第11話「新たな仲間?」
馬車が軋む音と、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた人の熱気。
プラスコーを出て、しばらく経った頃だった。
やけに静かだ。
誰も口を開かない。
ただ、揺れる車内で互いの顔をうかがっている。
「......人、多いっすね」
「ああ」
本来なら安心材料のはずなのに――妙に落ち着かない。
俺達は入口のすぐ近くに座らされていた。
何かあった時、冒険者がすぐに飛び出せるように、らしい。
(......何も無ければいいが)
その願いは――
「......盗賊がでたぞ!」
地面を叩く重い振動。
複数の足音が、馬車を取り囲む。
外から叩きつけるような声。
「きゃあああぁぁ!」
悲鳴が一斉に弾けた。
「......行くしかないっすね」
「そうだな」
「イオは、ここで待機」
「馬車の護衛を頼む」
『かしこまりました。カイト様』
トレイターを使いたい気持ちはあるが、いきなり実践投入は無理だ。
剣と盾を握り、飛び出した。
「カイトさん、後方を頼んだっす」
「アタシは正面に行くっす」
「わかった。気をつけろよ」
外へ出た瞬間、視界に飛び込んできたのは――
「......多いな」
道を塞ぐように立つ人影。
ざっと見ても、一桁じゃ足りない。
「......だけじゃない、あれは――」
歪な影。
ぎこちない動き。
軋む金属音。
「気を付けてくださいっす!」
「“違法人形”っす!」
あれが違法人形。
俺は一瞬だけ、イオを見る。
同じ“人形”のはずなのに――
あまりにも違いすぎた。
そんな余裕はなかった。
「くっ......数が多い!」
息が上がる。
一体一体は大したことなくても――数が違う。
「死ねぇええええええ!」
ガンッ!
振り下ろされた剣を盾で受け止める。
「脇ががら空きだぜえええええ」
「やれ!ドール・W1!」
横から違法人形が突っ込んでくる。
(やばい――)
間に合わない。
――その瞬間。
「ウォーターランス!」
鋭い水槍が横から突き刺さり、
違法人形の胴体を“一撃で貫通した”。
金属ごと、抉るように。
「油断しないでください。次、来ますよ」
男の声。
「お前は――」
「それは終わってからです。魔法で援護します。引きつけてください」
即答。迷いがない。
「......わかった。助かる。――挑発!」
敵の視線が一斉にこっちに向く。
「ウォーターランス」
「アクアヴェール」
身体を包む水の膜。
衝撃が明らかに軽い。
「これで少しは防御もあがる!そのまま押せ!」
「......これで終わりです」
眼鏡をクイッとあげ不敵な笑みを浮かべた。
「メイルシュトローム!!」
水圧が辺りを押し流す。
「くっ......ひけぇええ、全員ひけえええ」
盗賊達は顔色を変えて
違法人形と共に一斉に引いていく。
――助かった。
あの男は何者だ?
「助かった。ありがとう」
「――下手ですね」
「......なに?」
「引きつけは悪くない。だが――」
一瞬、視線が周囲をなぞる。
「後ろが死んでる」
「貴方、味方の射線、完全に潰してましたよ」
「そんなこと言ったって――後ろなんて見えないぞ」
「だから三流なんです」
即答だった。
「前しか見てない前衛は、ただの壁です」
「周囲を見て、流れを作り、後ろとの連携を考える」
「それが、“前衛の仕事”でしょう」
「......」
言い返せない。
「まあ、最低限は動けてましたけどね」
「......ただ」
眼鏡のブリッジを指で押し上げる。
「無駄が多い」
「見てて、あまり気持ちいい戦いじゃない」
「後ろにいた人は大変だったでしょうね」
イラっとした。
「助けてくれたのは感謝してるが――」
「初対面でそこまで言われる筋合いはない」
「そうですね、口が過ぎましたね」
馬車に引き返す男
「名前は?」
「......“アル”です」
「俺はカイト」
「......カイト?」
振り返り近づいてきた。
「そうか、貴方がカイトか」
「俺を知ってる......?」
「貴方達を探していた」
「――正確には“イオ”を」
一瞬鼓動の音が跳ねあがった。
――なんでイオの名前を。
あいつは......この場にいないはずだ。
「詳しい話は次の町“ラヴィカーン”についてから話します」
アルと名乗った男は馬車に向かった。
アイツは何者だ?
「カイトさーん、大丈夫っすか?」
「違法人形で手こずったっす」
「......なにかありました?」
「いや、なんでもない」
「はいっす」
イオのことを、あいつは知っている。
それも――ただの人形としてじゃない。
馬車は動き出した。
あの男に言われたことが気になっていた。
あれから何事もなくラヴィカーンに着いた。
「護衛依頼があったんです」
「最近0属性がギルドに登録申請してきたと」
「リースペリアのギルド長のドミニクからそう聞いてる」
「ドミニクか......ギルド長だったのか」
「受付もしてるから知らない人もいますね」
「なんで俺達に護衛?」
「......自分もそう思いました。」
「冒険者なんですから自分の命は自分で守るでしょう」
「そう自分はドミニクに進言しました」
「ですが、今は“星”がいるからいいけど帝都に着いたら二人になるだろうって」
「いくら人形が優秀でも、“0属性だけ”では不安が残る――だそうです」
「カイトさん、心配されてるっすね」
「う、うるさい、俺だって努力はしてる」
「それに、人形イオに対して“違法人形”ではないかと調査依頼も来てます」
俺達は険しい顔になった。
「......自分もいい迷惑ですよ」
「それでも引き受けたので全力で護衛します、拒否権はありません」
「正直調査のほうはミウラ人形工房さんが認めてるのであれば何も問題ないと、」
「自分は考えております」
「アタシは構わないっすよ、むしろ......助かるっす」
「カイトさん、なんにも知らないからいちいち説明しないといけなかったっすから」
「それに......たしかにアタシの旅は帝都までって最初から決めてたっす」
「個人的に不服であるが、ギルドから正式に受けた依頼だから仕方ない」
「俺も同行には賛成だ」
「イオはどうだ?」
『......』
「イオ?」
『戦力上昇という点では良好と判断致しました』
『ですが、この方からは危険な因子を感じます』
「イオがそんなこと言うの珍しいっすね」
「......ああ、そうだな」
「それは当たり前ですよ」
「自分みたいなどこの者か分からないやつを、」
「いきなりパーティに入れるのはリスクが伴います」
「イオが言ってることは至極当然です」
「......自己紹介がまだでしたね」
「自分は“アル・シエン”と申します」
「冒険者ランクはゴールド、“三魔導士”です」
「主属性は水、風と雷も少々扱えます」
「......以後、お見知りおきを」
俺達も自己紹介をし、ひとまずその場は解散となった。
――だが。
「――正確には“イオ”を」
あの言葉が、どうにも頭から離れなかった。
らすぴかです。4月に入り仕事が激務になり投稿スピード遅れそうです。なるべく日を空けないように無理せず頑張るっす。




