか!」
「ええ!」
「......はい」
呼ばれない。
まだ、呼ばれない。
性能では負けていない。
それは分かっている。
――リラの設計だ。間違うはずがない。
けれど、あの瞬きがどう評価されるかだけは分からなかった。
『審査委員特別賞......チーム:リリユリー』
『優秀賞......チーム:セイジィハルー』
『そして、最優秀賞は......』
一瞬、呼吸が止まる。
――静寂。
『チーム双星』
パンッパン!
クラッカーの音と拍手の音が鳴りやまない。
『最優秀賞のチーム双星は壇上へ』
俺はリラに手を差し出した。
「行こう!」
「はい!」
ラフェリウスは二人を止めた。
「カエルム、リラ嬢本当にありがとう。」
「二人は僕が見てきた人の中で1番気高く、」
「誰よりも――美しかった」
「これからも友として誇りに思う」
「――さぁ、かましてこい!カエルム」
俺達はラフェリウスに見送られて、壇上に上がった。
『代表者カエルム・ミウラさんからのメッセージお願いします』
マイクを手渡れた俺は講堂を見渡す。
「この度は最優秀しょ......」
俺が舌を噛んでリラが笑ってる。
「あーあー。やっぱこういうのは向いてないから普通に話させてもらう」
「評価していただきありがとうございます」
「皆さんが驚いた瞬きと眼球の細かい動きは戦闘に置いて、」
「何の意味もありません」
「分かった上で、入れました」
「――これが、俺の想いです」
「人形は兵器だけじゃない」
――そうしたかった。
「隣に置けるものにしたかった」
「家族でもいい」
「友達でもいい」
「相棒でもいい」
「どんな関係でもいい」
「人形を身近に感じてほしい」
「そのために瞬きと視線を入れました」
「“人”に――近づけるために」
「チーム双星のメンバーはそんな俺のわがままに付き合ってくれて」
「本当に二人にはとても感謝してます」
「とくに基礎骨格や配線周りはリラが効率よく合理的にしてくれたおかげです」
「彼女なしではこのヴェスパー・デュアリスは完成しなかった」
――絶対に。
「もう一人はうまくスケジュール調整やタスク管理等の管理、細かい作業を」
「嫌な顔ひとつせずしてくれたこと」
あいつがいなきゃ、たぶんここまで来れてない。
「この場を借りて心から感謝を述べたいです」
「本当にありがとう」
「――これが俺達のセレナーデです」
「......最後にお願いがあります」
「みんな、もっと自由でいい」
「自分が信じたものを――信じてほしい」
「例え人に笑われようとも、無駄と言われようとも」
「自分を、他人を信じる人は最高にカッコよくて......」
「――1番好きだ」
リラの手を――包み込んだ。
「本日はありがとうございました!」
パチパチパチッ
拍手と歓声がしばらく続いた。
「見せつけてくれるね」
「もう聞いてるこっちが恥ずかしいくらい顔が熱い」
「僕も君みたいにこの先“愛”を見つけることが出来るのかな......」
客席から離れ、僕は羨望のまなざしと同時に不安がよぎった。
僕はきっと――
手に入れるために、代償を払う。
地位も名誉も金も、友も、愛すらも――
そんな未来を、描きたくない自分が居た。
「さよなら――」
「僕の......1番」
この日を最後に――
学園でラフェリウスを見ることは、二度と無かった。
“ラフェリウスは婚約を発表した”
それが、彼の答えだった。




