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第13話「帝都グラン・レグラード」

「ようこそ、ここが帝都っす」


何事もなく無事に門を潜りぬけた先には――

壮観な街並み、人の活気の多さ、様々な人種。


人の割合のほうが多いが、人形の姿も少なくない。


「......これは、凄いな」


思わず足が止まる。

視界に入るすべてが、これまでの町とは桁違いだった。


人の流れ。声。匂い。

――情報量が多すぎる。


「帝都を観光案内したいのは山々っすが、」

「お互いにやる事あるから、二手に別れるっす」


エストがパンと手を叩く。


「カイトさんとアルさんはギルドで魔物討伐の報告を」

「アタシ達二人はミウラ人形工房に行くっす」

「無事帰ったことの知らせとイオのメンテナンスっす」


そう言ってエストはイオに抱きついた。

「わかった。イオを任せたからな」


「自分もそれで異議はないですね」

『はい、カイト様』


――ほんの一瞬だけ。

イオの視線が、こちらに残った気がした。

気のせいかもしれない。

いつも通りの無表情。変わらないはずなのに――

......違う。


何かが、“噛み合っていない”


......俺は、本当に“自分で”動いているのか?


「お任せあれっす~」

「メンテナンスには時間かかるっすので、用事終わり次第うちに来てくださいっす!」

「場所はアルさんかギルドで聞いてくださいっす!」


そう言ってイオの手を引き二人は人混みの中へ消えていった。



俺達はギルドに向かった。

アルが迷いなく先導する。


ギルドに着いたが、ギルドも今までと比べて一番規模が大きく冒険者も多く賑わっていた。


査定待つ間、俺はアルに聞いていた。

「アルは何処まで着いてくるんだ?」


「依頼が完了するまでですね」


「どこまでが“完了”なんだ?」


「......先ほど確認したのですが、まだ完了ではないようです」


「さっき連絡していたのはドミニクか?」


「......そうですね。それと――別件も」


わずかに言葉が濁る。


「......別件ってなん――」


「カイト様、査定終了しましたので受付までお越しください」

タイミングを見計らったように、受付の声が割り込む。


「行きましょう。カイト」


アルは何事もなかったかのように眼鏡を押し上げた。

――さっきの会話を、なかったことにするみたいに。


「......ああ」

追及できなかった。

いや――させない空気だった。


「カイト様、今回のお支払いはこちらになります」

「ギルドカードのご提示お願いします」


「送金致しましたのでご確認ください」


「......ああ、確認した。ありがとう」


「またのご利用お待ちしております」


ギルドの門を出ると、アルはミウラ人形工房へ向けて歩き出した。

案内するつもりなのだろう。

一瞬だけ、アルの視線が俺に向けられていたことに、俺は気づかなかった。


カイトを一瞬横目で見て――振り返る。

その瞬間、静かに決意していた。

ギルドのゴールドランクの冒険者でこれまで様々な依頼を受けてきた。

魔物の討伐、人助け、そして――カイトとイオの護衛。

今回の依頼は自分にとって、冒険者アル・シエンにとって“最後”の依頼になる。

そう......さっきの“別件”の内容で自分の運命は定められてしまった。


願わくば――別件が一生来ないことを望んでいたが、それは儚く静かに散った。


――もう、戻れない。


その眼鏡にはカイトが写っていた。


――標的を見るみたいに。




――ミウラ人形工房にて


「ただいまー帰ったっす!」


「おー!お嬢のお帰りだー!」

うぉぉおお!

「お嬢お帰りなさい!」

「お土産はないの?」


アタシは揉みくちゃにされた。みんなの顔を久々に見たけどみんな元気そうで嬉しかった。


「離してっす!どこ触ってるっすか!?痛いっす!」

一斉に離れていく。


「......お父さん」


お父さん、ミウラ・カエルムはミウラ人形工房の3代目の総工房長で、

日夜人形に関することへの探求心を求めてここ帝都に工房を構えてるっす。


「......おう、戻ったか」


お父さんは軽口で話した。元々あまり口上手じゃないっす。

けど、優しさは滲み出ていた。

「ただいま......っす」

「やっぱここが一番っすね」


「......なに言ってんだ」

頭をポリポリしながら視線をイオに向けた。


「その人形は......?」


「その人形はイオと言って――」


「......いや、待て」

「......なんだ、この違和感」

「なんだこれ!?」

「かなり精巧な作りじゃねぇか?」

「このフレームの素材は何だ?この辺じゃ見ねぇ素材だな」

「それにこのボディ造形も“人間に近い”造形してやがる」

「パッと見人間に見える」


そういって胸を平気で触ったので


「――こんのバカ親父!」

エストは手を振りかざそうとした瞬間――


ガンッ!!


