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第12話  レイラを守り隊


 馬に乗せられたままマキナはレイラの自宅の一つへと運ばれた。


「ただいまですわ」

「……お帰りなさいませ」


 執事のセバスは多少目を細めた。父親と出かけたレイラが三十分も経たずに戻って来たのだ。

 しかし目に見えて怒っていたので自分なりに状況を把握する。



「……そちらの女性をお運びして宜しかったですか?」

「セバス爺、わたくしパパとケンカしちゃいましたわ。酷い事も言っちゃいましたわ。もう怒ってわたくしと口を聞いてくれませんわ」


「何があったかは私には分かりかねますが、まずはこの女性を介抱しましょう」



 急遽の治癒魔導士が派遣されマキナの身体に触れ慌てて手を離した。


「これは毒……でしょうか?いや、毒じゃない……申し訳ありませんが私に治癒出来る領域にはいません」


 言って治癒魔導士が自らの指をレイラに見せた。

 マキナに触れた指先はじゅくじゅくと爛れている。


「お力になれずに申し訳ありません」



「セバス爺、もっと腕の立つ治癒魔法を使える人はいませんの?」

「私が知る限りでは王都にはいません。それに感染するとなれば原因が判明するまではおいおいと呼べません。精々膿を出し包帯をこまめに取り替える事をぐらいしか思い付きません」



 セバスの言う通りにマキナの身体に包帯を巻いていく。巻いたそばから赤みがかった黄色い汁が純白の包帯を汚していく。



「……セバス爺、薬草はダメですの?」

「ポーションやエーテルの類ですか?生憎と私はその手の知識には疎いので」

「そうじゃなくて薬草ですわよ!アイシャちんが沢山送ってくるんですのよ。それを使ったらもしかして……」




 レイラは慌てて庭に出て繋がれている馬の頭を優しく撫でながら声をかけた。


「スレイプニル、わたくしのお家まで行って薬草を持って来てくれます?場所は……お兄様の頭を何度か齧れば理解してくれますわ」


 馬のスレイプニルは『俺に任せろ』と言わんばかりに頷いた。鞍も付けずに悠々と門を出て



 雷光と共に姿を消した。




 スレイプニルが門を出て数分後、

 雷光と共に姿を見せた。

 口に大きな袋を加えを燃えるような紫電を纏う様はまるで……



  まるで……



「スレイプニル……それがアイシャちんが送ってくる薬草袋ですの?」


 人語を発さないスレイプニルは大きく頷いた。

『俺に任せておいて正解だっただろ?』と言わんばかりに。


 しかしレイラの表情は明るくない。


 袋は焦げ灰となった中身を確認したレイラは優しく頭を撫でた。


「ありがとうスレイプニル。とても良い子でしたわね。あとでニンジンを持って来ますから大人しくしてますのよ」



 仕方なく灰となった元薬草を持って再びマキナを眠らせている部屋に向かう。


 元よりレイラは薬草の使い方など知らない。

 すり潰して塗るのか、煎じて飲むのか、

 分量はどうなのか、一言に薬草と言っても用途は様々だ。


「う、ぅぅぅら、レイラ、ピーマン。ピーマン欲しい」


 途方に暮れるレイラに声がかけられた。顔半分は吹き飛ばされたかのように消失しており言語も満足に話せない男。

 元は貧民街にいたのだがあまりにも生活が出来ないと思い彼だけは連れて来ていた。


「あらジャサファ、もうおやつの時間ですの?」


 男の素性などレイラは知らない。しかし悪い人ではないのは確かだ。

 何故ならレイラの嫌いなピーマンのバクバクと食べてしまうのだ。ジャサファがそばにいればピーマンなど恐るるに足りない。


「でもちょっと待っててほしいですわ。先にこの女性を介抱しませんと。ピーマンはその後には差し上げますわ」


「うううぅ 俺はピーマン……ほしい……ほしい」


 廃人になったジャサファは腐りかけの女性を睨みつけた。あの女さえいなければ自分は大好きなピーマンが食べられるのだ。


 レイラが少し迷いながらも意を決してジャサファを見つめた。



「ねぇジャサファ、この女性を助ける方法はありませんの?教えてくれたらお昼ご飯にわたくしの分のピーマンを差し上げますわ」

「ピーマ……侵攻する食。この女は暴食の罪業に当てられたな。使えそうな物は——その灰を渡せ」


 言われるがままに薬草袋をジャサファに手渡した。

 大量の灰からなにを基準にしているのか細かく仕分けし始める。


「煮沸した水と水銀が必要だな。用意出来るか?」

「あ、はい。セバス爺!しゃふつした水を銀のお皿に入れて持ってきて!」

「勝手に改変するな。煮沸した水と水銀を別々にだ」

「銀のお皿じゃなくて水銀!水と水銀ですわ!」


 奥で控えていたセバスは頭を下げすぐさま召使いに取りに行かせた。



「ねぇジャサファ、この人は治りますの?」

「治るもなにも全身が暴走し作り替えられているだけだ。細胞が正常から異常へと反旗を翻しただけなのだからな」


「どーゆー事ですの?」

「先程も言ったがこの人間は暴食の罪業に侵されている。細胞が異なる意思を持って変異する。癌と呼ばれる病名だ……この世界には未だ存在しないな」


「た、助かりますわよね?」

「俺のいた世界では……こちらで言う虫歯となんら変わりない。メネントが使ったにしては用途が不明過ぎる点が気になるな」



「虫歯……つまり不治の病ですのね。この人は大変な病気なんですのね」

「この世界では虫歯の治癒は確立されていなかったな。薬灰で使えそうな物は選りすぐったのでなにも問題ない。レイラはピーマンの在庫を心配していろ」


「わかりましたわ!新鮮なピーマンを沢山用意しますわ!」

「勤勉なる気力がムンムン出てきたぞ」


 




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