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第23話「星々のセレナーデ編 第2話:双星」

「君は面白いね」


俺に話しかけて来たヤツがいた。


「......ラフェリウスか」


こいつは入学したときからの付き合いのラフェリウス。

この国、レグラード帝国の第一皇子。


俺には縁が無い話だと思ってたが、なんか知らねぇけどこうやって話す関係性だ。


「今日も派手にやったな」


「リラのことは合理的で理想の人形像だと思うが......つまらねぇ」


「よく言うよ、こんな顔でロマンチストなんだよな」


「うるせぇ、俺は戦闘以外でも人形の可能性を模索してるんだよ」


「......模索ね、あの趣味全開の人形がね」

口に手を当てて笑いながら話すラフェリウス。


「瞬きってなんだよ、絶対要らないだろ」

「......やっぱカエルムと話してるときが一番楽しい」

「“普通じゃないやつ”は飽きない」


「お前......馬鹿にしてないか?」


「いいや、ちゃんと良き友人として敬意を払ってますとも」

そう言って貴族の挨拶をしてきた。


「止めろよ、俺は貴族様でもなんでもないただのどこにでもいる庶民だ」


「真面目な話、ここにいる人形技師を目指す人はみんな本気で真剣なんだよ」

「だから、なんていうか、息が詰まるんだよ」

「人形も遊び心なんて一つもない合理的で」

「......まるで城の中にいるみたいなんだ」

ボソッと言った言葉と伏した目でラフェリウスは言った。


「でも、君は違う」

「基礎もしてるがちゃんと遊びどころを入れて見ていて飽きない」


「だから気に入ってるんだ」

グイっと近寄る。目も輝かせてるように見えた。


「カエルムは発表祭は一人か?」

いつもの表情に戻る。


「......本気で真剣じゃない俺は1人で発表するよ」


「悪い悪いそんな拗ねるなよ」


「よかったら3人で組まないか?」


「3人?」


「僕と、君と......彼女リラ嬢とね」


「はぁーー?」


ガタンッ

椅子から勢いよく立ち上がったせいで椅子が倒れた。


「お前と組むのはいい、だがリラは......」


「大体なんでリラと3人なんだよ」


「面白そうだからに決まってるじゃないか」

「――それに、噛み合えば“とんでもないもの”が出来そう」


「面白そうだからって理由で組ませるのか?この皇子様は」


「見てみたいじゃないか、ロマンチストとリアリストの組み合わせを」

「それで僕も一緒だと一番の特等席で見れるだろ」


「壊れるか、完成するか――どっちでも面白い」

「――ただし、壊れたときは取り返しつかないけどね」



「それに......さっき君も言ってたじゃないか、」

「彼女は合理的で理想の人形像で評価していて、」

「カエルム自身は戦闘以外でも人形の可能性を模索してると......」


「これも可能性のひとつなんじゃないのか?」

「だったら一番大事な基本を彼女に担当してもらって、君は遊び幅を造ればいい」


「......どうだ?」

「逃げる理由は、ないと思うが?」


一瞬、言葉が詰まる。


(確かに――)


頭の中に、あいつの顔が浮かんだ。

基礎は俺よりも丁寧にしっかり造り込んでたしなにより、


人形に対する情熱は本物だ。


――あんなやつに負けたままは、気に入らねぇ。


「どうせ、またぶつかるだけだぞ」

俺は渋々了解した。

俺が人形技師として相応しいってことを証明してやる。


「アハハハ......やっぱり、君たち二人は飽きないよ」

「――だから、こういうのは好きなんだ」


突然笑ったラフェリウス。


「じつはリラ嬢にはもう話はつけてある」

「断る理由がないことも、分かっていたからね」


「......リラはなんて?」


「リラ嬢は“また喧嘩になるだけでしょうがそれでも良ければ”だって」


「君たちは、似てるからな」


顔が熱くなったのが自分でも分かるくらい感じた。

――似てる、だと?

......ふざけるな。


「諸君、この度は我がチーム“双星”の結成を記念して、」

「リーダーラフェリウスの挨拶とする!」


ノリノリのラフェリウス。楽しそうだな。


「......あのいいですか?」

「そのチーム双星ってなんでしょうか?」


「いいところに気が付いたね!リラ嬢!」


「カエルム、君の名前は“空”って意味だったね」


「......ああ。たしかに、前にそう言ったが?」


「それに対しリラ嬢、君の名前は琴座の日に産まれたからその名前と聞いた」


「......一体どこからその由来を聞いたのでしょうか?」


「君のお父上が少し前に城に来た時に聞いたのさ」


「そこで閃いたのさ。空、星座――つまり星空」

「二人の星だから双星ってわけさ」


あいつ琴座に産まれたからそういう名前なのか。

それにバレーニ家は商家だから王宮への出入りもしてた。

なるほど。これはアイツの計画の上で結成したのか。


「お前の名前入ってないじゃないか」


「僕は君たちを観測するって意味だからそこは入ってなくても問題ない」

「――最後までね」

「あくまでも二人で造るのがメインだから」


「指揮は私が取ろう!」


「さっそくだがコンセプトから――」

「ですから、この組み合わせが一番予算も負担も少なく結果が出しやすいと!」


「なんでもかんでも削ればいいってもんじゃねぇ」

「コストかけるとこにはきちんとかけないとダメなんだ」


話が始まった直後なのにすぐに口論が始まった。

先が思いやられるよ。


この何気ない日常がずっと続けば楽しいのにな――


なんて、少しだけ思ってしまった。



俺達は話した。

気づけば夕方から夜に変わりそうな空色だった。

「そういえば......機体名、決めてなかったな」


「どうしたの、急に」


「ヴェスパーなんてどうだ?」


「なるほど、もう宵の時間か」


釣られるように、視線が空へ向く。


「いい名前だな」

ラフェリウスは、満足そうに目を細めた。


「でもそれだけだと共作感がないね」

「ヴェスパー・デュアリスなんてどうだ?」


「......いい名前だと思う」

私は空を見ながらふと口にしてしまった。


俺は風で髪が靡くリラに、

一瞬、言葉が出なかった。


胸が、少しだけ騒いだ。

......なんでだろうな。

その一言が、妙に残った。



こうして――

プロジェクト“ヴェスパー・デュアリス”――宵の双星が、この日、確かに産まれた。


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