第18話「Waltz of Loneliness—Op.44 No.1 -孤独の円舞曲-」
「エストが王に狼藉して牢屋だ!?」
「はい......さっき町のほうで噂を聞いて......」
「なんかの間違いじゃないのか?」
「でも心当たりあるのなら、イオ絡みしかねぇだろうな」
「確かにそうですね、ミウラ工房に登録したのはエストさんですし」
「......やっぱ、あの人形なにかあるな」
「ですね」
「ところで母ちゃんには言ったか?」
「いえ、さすがに......まずは親方へと」
「......母ちゃんになんて伝えっかな」
「ああ......伝え方間違うと大変なことになりそうですね」
「......まぁこっちは任せておけ。問題はあのバカだ」
「とりあえず王に謁見を頼むほか手段はないだろう」
「一応調べられる範囲でイオを調べてくれ」
「くれぐれも“猫”に見つかるなよ」
「はい。分かりました」
カエルムは準備を急いだ。
――数日後、玉座の間にて――
その日の空は今にも降り出しそうな曇天模様だった。
「被告人カイトには死刑を宣告する」
「あれは違法人形ではない」
「あれは――国家を滅ぼしかねる“未確認個体”だ」
「報告によるとカラン村の件......あれを起こした可能性がある」
あまりの衝撃にアタシは頭が白くなった。
アタシがカイトさんを......
カイトさんを見ると王を凄い形相で睨んでた。
唇から血が流れてた。
先日までのカイトさんじゃない。
......それでも、目を逸らせなかった。
“結局......そうなるのかよ”
――イオに触るな......
その静かな火は誰にも届かなかった。
「ミウラ・エストレアは人形技師としての資格剥奪処分とする」
王の声は響いた。
アタシは何も考えられなくなった。
なんで......
――アタシ達は何したって言うの......?
その声も出なかった。
ただ――世界から切り離されたみたいだった。
その直後王の執務室にて皇子が王に話をしていた。
「父上、たしかにカイトは不明な人形を所持してました」
「人形や自身のことを知る為にわざわざこの帝都まで来た」
「これまでのギルドに報告された戦闘記録も何も問題なかった」
「ましてや正式な人形技師も傍にいた」
「そのことも鑑みても人形だけ没収し彼自身は罰金が妥当じゃないのでしょうか?」
「死刑はあまりにも横暴です!父上」
「再度検討を!」
「それに国家を滅ぼしかねる“未確認個体”って何ですか?」
オレは机を叩き父に直訴してた。
調査の内容を見ても死刑は“ない”
オレ自身......カイト兄さんを個人的に好いていたこともあった。
それを父は知ってる尚、そこまで考える父に疑問を持ったからだ。
国家を滅ぼしかねる“未確認個体”ってなんだ。
オレには知らないことを父は知っている。
だからこそ死刑を宣告した。
なぜ、家族であるオレにも話せない?
......イオだ。
あの人形が“鍵”になっている
父はそんなオレを見てゆっくり口を開いた。
「......彼にはすまないと思ってる」
「......我が帝国の為には致し方ない」
「話すことは無い、出ていけ」
静かに父は退出を促した。
「父上!」
......
(静寂)
「私は納得してませんから!」
バタンッ
1人残るラフェリウス
「この機を逃すわけにはいかないのだ......」
(沈黙)
「あれを生かせば――全てを護れる」
「例え我が身が、悪と呼ばれても」
「帝国を、」
「家族の為だ......」
「ディロッサス、モデナ......」
「ライラ......」
時計の拍と雨音だけが――孤独の円舞曲を刻んでいた。
・
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アタシは失った。
資格もイオも――
――カイトさん......
王城からの家までの足が鉛のように重かった。
王命は絶対。
――「被告人カイトには死刑を宣告する」
この言葉が胸の奥に突き刺さった。
アタシの足元にはポツポツと濡れ始めた。
ああ。
雨っすか。
......雨なら分からないっすよね。
雨音が、どこか遠くで刻まれてる気がした。
ザァアア―――――――――――
雨に紛れて――何もかも溶ける。
涙も、叫びも、言葉も、――孤独すらも......
――カイトさん......
それでも、この胸の奥の痛みは消えてくれなかったっす。




