第22話「星々のセレナーデ編 第1話:黎明の星」
俺はリースペリアで産まれた。
――そして、人形に人生を捧げた。
家は武器職人一家だ。
親父と母ちゃんの背を見て、俺も武器職人になると思ってた。
ナイフとか簡単な金属を打たせて貰えるようになったその頃。
あれは8歳の時、俺は人生を決定するほどの衝撃を受けた。
リースペリアで軍事演習があった。
そこで見たのは――
「......人?」
それらは、動いていた。
鎧とは違う足音で闊歩してた。
「違うよ、あれは最近帝国に導入された人形さ」
親父が人形を見ながら声だけ伝えてきた。
「......人形ってなに?」
「うーん、俺も知らんな」
「あんなもの世に出たら商売あがったりだよ」
武器は売上をあげるのに“壊れる”設計になってるらしい。
親父と母ちゃんは嫌そうな目で見てたけど、俺は違った。
俺は人形を知りたい!
俺はその日人形に恋をした。
あんな人型が金属になってる。
そんなもん――
理屈なんて要らねぇ。
カッケーに決まってんだろ!
その日から人形に関する知識を貪欲に吸収した。
知れば知るほど、複雑だし、きちんと頭を使わないとまともにも動かせないみたいだ。
俺は帝国で新設された人形や機械を学ぶ学園に入学出来た。
親父達を4年間説得しやっとの想いで入ることが出来た。
入学式当日――
「新入生のみなさん入学おめでとうございます」
「えーこのたびは――」
俺ミウラ・カエルムは13歳になっていた。
周りを見ると同じくらいの年代もいるが年上もいるみたいだ。
「続きまして新入生挨拶代表、リラ・バレーニからの挨拶を――」
......女かよ?
こんなとこに来るタイプか?
壇上に上がった彼女は細身で美しかったが、
女に人形の良さなんて分かるか。
あれはママゴトに使うような飾り人形じゃねぇ。
人らしく戦って、金属同士がぶつかって、それでも戦うってもんだ。
力も無いし、ロマンの欠片すらねぇ。
俺は人形に対する想いは誰にも負けねぇ。
“人形を人と同じようにしたい”って言ったら周囲から異端と言われたわ。
そんな俺があんな女に負けた?
認めねぇ。俺が一番ってことを証明してやる。
そうじゃなければ意味がねぇ。
「カエルム!なんだこの機能は!?」
「......何って瞬き機能だが、なんか変か?」
「こんなもの戦闘において何の役にも立たない!」
「今すぐ排除しろ!」
先生に叱られちまった。
クスクスクス。
周囲の笑いが俺の耳にも届いたがそんなの関係ねぇ。
......俺の自信作の瞬き機能なんだけどな。
コイツに入れた機能は瞬きだけじゃなくて、
無意識に視線が揺れる機能もついでに入れた。
......ここ、かなり作り込んだんだけどな。
ま......そんなの誰も気づかないと思うけどな。
一人だけ笑ってない人が居た。
「......」
驚いた。
人形に瞬き機能なんて考えもしなかった。
確かに盲点だった。
人形=兵器
これが当たり前。戦いに要らない機能は徹底的に排除されるのが肯定される。
私もこっそり不必要な機能を考えるけど、この人は違う。
堂々とそれを実行する。
今までそんな人に出会ったこと無い。
......理解出来ない。
でも――目が離せなかった。
「リラさんの人形を見習ってください!」
「綺麗な配線、合理的に設計されたパーツ、」
「戦闘において無駄がない、素晴らしいです!」
先生が私の人形を見て褒め称え私は我に返った。
パチパチパチ。
拍手と感嘆する声。
恥ずかしいけれど人形を造りたいその為に私はここに居る。
ミウラさんを見ると、
......私を睨んでた。
私なんかしましたか?という視線を返したら
プイっとそっぽ向かれました。
なにあの不愛想な人......
人形も非合理的だし、なんか態度も俺が一番人形を知ってるみたいな態度。
――気に入らない。
「戦場で“瞬き”に意味があるんですか?」
つい口が出てしまった。
「......意味があるかどうかじゃねぇ」
彼はこちらを真っ直ぐ向いた。
「俺が造りたいからやってるわけじゃねぇ」
「それが、“人”だからだ」
「たしかに戦闘人形においては、リラのほうがいいだろう」
「だがそれだけだ」
「動くだけの鉄だ」
「......そんなもん、誰の記憶も残らねぇ」
この人ハッキリ言いましたね。
「それは“設計”じゃありません」
「ただの感情論です!」
「お前には分かるかよ、そういうの」
「......理解する必要はありません」
バタバタ。
ここからお互いに言い合いになった。
先生が仲裁に入ったおかげで大きくならず済んだ。
なんなの?本当にあのミウラさんって人は、
大嫌い!
......なのに
胸の奥が、ざわつく。
どうして、あんな発想が出来るんだろう。
......悔しい。
――あの言葉が、頭から離れなかった。




