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第48話 昇天せし憤怒2


 ジャサファが血霧となりながらその場を離脱して戦う前に意識を落とされたミリアムはようやく目を覚ました。


 目を覚まして最初に見たのはやはり、満身創痍の老人だった。



「起きたか愚者め。戦闘狂など相手にもしたくないが生憎とそうも言ってられん。抜け、そして魅せろ貴様の技を——」


「ふ、ふふ、あんたは千載一遇のチャンスを失ったよ」


 ミリアムは額の傷に手を当てならが不思議に思った。

 傷が癒えている。柊心との戦闘で負傷した箇所も全て治っている。身に覚えはない。



 先程まで確かにいた男、ジャサファがいなくなっている。


 ジャサファと協力して倒そうとは思わなかったが目の前の敵は遥かに強大であり自身の血肉が沸き立つのを感じていた。


 そして自らの矜持を全うする為に名を語る


「七つの美徳が一人、羨望のミリアム」

「良い名乗りじゃ。ワシの名はブレドリパ。忠告じゃが貴様の全てを出し切ってもワシには届かんぞ?」


「——疾ッッ!」

「あ〜〜?なんじゃこのクソボケ」


 ミリアムが眼帯をしている死角へとまわり込み腕をしならせ痛烈な一撃を放った。


「——ここじゃ!この阿呆が放った鞭のようにしなる打撃を最高速度に達する三刹那前に払いのけ——足捌きは——こうじゃ!どうじゃ!?この位置ならば観やすいじゃろう?」


 ブレドリパが肘を払い懐に潜り込んだ。

 片手で襟首を掴み素早く立ち位置を反転させる。

 その一連の動作はミリアムからすれば不意に目の前に現れたかのように速く、はたから見ればゆるりと舞うような仕草だった。


「もうワシの間合いじゃ。驚くよりもなんとかしてみんか。三秒後に心臓を一発打つからな。三——ニ——」

「!?くっ、動かな——「アホか——断火 焔」」


 ミリアムの胸に寸勁がめり込んだ。

 降りしきる雨がミリアムに当たるたびに蒸発していく。



「がはぁ——がはぁ——はぐぅ 断火……だと!?」

「じゃから断火って言っとるじゃろうが。余興すらも全う出来んのならば殺すぞ?」


「——ひっ!?」


 ブレドリパが殺気を噴射させた。全体に放つのではなくあくまでもミリアム一人、橋の隅っこで大人しく三角座りをしている3人には先程までの違いなどわからない。


 怯えとは生存反応だ。

 恐怖とは生きる為の感覚だ。

 その感覚に従う事は恥ではない。


 ミリアムはまだ本気を出していない。

 自身の罪業である嫉妬を放っていない。


 雨が降っている今は世界を止める罪業の条件としては悪くない。


 しかしブレドリパは本気ではない。

 それどころか手加減、それすらも生温い感覚が纏わり付いている。

 嫉妬の罪業を使ったとして、目の前の殺す事だけに特化した快楽殺人鬼のような男に通用するとは思えなかった。

 

「はぁ——はぁ、どうする……どうする」


 萎縮しているミリアム相手にブレドリパはチラリと女性三人を視界にいれた。


 ミズーリは酷く驚いている。これはブレドリパが見たかった光景だ。


 一方でニーチェとマキナの二人は——無表情だ。

 これにはブレドリパから冷や汗が流れ落ちる。


「二人とも今回はちゃんと説明しながらやっとるから退屈しとらんじゃろう?退屈じゃったとしてもコイツも弱すぎるんじゃよ」

「どう言う事だい?今回は——コイツも?まさかジャサファは——はぐぅ!?」


「貴様に聞いとらんわあ!なんも出来んのなら黙らんか!」



 衝撃が自身の身体を貫いた。完全にブレドリパの姿が視界から消え、遅れて怒号が飛び交った。


 橋を破壊しながら川へと叩き込まれたミリアム、

 そしてドボンという音を耳にしてようやくニーチェとマキナの見物人は何が起こったのかを想像して口を開いた。


「また見えなかった。何したのかわからない」

「今度はちゃんとわかるように説明付きでゆっくり戦闘してくれるって言ってたのに……ブレドリパはタウカスと違って嘘つきっす」



「あ、……あ、アレじゃな。彼奴から何やら不穏な雰囲気を感じ取ったんで先立って潰すしかなかったんじゃ。決してムカつくから殴り飛ばしたわけじゃないんじゃよ」




 ブレドリパが心配そうに川を覗き込んだ。

 尋常ではない焦りから額からは雨とは別に冷や汗が滝のように流れ落ちている。


「マズイのぉ〜、流石に死んどらんじゃろうが戦意を失っとる可能性が高いのぅ」


 ブレドリパの心配を他所にミリアムが川から這い上がってきた。足元はふらついており、目も虚。何故自分がここにいるのかも分かっていない。


 その姿にブレドリパは安堵した。

 まだ自分の良いところを女性三人に見せられると、


 はっきり言ってミリアムなど噛ませ犬でしかない。

 見方によってはブレドリパこそが悪役そのものだ。


「くくく、ワシの一撃を喰らってまだ息があるとは粋な奴——しかしそろそろ幕引きといこうか」


「あ……あ、あぁ……」


 もうこれ以上ミリアムからは引き出し、それを出す力がないと見抜いたブレドリパが懐から短刀を取り出した。



「二度も幻魔で傷を癒やされるなどと思うなよ?貴様は斬魔にて絶命に至る風流な死に様をくれてやる。雅さの欠片もない貴様にはうってつけじゃ」


 ブレドリパが詰めにはいる。

 最後はわかりやすい必殺技でも繰り出して終わらせようとする為に。



「あ……あぅ——ぐ、ぐぐぐ  あ あぐ」

「あ〜?もうちょっと頑張れるじゃろ?ほら?指が動かんなら目線だけでええから。動いてみんかい」




「  ぐえ  」


「……チィ!こんの雑魚助があ!なんも出来んのなら立ち上がってくるでないわぁ!頭でも冷やして反省せい!」


 ブレドリパは倒れ伏したミリアムの足を掴み下流に向けて豪快に投げ飛ばした。







 ーーーーおまけーーーー



 ブレドリパ  年齢 不明 



 筋力 鉄心石腸

 敏捷 迅雷風烈

 体力 絶倫

 精神 天下無双


 魔法適正  G シグの好意か嫌がらせか全ての魔法が無条件で使用可能。本人は使う気がない。


 加護 なし。



 ーー昇天せし奇跡の一端ーー

 

 静寂なる奇跡 宣誓先制ペネトレイト

 宣誓後、自身の行動が防がれる事はない。

 宣誓次第で【ずっと俺のターン】が可能。

 


 昇天せし憤怒(オーバードース)

 対象に自身と同等のステータス、能力、奇跡を与える。

 与えて減るものではなく与えられた対象は一時的な万能感を得られる。

 

 


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