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第42話 迎撃態勢



 貴族達の会議、もとい話し合いの間、レイラは大人用の椅子にちょこんと座っていた。

 周りの貴族達はレイラから目が離せない。

 出された紅茶を音を立てずに優雅に飲む様にその姿に周りの貴族達が息を呑んだ。


「はは、流石カーター卿の娘、礼儀作法のお手本のようですね」

「お誕生祭の時に見た時は随分お元気な令嬢だと思ってましたが……いやはや、半年でこうも変わるとは」

「場を弁えている——と、言った方が正しいのでしょうな。誕生祭では自身が主役、しかしこの場においてレイラ嬢はおまけ程度、その歳にして場の相応を見切っておる」



「ぴょええ?わたくしはお誕生日に時間を割いていらしてくれた高貴な皆様をお真似させていただいただけですわあ」


 別段話す議論も無くなったところで話題はレイラの事へと移りだした。

 王国貴族に限らずほぼ全ての貴族がレイラを狙っている。カーター家、カーター商会の莫大な財産をいずれ継ぐであろうレイラを、


 カーター夫妻は大々的にレイラには財産を継がせないと宣告していたが、毎度娘の自慢話を聞かされている貴族達は信用などしていなかった。



 毎年レイラに会う機会こそあったものの淑女として、中流貴族ならともかく王侯貴族に嫁ぐに値しない。しかしその考えは改めさせられる。


 レイラは僅かな時間とは言え王侯貴族、そして由緒ある王国貴族達が唸る程の所作をしていた。

 長年気品ある子供達を見続け目の肥えた玄人達を唸らせたのだ。



 『間違っても短期間で身に付けられる物ではない』



 脳ある鷹は爪を隠す。

 これがレイラ・カーター本来の姿なのだと確信を持ち始める。




「オホン、ときにカーター卿、卿の屋敷に有名な武人が滞在していると聞いてたのだが本当かね?」


 一人の貴族が先陣を切った。


「?……あぁ、たぶんブレドリパ殿の事かな?妻が彼のファンらしくてね。温泉の沸き出る屋敷に滞在してもらってるがそれが何か?」


「剣を修める者として一手指導をつけてもらいたくてね。カーター卿から口添えをいただきたいんだが如何かな?」


「それぐらいなら構わんよ。それにしてもブレドリパ殿は見た目からは想像も出来んほど品があるが……戦闘などわかりかねる私が言うのもなんだが、とても剣を扱えるようには見えんのだが?」


「何を言うのかね!?一度でも彼の戦いを観たら虜になる事間違いないぞ!」


……


 その後も他愛のない話しが続くなか場を仕切る役割のディヒトは我関せずと言った感じで退屈そうに茶を啜っていた。


 本来ならばディヒトの席は上座、しかし議題もないのにのうのうとその席に着くわけもいかないという謎の信念により末席であるウィルの隣……にはレイラが座っているのでさらにその隣に腰を下ろしていた。


 子供には退屈な話しをレイラは笑顔で聞いていた。そして間を確認しだす。

 退屈な話しが盛り上がる瞬間を狙って声をかけた。


「ディヒト様あ。行方不明の事件、あれは転移魔法陣のせいですわよお」

「……?何を言っているのかね?」


「わたくしなりに調べましたのよぉ〜。転移魔法陣はほとんど一方通行ですわあ。だから知らずに踏み込んだ一般人は外に出されて許可証がないから中に入れないんですわあ」


「そのようなお伽話とぎばなしような大魔法使いがいるのなら是非うちで雇いたいね」



「ぴょえ?ディヒト様のお家にいますわよ。それに嘘だと思うのならディヒト様が直々に平民街の入場記録をご確認なさって門兵に『最近おかしい事はないか?』とお聞きになさってくださいまし、この国は末端も腐ってますから貴方様が動かないと……腐り落ちますわよ」


「……それは私の管轄ではない。ファルス卿に言ったらどうかね?——あそこにいるのが——」

「あの人はダメですわあ。あの人はダロス王国なんてどうでもいいんですわよ。それに今日わたくしが来た目的はディヒト様に貸しを作りに来ただけですもの」



「はあ……アイシャの件もあるしレイラ嬢を無下にはせんがね。後で部下に確認……私自ら確認しよう」


……

………


「わたくしお先にお暇させていただきますわあ。貴族様達の貴重なお話が聞けてわたくし……アルフィーの町で自慢しちゃいますことよお!」


 何人かの貴族が帰った頃合いを見計らい、レイラも席を立った。奥で足音を察知した執事が扉を開く。


「ぴょええ。セバス爺、わたくしの席を綺麗にしていただけます?それとこれはゴミですので捨てといてほしいですわ」


「かしこまりました」



 レイラはセバス封に入った手紙を差し出し感触を軽く確かめた。ゴミだと言われても中を改める訳にはいかない。し 分かる事は、中は三重に折り畳まれている事、そして筆跡からして間違いなくレイラの物だとわかる。


 そして墨と紙の臭の違いから自ずと文章までも感じとる。




 レイラのテーブル周りには汚れなど一切なかった。

 セバスが飲み干されたティーカップを音を立てる事なく持ち上げその場を後にする。


 違和感があった。

 初めから違和感しかなくセバスはゆっくりと、振動を最小限に抑えてカップを持ち上げる。


 カップの下には色の付着した米が不規則に並んでいた。



「……」


 セバスは米を掬い上げ封書と共にゴミとして処理した。






 

 王宮を出たレイラはため息を吐きながら空を見上げた。


「ぴぇぇ……せっかく襲撃に備えてプレドリパ様を配置してますのにわたくしサマーがブレドリパ様を倒しちゃったら自分が痛い目にあうだけっていい加減気付いてほしいですわあ……あとは……あんな方法で届くのか些か疑問ですわねぇ」

 



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