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第24話 いつか借りたお金


 ニーチェは自身の尻をさすりながら泣いていた。

 イズヴィに何十発もお尻を叩かれたせいである。


 しかしタウロスは心配するどころか遠くでお茶をしていたので仕方なさそうに立ち上がった。


「……イズヴィは強い……まだ勝てないッス」



 イズヴィの様子を盗み見る。

 イズヴィは池の前で不安そうに池を見つめてデグネが池に入って小石を拾い上げていた。


 ここが好機と思いそろりそろりと近づき声をかける。


「タウカス、そろそろ帰るッスよ。ほら、ちゃんと挨拶しなさいっていつも言ってるじゃないッスか」

「それなんだけどさ、お前魔法……魔法陣は使えないの?」


「丈夫なあんよがあるんだから歩け。若いうちから楽しようとすんなッスよ。仮に転移魔法使えてもタウカスは歩け!」

「今ダロス王都から不審者は出られないらしいんだよ。俺はたぶん大丈夫だけどニーチェって……不審者以外の何者でもないよな?」


「タウカスお前……え?なんスか?あっしが不審者ならイズヴィはなんなんスか?あっし以上にあいつは不審の塊ッスよ」

「イズヴィはここから出ないから関係ないだろ。俺はウィル父様に事情を話してくるけど……一緒に来る?」


「一人で行って来い!このパシリカス……あ、ちょっと待ってッスよ!勝手に先走んな!」


 当然面倒な事はごめんなニーチェだが今からタウロスが居なくなれば……それは問題ない。

 それよりも……此処にはまだイズヴィがいるのだ。

 自分の尻を腫れ上がらさせた非常なる尻叩きマシーンが。


「仕方ないから一緒に行ってやるッスよ

テレレ〜〜【大賢者ニーチェちゃんが仲間に加わった】ほらほらイズヴィが池と睨めっこしてる最中にコソコソ動けッスよ!」


 タウロスはやれやれと言った表情ですデグネに挨拶して屋敷の門に足を運ぼうとしたとき、



 門兵らしき人が男二人を連れてデグネへと駆け寄った。


「なんだ?父様の客か?……あぁ、先生のとこに来る商人の小間使いか」


 デグネが男二人を睨んだ。

 見るからに貴族ではない。そして佇まいに品というものがない。金に薄汚い商人特有の悪臭がする。


「これはデグネのお坊っちゃん。お久しぶりですねー」

「何の用だって聞いているんだよ。お前此処が何処かわかってるのか?」


「えぇ勿論ですよ〜……まさか貴族街に逃げ込んでいるとは……俺たちが貴族街に入らないとでも思ってたのかよぉ!?」


 男が契約書を見せつけながらイズヴィを睨んだ。


「オルセン様の友人がお偉いさんでなかったらと思うと……まあいいよ。逃げてた分も含めてキッチリ金を返して貰おうか?」


「……?」


 金貸しの恫喝などイズヴィには全く効かない。

 それもそのはず。イズヴィには金を借りた覚えなどないのだ。


「こいつどんだけ面の皮が厚いんだぁ!ヤバいですぜアニキィ!こいつを連れて来ないと俺たちがオルセン様に……」


「契約書を使うからだあってろ!まず名前……?なんだこれ?」


 金貸しが契約書を見つめると目をキョトンとさせた。名前の部分が読めないのだ。

 少しだけオロオロしながらもこの中で一番博識そうなデグネに近寄った。


「デグネ坊ちゃん、これ……ここ読めますかい?」


「お前は俺を舐めてるだろ?……ん。なんだこの暴利は!……いやその次……なんだこの文字?ん、べ……て?」


 デグネは頭は馬鹿で悪そうだがこの中では誰よりも学はある。しかしそのデグネを持ってしても名前部分が読めなかった。


「アニキアニキ!」

「うっせ!だあってろ!」


「オイラがファティマさんから聞いてきてますぜ。

 Извините それでイズヴィニーチェって読むらしいですぜぃ」

「おおう、お前もたまには役に立つ……いいや、流石はオルセン様の友人だ。お前の名前はイズヴィニーチェで間違いないな」


「……そうっすよ」

「よぅし!言い逃れ出来ねぇぜ!」

「でもお金を借りてなんかないっすよ」


 勘の良い奴ならこの辺りで気付くだろう。

 そしてその中でも気付いた男がいる。



「おいニーチェ……あの借金って……お前のだろ?」


 ニーチェは事あるごとに借金やツケをしまくっている。アルフィーの町ではのらりくらりとレイラ達が返していたがまさかダロス王都に来てまで借金していたとは。


 これにはタウロスも呆れるばかりだ。


「身に覚えがあり過ぎて逆にないッス……てへぺろ」

「正直に名乗り出てやれよ。イズヴィ困ってるじゃないか」


「あの顔が困ってるように見えるッスか?」

「全然。心なしか嬉しそうに見える」


「ありゃあ幾多の戦闘をこなして身に付けた境地、マゾヒストの加護ッスね。それによく考えたらあっしは金貨3枚なんて借りないッスよ」

「この距離でよく見えるな。たしかにニーチェは上限いっぱい……俺の名前使って最低でも金貨10枚は借りてたな。思い出しても腹立ってくるな」


「ケチなお金ちゃん借りる気なし!って事でこの件はイズヴィが借りた金!自業自得ッスよ!さらば姉ちゃん!悪徳商人に売られてこいッスよ!

 〜次回 第25話 お姉ちゃん娼館で働く〜

 ああー、でも姉ちゃんは色気と魅力に欠けるッスから万年お茶ひき係ッスね」




 ニーチェの借金ではないとわかったところで金貸しの子分が驚きの声を上げた。


「アニキアニキィ!」

「だあってろ!」


「あっちにも同じ顔した奴がいますぜ!あっちなんじゃないですかい!?」


「あぁ〜?……たしかに……こっちは三つ編みだしそれに身なりが良い。借金をしてるような品のない顔じゃねぇ……あっちは見るからに幸薄そうで常時素寒貧な顔してる。確信しだぜ!あっちが金を踏んだくった奴だ!」











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