14.キャバクラ編 店長の野望
1階だけ上がるのに、時間が長く感じた。
エレベーターを出ると、下のお店と同じ種類の重たいドアがあった。
ドアには”OPEN”という張り紙が貼ってあった。
重たいドアを軽々と店長があけると
「あ!いらっしゃい。」
と、長身で清潔感のあるお兄さんが右手を軽く上げた。
「よう。」
と店長も右手を上げると、案内もされてないのにスタスタと店内に入っていく。
戸惑いながらも私は店長の後をついていった。
個室のような作りになっている席に店長が座った。
私はあわあわとしながらも反対側に座った。
「仕事前だからお茶でいいよね?」
「あ、はい。」
「お茶、2個頂戴〜。」
と店長が言うと、
「はいよ〜」
とお兄さんが軽く返事をした。
「大した用事ではないんだけどさ、話したいことあって。」
「はい。」
「俺、この業界結構長いからさ、感なんだけど”売れる子”か”売れない子”かっていうのわかるんだよね。」
「はあ・・・。」
「俺、みつきちゃんは”売れる子”だと思ってる。だからさ、俺がみつきちゃんを売れるように指導しようとおもう。」
「ありがとうございます・・・?」
イマイチ状況がつかめない私をよそに店長は続けた
「で、仕事始める前の数分ここで色々会議とかしたいなっておもってね。」
「お店ではだめなんですか?」
「うーん、ちょっとむづかしいかな〜。今いる女の子たちって元々は六本木とか銀座で働いてたすごい子たちなんだけど、仕事に疲れちゃってウチの店で休憩してるような感じなんだよね。ウチ、ノルマとかないからさ。時給は安いけど。で、女の子たち自身それぞれの元いたお店のお客さんが付いてるから、コントロールして仕事してる感じなんだよね。」
「す、すごいですね・・・。」
「すごいか凄くないかは置いておいて、店的に困るんだよね。あの子達、新規のお客さん滅多についてくれないからさ・・・。」
「あーなるほど・・・。」
お兄さんが無言でお茶を置いてくれた。
「俺さ、この店というか先輩に恩があるから、恩返ししたいんだよね。」
「恩・・・?ですか・・・。」
「うん、今はちがう系列のお店に移動したんだけど元々ウチの店の店長やってたんだよね。ただ、俺が店長になってからなのかさらに売上が下がり気味で・・・。」
「そうなんですね・・・。」
「だからって、盛り上げようと頑張っても女の子に煙たがられるしね・・・。大変だよ・・・。」
「はあ・・・。」
「だからさ、頼むよ!俺とお店を盛り上げてほしい。」
「私に出来るかわかりませんけど・・・やれることはお手伝いします・・・。」
「本当に助かる。じゃ、今日からこの店で会議よろしくね。」
「はい。」
「あ、あとは話しても問題ないけどあんまりこのことは周りに言わないでね。特別扱いしてるって面白く思わない子も多いから。」
「わかりました。」
「じゃ、お店戻ろっか。」
「はい。」
席を立つと店長がお兄さんに
「つけで!(笑)」
と言って肩を叩いた。
「またかよ(笑)」
といいながら重たいドアをあけてくれた。
「またきてね。」
とお兄さんが通り過ぎる私の耳元で囁いた。
「は、はい。」
お兄さんの方を見ると爽やかな笑顔だった。
私と店長はエレベーターに乗って下の階に下がった。




