16.キャバクラ編 お買い物
午後3時30分過ぎ、最後のお客さんが帰った。
「みんなおつかれ!日払い欲しい人ならんで〜。」
驚くことに私以外の全員が日払いを希望していた。
皆がぞろぞろと店長のもとに並んでいるのでそのすきに着替えた。
「あ、そうだ。」
先程コウジさんと約束したボクシングの試合の開催場所をメモした紙をスマホで撮影した。
「これで、よし。」
写真がキレイに撮れていることを確認して、着替えた。
着替えが終わり、椅子に座ってさきさんを待っていると、
「今着替えるからまってて!」
と、慌てながらさきさんが着替えに行った。
「え!?あれ?更衣室誰か入ってる!?」
どんどんと更衣室を叩いた後、更衣室の前でさきさんは着替え始めた。
黒のタイトなドレスを脱いださきさんの体はとてもキレイだった。
無駄な肉が無い。とはこういうことか・・・。
と思わされるようなきれいな体のラインだった。
「あー!お腹すいた。っつてもこの時間じゃ磯丸みたいなお店しか空いてないけど。磯丸でいい?さきお魚食べたい。」
「いいですね!磯丸なんて私久しぶりです。」
「は、着替え終わった〜。じゃ、行こ〜♪」
「お疲れさまでした!」
私は皆に向かって挨拶をした後、さきさんに腕を引っ張られながら店を出た。
「今日も疲れた〜。」
「疲れましたね・・・。」
「早く指名取れるといいね。」
「はい、がんばります・・・。」
「でもさーみつきってガツガツ行かないよね?」
「ガツガツ?」
「私、席ついたら絶対ドリンク頼まないとやってらんない。なんで頼まないの?」
「うーん、頼みにくいなって思っちゃって・・・。」
「わーだめ、だめ!貰えなくたって、頼まないと・・・。そうだ、さきが最初の頃使ってた魔法の言葉教えてあげる。」
「魔法のことば?ですか?」
「”一緒に乾杯してもいいですか?”って聞くの。”一杯飲んでもいいですか?”とか聞いちゃうとだめって言われる可能性高いから。」
「明日から使ってみます!」
「さきの場合、高いお酒頼んじゃうけどね★」
「流石です・・・。」
「後はさ、名前呼ばれた時素直に帰るんじゃなくて、交渉しないと。」
「交渉ですか・・・?」
「”もっとお話したいな〜”とか、”まだここに居てもいいですか?”て聞くの。ポイントは、どれもお金をチラつかせないこと。」
「確かに、いくらかかるとか、お金の感じがしないです!!!」
「男ってさ、女と喋りたいくせに金使いたくないケチなやついるからさ、その対策に使ってんの。今はさきは使ってないから使っていいよ。」
「助かります・・・。」
「あ、磯丸あったよ!はいろ〜。」
24時間営業の磯丸水産に入り、席についた。
「さきお酒あんまり飲みたくないからお茶にするわ。みつきは?」
「あ、私もお茶にします。」
「遠慮なくお酒飲んでもいいんだよ?」
「大丈夫です・・・(笑)」
「さきはお刺身盛り合わせだけにする〜。」
「少食ですね!?えーと私は・・・いくらとサーモン丼にします。」
「本当は食べるの好きなんだけど、モデルの仕事してるから我慢してるんだよね。」
「気になってたんですけど、モデルさんなんですか?」
「モデルっていっても着物のモデルとかだけどね。太って肩に肉なんかついたら怒られちゃうからさ、大変、」
「わーすごい・・・。あの、聞いていいかわからないんですが、なんでキャバクラで働き始めたんですか?」
「私ね、実は保育士免許もってて、保育園の先生してたの。」
「ええ!?」
「普通に保育園の先生してたんだけど、ずっとモデルやりたくて仕事しながらモデルの仕事探してたんだよね。でさ、いざ仕事が見つかっても保育園休まなきゃいけないから両立難しくって。辞めて、モデルやってる。けどモデルだけじゃ食べていけないからね、美容にもお金かかるし。で、働き始めた。」
「すごいです・・・。美容関係疎いので教えて下さい・・・!」
「さきにわかることなら何でも聞いて〜!」
「あ、マツエクってしてます・・・よね?」