お父さんが膝から崩れた先には歪んだ工具を持っていた母、ミウラ・リラの姿があった。

静かな夜みたいな目でお父さんを見下ろしていた。

お父さんの頭には工具の形の痕が残っていた。


「あらあら?人形とはいえ女性の胸を平気で揉むなんて、」

「まさか......そんな人が総工房長やってるなんて言わないですよね?」


「お母さん!ただいま」

アタシは母の胸に飛び込んだ。


「おかえり。エストちゃん」

「どこも怪我してない?大丈夫だった?」


母の心配と久々に包まれた香りで幸せを嚙み締めた。


「......うん。ありがとうお母さん、それと床で転がってるお父さん」

エストも静かな星みたいな冷たい視線で見下ろした。


「おまけみたいに俺を言うなよ」

頭を押さえながら立ち上がり再度イオを見る。


「お父さん、いや総工房長に話があるっす。部屋を変えて話したいっす。」



「......それで話ってなんだ?」

床がパーツで少し散らかってる総工房長室で

カエルム、リラ、副工房長兼総工房長代理ウラコ、アタシ、

そして――イオの五人が集まった。


「まずは話を聞いてくださいっす」

「イオは遺跡で発掘されたヴィンテージっすが、」

「これまで見たことない未知の人形の可能性があるっす」

「発見者はパーティーメンバーのカイトさんっす」

「現在のウチを含めた帝国製、オートノミア製そのどれでもないっす」

「そして違法とか改造とかそういう話じゃないっす」

「少ししか見れなかったっすが、根本的に構造が違うっす」


「言い換えればこの世界に置ける“人形の定義”からイオは外れてるっす」


「イオがどこで製造されたかも知らない、でも命令には忠実っす」

「当然のごとく三原則のリミッターもキャンセルされてるっす」

「......此処には調べる施設がそれなりにあるっす」

「だから一度アタシ含めてこの三人にはイオを見てほしいっす」

「今はウチの新型って扱いにしてるっすが明らかに違法、」

「正体不明の人形っす」

「ミウラ人形工房の一員としては失格かもしれないっすが、」


「......アタシは技術者としてイオを認めてるっす」

「だからお願いします」

アタシはみんなに向かって頭を下げた。



「私は副工房長として反対します」

ウラコは即判断した。


「正体不明の人形を診るなんてあまりにリスクがあります」

「それにミウラ製にしたのはエストさんの責任です」

「今からでも遅くありません、ミウラ製から解除したほうが......」


イオを見ながらウラコは言った。


「これで帝国から目をつけられたらミウラ人形工房にも何かしら影響はあります」

「ですので反対します」

「個人の感情で工房を危険に晒すべきではありません」


「......なるほどな。ウラコの言ってることは正しい」

「従業員、いやこのミウラ人形工房全部を考えて言ってる」

「だからこそか......」


たくましい髭を触りながら目を閉じて考えてた。

目を開いてその眼球にはイオが写ってた。


「わかった......」

「面倒をみたいところだが――」


「ウラコが反対するなら――反対だ」

「それが、総工房長としての判断だ」


間違ってないからこそ理解も納得もしてる。

けれど、旅を一緒にしてきてみんなを見てきてアタシは一人の人として、

カイトさん達を裏切れなかった。

任せてと言っときながらこの様だった。アタシは無力だと改めて痛感した。

......それでも、諦めたくなかった。


「“観るだけ”ならいいんじゃないかしら?」

この空気を壊したのは見守ってた母だった。


「診ると責任が伴うけど、観るだけなら私はいいと思う」

「だって......こんな人形見たことないじゃない」

「私は少しだけなら興味あるわ」

「観て判断してからでも遅くはないかと思うわ」


母を見ながらエストは涙が溢れそうになった。

父とウラコの工房を想う愛と、

母の無償の愛が、胸に沁みた。


「それにココって他の帝国製やオートノミア製と比べて、」

「どうしても性能面が一歩二歩劣ってしまうのよね」

「それって向こうは最新の研究や莫大な費用のリソースを使ってるから」


「ウチって基本リバースエンジニアリング。だからこそ安価で造れてる」

「それが追いつけるかもしれない材料が手元にあるなら、」

「生かすも殺すもウチ次第」

「確かに国に目を付けられるかもしれないけれど、リターンがある可能性もある」


「だから観るだけってそういうこと」


母はこちらを見て自分の唇に人差し指を立てて答えた。


「......たしかに。まぁ観るだけなら」


「親方!?」


「仕方ねぇよ。母ちゃんに言われちまったら」

「だってよ......こんな人形見たことねぇじゃねえか?技師としては心が踊る」

「ウラコの言い分も分かる」

「だからこそ、観るのは俺達だけ」

「それで勘弁してくれや」


「......はぁリラさんに言われると親方も甘いから」

「どっちが総工房長か分からないですよ......」


「でも......自分も一技師としては興味がないと言ったら嘘ですね」


ガハハ!と大笑いするカエルム。


「だろ?」


釣られて、みんなが笑う。

――アタシは、この場所が一番好きだ。



――エストはこの先この場所を失うことをまだ知らなかった。

それも遠くない未来で......。


……DIVAプロトコル:アップデート中……

……進行率:79.2%……

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