第19話「Confutatis: The Severed—K.626 VII -断絶された者たちの裁き-」
ザァアァ――――――――――
「......ただいまっす」
「エストさん......ちょっと待ってください、今親方呼んで来ます」
ポタッポタッ
雫が地面に落ちる。
「おう、帰ったか......」
「まぁひとまず無事でよかった」
「お父さん......ごめんなさいっす」
優しくカエルムはエストを抱きしめた。
「お前はどんなことをしてもミウラ・エストレア......」
「エストが信じてやったものを、最後まで信じろ」
「俺の娘だろ」
「......だから簡単に折れるな」
「こっちはなんとかしておくから」
「ごめんなさいっす」
アタシは作業着に沁みついたいつもの油の匂いと暖かさで胸が少しだけ軽くなった。
「娘ビショビショのままにして風邪でも引いたらどうするんだい」
「母ちゃん、いやほら......」
カエルムはモゴモゴしていた。
「......お母さん」
アタシは母の胸に飛び込んだ。
「今さっき話は聞いたよ、きっと王も何かしらの考えがあるに違いない」
「けれど、いくらなんでもあの判決はちょっと......」
「免許もイオもカイトさんも無くなってアタシ......アタシ――」
「無くしたものはまた取り戻せるなら取り戻せるじゃない」
「貴女は前を向いて進む娘だと分かってるから」
「自分を信じなさい」
リラの服は濡れ、エストの全てを受け止めた。
雨は数日間降り注ぎ、その日がやってきた。
その日も雨が続いていた。
ザァアァア――――――――
「違法人形を許すな......」
「カラン村を滅ぼした悪魔め......」
声は、雨に滲んでいた。
違う......俺がやったことじゃない。
やったのはイオだ。
俺はただ――救いたかっただけなんだ。
......俺は、悪くない。
......許さない
王か。
イオか。
それとも――俺か。
分からない。
ただ、何に対しての怒りなのかそれすらも......
雨音だけが、答えないまま響いていた。
「これより――断罪を執行する」
「進め、そこに首を置け」
俺は兵士に言われて目の前の濡れた木の窪みを見た。
躊躇してると額に衝撃が走った。
「この呪われし者が」
目の前には石が転がっていた。
......誰が投げたのか、分からなかった。
視界の端に、赤が滲んだ。
「何をしてる!早くしろ!」
兵士に取り押さえられ窪みに首を置いた。
ああ。
俺は1人なんだ。
信じた者を助けなきゃ!
人が多くて前に行けないっす。
カイトさんを、アタシの想いをちゃんと伝えなきゃいけないっす!
パッ。手を取られた。
「ちょ――」
エストは、伸ばした手ごと人の群れに吞み込まれた。
これで古代人形は我が手に......
何かを確信したような顔で、
ワイングラスをくるくると回してる父を横目に見てた。
その手は、微かに震えていた。
「カイト兄さん......」
「断頭台下ろせ!!」
ギロチンを持つ手が離された。
――音が、消えた。
「ウォーターランス!!」
カイトの後頭部を掠め、固定してあった木枠を打ちぬいた。
キュイーン
激しい閃光と共にカイトは消えた......
ガシャーン!
手にしてたグラスが落下と共に割れ、
王は激昂した。
「何をしてる!すぐに追え!!」
「ヴァルトを呼べ!」
「陛下、ヴァルトここに参上しました」
「ヴァルト、お前が報告してたカイト達を追って、」
「――殺せ!」
「かしこまりました、では今すぐ出ます」
流れたワインに、父の顔が歪んで映った。
ザァアァアアア――――――――
タッタッタッ、バシャン!
カイトは閃光で目がやられていた。
誰かに担がれて走ってるのは分かる。
「今は目がやられると思いますが時期戻るでしょう」
見えないけれどその声は見えてた。
......この声は、知っている。
「アルか!?」
「いままでどこ行ってたんだ!」
「今はその話は置いておきましょう」
「一亥も早くこの場から去らないと」
「......イオは、エストはいるのか?」
「エストはこの後合流する予定です」
「イオは......残念ながら居りません」
「今は逃げましょう」
俺はアルに救われたのか。
結局何も出来ないまま、イオを――
「カイトさん少し失礼します」
ガッ
持ち上げられた俺は何かに乗せられた。
「しっかり自分に捕まってください」
パカラッパカラッパカラッ!
自分は手綱を引き走らせた。
「馬......」
こんな形で乗馬をするなんて思ってなかった。
「この先でエストさんが待ってます」
......間に合えば。
「今しばらくお待ちください」
ザァアアアア――――――
雨音は鳴りやまない。
まるでこの惨状を喝采してるかのように。
――SYSTEM LOG――
DIVA Protocol:進行中
進行率:0.41%
対象:マスター(カイト)
精神状態:著しく不安定
感情解析:
怒り:増大
判断精度:低下
――最適化演算中――
推奨行動:
排除
……
承認待機中......
ガシャパリンッ!
『......カイト様』
――応答なし




