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第45話 永劫残滓3


 ーーサイド マキナーーーー


 クリーヴァ義父様を殺した人間が何度も破壊されている。アタシはその度に時を戻す。

 再び壊される様をこの両目に……目なんかなかった。

 この光景は肉体ではなく魂に焼き付ける。


 いい気味だ。

 お前にとって一番酷い死に様を選び続けてやる。


 四肢をもがれる。生温い。

 ガリガリの男に食われる……ありきたりだ。

 百の手に粉砕される……まぁまぁだ。


 欲に……世界に——


 あの女、柊心の魂が痛みに耐えられなくなっても、アタシはやめる気はない。

 だってあの女はずっと過去でクリーヴァ義父様を殺したのだから。


 幸いな事にこの場は魔力に満ちている。

 普段なら掻き集めるのは凄く大変だけどこの場に限っては無尽蔵にも思える。


 

 柊心が惨殺される姿を見続けること百と少し、


 ……柊心のへその下、紋様が目に止まった。

 匂いでわかった。ロクシリーヌ母様の血だ。

 ロクシリーヌ母様が描いた高貴な魔法陣だ。


『でもなぜ?何故母様は?』


 わからない。わからない。アタシは良い事をしているはず、なのに何故……ひょっとして、


 ロクシリーヌ母様は柊心になんらかの協力をしていたの?

 わからないけど別にいいや。柊心は死んで当然だし。




 ——呼び出しがあった。面倒くさい……でも丁度いいからアサシンバグに聞こうっと。そうだ。きっとアサシンバグはアタシの疑問に答えてくれる為にアタシを呼んだんだ。

 



……


 白銀の世界を通り過ぎて、壊れた天秤の下で世界を見下ろすニーチェを無視しようとも思ったけど気になる事があった。


「ねぇニーチェ、イズヴィの魔力が溢れてたけどいつから魔法使えるようになってたの?」

「……お姉ちゃんはもう魔法は使えないはずっすよ。たまに隠れて見てるけど魔法を使った報告もない」


「だよね。なんだったんだろ?」


 この馬鹿が正解を知ってるとも思えなかったし別にいいや。今から会う奴に聞けば全部わかる。





 アサシンバグはそこにいた。

 隣にいるのはシルクハットを指に引っ掛けてクルクル回している軽薄そうな男……ブイ叔父様か。




『失敗した場合はこちらから合図をおくる』

「方法は?」

『特にないが……出来るだけ苦しまずに殺してやれ』


「それが出来ないんだよなぁ。オレはもうヤバいぐらい影響を受けちまってる。あんたの命令じゃなきゃジル・ローレスには絶対会いたくないんだよ。会えば動けない。そーゆー身体になっちまってる」


『……そうか。ではお前の記憶を消して過去のブイに転生させる。お前は目的だけを全うしろ』


「結局そうなるのか〜。頑張れ過去のオレ。それと餞別ってわけじゃないんだけどさ〜、ジル・ローレスを殺せる理由を与えといてくれよ。オレは人間殺すの好きじゃないし〜。覚えてないのなら余程の事情がないと殺さないと思うぜ〜」


『シンプルな感情……怒り……いや、憎しみだな。多少都合は悪くなるが拙者に会う事を引き金としておくか』

「アサシンバグが居る世界とか冗談じゃないんだけど?いつ出会った——……ハハッ。ぶっちゃけど〜でもいいな〜」


『賢明だ』



 ブイは話しを終えたのかアタシに近づいてきて肩をポンと叩いた。


「マキナか〜。お前怒られるぜ〜?」

「どうして?遅刻なんてしてない。ちゃんと10分前に来て今も順番を待ってる」


「オレがわざわざ働かされてるからだよ〜。だから犯人には痛い目みせるよ〜頼んだといた。それが今回のオレの報酬。どうせお前だろ?まぁ程々にがんばれよ〜」


「……ブイ叔父様は意地悪ばっかり!大っ嫌い!」

「カマかけてみただけなのに本当に心当たりあんのかよ〜」



……



『来たか』


 アサシンバグは弱いくせに相変わらず偉そうな奴だ。

 実際弱いし事実偉いんだけど、


『アサシンバグに聞きたいんだけど、柊心を酷い目に合わせて殺したらクリーヴァ義父様は喜ぶよね?ロクシリーヌ母様は悲しまないよね?』



 アサシンバグは今のアタシの上司だ。

 冷たい奴だけど前の奴よりも融通がきいて、なによりもコイツのいう事を聞いている限りロクシリーヌ母様はとても嬉しそうに過ごしてくれている。


 だから今回も母様が喜ぶ行動をアタシに教えてくれるはず


『マキナ、お前なにか勘違いしているな』

『勘違い?』


『拙者はお主に【クリーヴァとロクシリーヌに関する事にのみ】魔法を使う許可を出しているのだぞ。柊心が先の二人の何処に関係しているのか言ってみろ』


『関係ある。柊心のお腹に……母様の魔法陣があった』


 アサシンバグは相変わらずなに考えているのかわからない。こいつはただの異常者だから思考を読むなど無駄そのもの。だから正直に思った事を言った方がいい。


『そうか……ニーチェ!』


 ずっと世界を見下ろしていたニーチェがこちらを振り向いた。


「なに?」

『仕事だ。ロクシリーヌを殺してこい』


 アサシンバグの命令だ。こいつはシグお婆様から全権を任されている。だからその命令は絶対に逆らってはいけない。


 アサシンバグに逆らえばシグお婆様に逆らっていると同義なのだから。



「あぅ〜、今タウカス見てるから。タウカスが寿命で死ぬまで待ってて——あうぅ!またタウカスが知らない人と喋ってる!」


 ニーチェは命令を一応は聞くが、まともに聞く気はないようだった。訳の分からない人間にご執心している頭がおめでたい女だ。



『……仕事の後はタウロス殿に会いに行っていいぞ。定期的に連絡すると約束出来るのなら1ヶ月程の暇をやるから久しぶりに好きなだけ甘えてこい』

「ほんとうに!?あっし行ってくる!」


『使用魔法に制限は与えんから疾く殺せ。しかし絶対に他を巻き込むなよ』

「うんっ!」


 ニーチェが元気よくガバッと腰を上げた。

 世界の隅々を見渡し——母様を探している。


 不味い……枷のないニーチェがいけば絶対にやられる……アタシではこんな奴を相手に出来るわけない。


 止めるならニーチェではなくアサシンバグだ。




『どうして?どうして母様を殺す必要があるの!?』

『必要ないし心底無駄だと思っている。しかしマキナも必要ない事をしているだろう?上に立つ者として拙者も同じ事をして気持ちを知りたくなっただけだ』



 なんて部下思いの上司なのだろう。とは思えない。コイツはロクシリーヌ母様を餌にして……本当にクソ野郎だ。



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