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第43話 永劫残滓1 


 レイラが雨除けの為に道具屋の軒下で不安そうな顔で待っていると暗闇から声が聴こえた。


「待たせたね……レイラ?」

「……あ。ミリアム……」


 ミリアムは所用で小一時間ほど1人になっていた。そしてレイラとこの場所で合流したのだが、何処か様子がおかしい。


「怖気付い——やっぱりやめておこうか」


 微かに震えているレイラを見てミリアムは勘違いをしていた。いくら我が家とは言え泥棒紛いな事をしようとしているのだ。本人にその気がなくなったのならやるべきではない。

 ミリアムもこの後仕事が控えている。無駄な体力は極力控えるべき、


 勿論優先順位はレイラが遥かに上なのだが、



「違いますのよ……その……夢を見てましたのよ……」

「どんな夢だい?」



「ミリアムが待ち合わせに来なくて……みんな死んぢゃうんですの。パパも……ママも……悪い人たちもみんな死んで——怖い夢でしたわ」

「予知夢ってやつかね?いや、あたいは此処にたしかに来た。それでも不安なら神の名にかけて約束しよう。あたいは誰も殺さないよ」


「違いますのよ……悪い人はミリアムじゃなくて……うっ!?おぇっ——!」


 レイラはうずくまりその場で吐瀉物を撒き散らした。レイラになにがあったのかはわからないが精神的ショックを受けている。それも重度の。


「えげぇぇ……はぁ、はぁ、おえぇぇブェッ」


「気が済むまで吐きな……家まで送るよ」

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさ——えげぇぇええおぇっ」



 レイラの本邸は平民街にあった。貴族街にあろうともミリアムがいれば楽に侵入出来たであろうが今のレイラには負担がかかり過ぎる。


 レイラの事だけを考えればこれで良かったのだと、自分の事など考えなければ本当にこれが最善だとミリアムは1人納得した。


 ミリアムはレイラをおぶりながら語りかけた。


「……今日中にこの国から離れた方がいい」


「ミリアム?」



「いや、忘れてくれ。気の迷いだ」





「は……あ。——ヴオェッっっ!……はぁ、はぁ……ごめんなさい。ごめんなさい。わたくしだって殺したくて殺してた訳ではありませんのよ……ごめんなさいごめんなさい」



「な、なにを言っているんだい……レイラ?」


 一瞬の間にレイラの顔つきが変わっていた。

 髪はくすみ、目の下にクマが出来ており、頬はやつれ、誰かに謝りながら吐瀉物を撒き散らしている。




「ええぅぅう、だってわたくしは……みんなに生き返ってほしかったから殺しただけですのよ——エゲェェッッ!——はぁ……はぁ……誰も不幸にならないのなら……元通りになるなら……誰だってそうしますわよ」


「本当にどうし——まさか【審判】の影響か!?誰だ!?レイラはいったい何をしたんだい!?あたいに……あたい達に教えてくれ!」



「触らないで!オェッ——ヒギッ、ヒック」

「あ……審判を発動されたのなら……調べる必要があるんだ。審判の持ち主は誰か教えてくれ!持ち主がわかればファティマが確実にそいつを……確実に殺すから」




  「   —————!      」





 レイラはなんと叫んだのだろう。

 少なくとも言語ではなかった。

 ジャサファがその場にいれば……レイ—の叫びの意味を理解出来たのだろうか?



 きっと無理だ。

 理解出来なくて幸せだったと思う。


 言語ではなく誰かを……なにかを成せるなにかを呼び寄せるような……


 あたいはではなく……レ——が呼んだのは……



「  あたいはなにをしたかったんだろか?……。

データを消去する。 どうせ全員殺すんだからこんな記憶ない方が望ましい……これだから感情は嫌になるよ」



……



 ミリアムは雨に濡れる事などお構いなしに残橋に腰を下ろした。


 途中で何人かの人間がミリアムに声をかけた。

 1人は『お前は殺される』と告げ大きなリュックを背負ってその場を離れた。


 1人は貧民街の様子に恍惚としながら姿を消した。


 1人は明日の仕事に関して最低限の条件を伝えて闇に潜った。


 

 一人でもミリアムに声は届いたのだろうか?少なくともミリアムは全く別の事を考えていた。

 それを裏切りと呼ばれる筋合いなど何処にもありはしない。





「  見つけたわよ  」


「……お嬢ちゃんかい……何か用事かい?」


 ミリアムが声の方向を振り向くと片腕を失くしたはずの赤栗髪の少女がそこにいた。

 先日も出会っている。片腕がない事も知っている。

 違うのは……亡腕を形取ったのように包帯で覆っていた。


 そしてもう一つ。


「やられっぱなしは頭にくるから仕返しに来たのよ」


 違うのは少女は口元を赤く染まった口布で覆い隠している事だけ。その2点が少女をまるで別人へと変貌させていた。




「お嬢ちゃん、そんな元気があるのならダロス王都から出て行きなよ。ファティマは間に合わなかったがあたいは今から動くから。逃げるのなら追わない。」


「ありがと、貴女をぶっ飛ばして帰る事にする——わ!」

「! !?  は   やい」


 ミリアムの目では到底捉えきれない速度で柊心は跳躍し頭を蹴り抜いた。頬肉が削れただけにとどまったのは回避できたからではない。


「わざと外したのはわかるわよね?あたしは本気よ。貴女も……本気で来なさい」

「ふ、ふふ。仕方のないお嬢ちゃんだ。もはや羨ましくもないんだけどね。悔いが残らないよう名前を聞いておこうか」



「柊心よ。よろしく」


 一瞬、ミリアムの思考が全て吹き飛んだ。人の名前など覚えないミリアムにとってはその名前は何処かで……


「まさか……奇跡の末子様……かい?は……はは、やっぱり生きていたんだね!葬られたなんて聞かされたけどさ!あたいは信じちゃいなかったんだよ!——末子様が生きていてくれているのなら皆が来るはずがない!!この世界を壊す必要も——」

「あの子はもういないわ」


 柊心の事実にミリアムは残念そうに腰を上げた。

 それが葬られたのは聞かされている。だからこそミリアム達はここに来たのだから。




「そうかい。末子様の残滓ざんしって考えればある程度強いのは納得がいったよ。残りカスはあたいが殺してやるよ。どうせ此処にいる奴らは全員殺すんだから問題ないだろう」


「それは奇遇ね。あたしも貴女を殺してあげるわ」


「  羨望なる奇跡 羨望模写(コピーアクション)  」


 ミリアムが残橋を歩き出した。軽く踏み出したつもりが事実その通りにしか動かず、



 胸に去来するのは先程獲得した致命的なまでの



『あたいが神の名にかけて約束しよう。あたいは誰も殺さない』



「……あたいの奇跡が……なにが起こって——」

「ボーッとしてんじゃないわよ!」


「ぐぁっ!  がぐぅぅ  あ  あ待て!待ってくれ!」




 致命的なまでの弱点すくいだった。








ーーーーーーーー


 おまけ  


  柊心  13歳




 筋力 E −−

 敏捷 D−−

 体力 D−−

 精神 B−

 魔法適正  G ステータスに全てマイナス超補正がつく。また全てのステータスが常時4段階低下。

 行動する毎に能力が1段階ずつ下がる。




 残りカス


 十二の鐘のジギリージャ

 添い遂げるヴァスティージ

 夢と終焉のステッラ・デ・ルークス

 



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