「もちろん!しないという選択肢さきにはない(笑)」
「もしよかったらさきさんの行ってるお店行きたいんですけどいいですか?」
「えー!全然いいよ!さきのねー通ってるお店持ちがめっちゃ良いの!ちなみにさきはCカールで100本つけてる。」
「Cカールで・・・100本・・・。」
「さきがお店の人に言っておくから、同じのにしなよ。」
「はい!」
その後、どのこ化粧水がいいとか、水素水がお肌にいいとかさきさんの知っている美容関係についてたくさん教えてくだた。
途中できた料理も食べ終わり、おかわりのお茶を追加で注文してひたすらおしゃべりをしていた。
「あ、もう9時50分じゃん!そろそろお店開くね。」
「え、もうこんなに時間経ったんですね!?」
自分でも驚くくらいに時間がすぎるのが早かった。
5時間位おしゃべりしてたことになるのか・・・。
「あ、ここはさきが出すから気にしないで。」
「あ、でも悪いです・・・。」
「いいからいいから、いつかさきにおごって。」
「ごちそうさまです。」
さきさんに会計をしてもらい、お店を出た。
「どんなドレスがいいかな?最初から高いのはいやだよね?」
「ドレスがどんな値段なのかも把握しきれていないのでなんとも・・・。(笑)」
「うーん、さきが着てるのは8万とかかな。」
「えっ。」
「だって、さきのはブランドのだもん(笑)あ、客に買ってもらったりもしてる。」
「やっぱりすごいです・・・。」
「あ、ココ!ココ!このお店のドレスが超、超、可愛いの。」
こじんまりとした店舗の中を覗くと、キラキラと煌くドレスから、大人っぽい落ち着いたドレスまで幅広く揃っているお店だった。
「わーすごい・・・。」
「さきがドレス選んであげる。」
そういうとさきさんは鼻歌を歌いながら店内を見て回っていた。
値段が心配になりこっそりドレスのタグをみた・・・。
「・・・よかった・・・。」
少し高そうなドレスのタグを見たら¥15000円だった。
いや、15000円は十分高い、けど先程さきさんから”8万円”って言われた言葉が衝撃的すぎて安く感じてしまった。
「ねーみつき!これどう!?」
そう言ってさきさんはピンク色のワンピースを差し出してきた。
「わーかわいい・・・。」
薄いピンク色のそのドレスは、膝少し上くらいの長さで、スカート部分がふわっとしていた。
ウエスト部分は紐で調整出来るようで、くびれて見えた。
袖なしそのドレスは胸がかなり強調されるデザインだった。
「みつきってさ、おっぱいでかいと思うから、これでおっぱい出したほうがいいよ。」
「えー。(照)」
「しかもね、これやすいの!20000円!」
「これ買います・・・。」
「あ、買うならさヌーブラも必要だよ。」
「ヌーブラ?」
「簡単に言うと、おっぱいを盛るやつ。これも買っときな。」
「あ、はい・・・。」
さきさんは少し濃い目の肌色のヌーブラを私にわたした。
「ここ、お店からも近いしいいよね。」
「そうですね・・・気に入りました!お会計してきますね。」
「外で待ってるね〜。」
「お会計28000円です!」
店員さんに言われてハッとした。
これって・・・安くないよね!?
「おまたせしました!」
「ドレス買えてよかったね。さきさ、これから友達と合うからまたね。楽しかった!あ、ライン教えて!」
「こちらこそ!あ、ラインですね・・・。」
慌ただしくかばんからスマホを取り出し連絡先を交換した。
「また、なんかあったら連絡してね!じゃね〜。」
「ありがとうございました!お疲れさまです。」
勢いよく手を振りながらさきさんは消えた。
さきさんとわかれてから5分も経たないうちに
ピンコン
「今日はありがと!さき一人っ子だから妹ができたみたいで嬉しい★」
と送られてきた。
私もすかさず
「こちらこそ、今日はありがとうございました。私は長女なのでお姉ちゃんができたみたいで楽しかったです。」
と送った。
さて、明日?も仕事なので帰って寝ないといけない。




