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第40話  犯罪予告



レイラは貧しい人達に食料を与えようと考えていた。ミリアムも時間までの暇潰しとして乗り気だったが、


「『わたくしのお家』って、レイラの家から金を盗むのかい?」

「ですわよ!」


「事情があるんだろうけどさ……なんだい、ひょっとして両親が嫌いだとかそんな理由なのかい?」


「わたくしはパパとママの事が大好きですわよ」



 だったらどうして、という表情を読み取ったレイラは自らの胸の内を明かした。



「パパとママにはわたくしの事で心配をかけたくありませんのよ。食べ物を沢山買う為にお金が欲しいって頼んだら協力してくれるけど心配もしちゃいますわ」

「……あー、その方法が実家に盗みに入るって結論かい?」


「ですわよ!結局同じお金なら楽しそうな方法でいただきますわ!こっちが本命ですわ!」


 ミリアムは口元を手で覆い隠した。幼い娘が考えた馬鹿な行動を笑える訳がない。どれだけ年月を重ねようと最善の方法など永遠に見つからないと彼女は知っているのだから。


 しかしミリアムは大きく笑った。


「レイラは面白い奴だね!仲間の陰鬱な作戦よりも遥かに笑えるよ……それで?あたいはどうすればいいんだい?言っておくけどあたいは頭が良くないからね」



「頭が——心配しなくても大丈夫ですわよ!わたくしは常に知的担当でしたのよ!知的なわたくしと新たな野蛮担当のミリアム!二人は星々を駆ける一瞬のまたたきですわ」


……


 二人は綿密な作戦を立て始める。


「きっとお金は本邸にはありませんわね。貴族街にある温泉付きの別邸に沢山あると思いますわ」

「侵入方法は?ぶちのめして良いのかい?」


「野蛮ですわね。戦闘パートは略奪パートが終わってからと決まってますのよ」

「へぇ……まぁあたいも暇潰しだからレイラの指示に従うよ」


 『指示に従う』その至福の言葉に思わずレイラの頬が緩む。はたから見れば年の離れた姉が妹の遊びに付き合ってあげているような光景だったが本人達にそのつもりは一切ない。


 作戦の練り込みは次第に熱を帯び始める。


「屋根から侵入がカッコいいですわよね……ニーチェ先生様もいませんしどうやって登ろうかしら?」

「何メートルだい?まだ奇跡が入ってるからあたいがレイラを抱えて飛んでやるよ」


「……流石は野蛮担当、頼りになりますわね」

「そのかわり速すぎて泣くんじゃないよ」




「犯行予告とかしたらどうだい?メチャクチャ強い男にやられたんだけどさ、正直清々しいんだよね。やる側も清々しいのか試してみたい」


「まぁ!?それは良い案ですわね!採用ですわ!」

「あとは……名前だねぇ、あたいが決めてもいいかい?今日という出逢いを忘れない為に——魂に刻む為に」


「もちろん構いませんわよ!」


 大まかな作戦も決まりつつありレイラは持っていた紙、売買所で貰った領収書の裏に

『今晩19時にカーター家のお宝をいただきに参ります。

  お宝は星々を駆ける今宵に捧げますので

    怪盗  贖罪の徒花あだはな




「これでよしですわ!」



 レイラは懐から漆黒の石を取り出した。片手に石を持ちもう片手を中空に差し出した。


 レイラの手が光輝き魔力が集約されていく。

 光がおさまるとそこには——



「ぴょええ?」


 レイラと瓜二つな存在が現れた。

 突如の出来事にミリアムは目をパチクリさせていた。


「クローンか……いや、これが魔法ってやつかい?」


「そうですわよ。ここにいるのはわたくしと同等の知能を持ったわたくしの複製ですのよ!」



「ぴえぇえ、今度のわたくしサマーはどんなお馬鹿なお真似をするおつもりですのお?」

「何度も言ってますわよね!わたくしわそんなお馬鹿な喋り方はしませんわよ。もっと知的ですのよ!」


「まずわ説明からお願いしますですわあ」


 複製魔法で創られた存在は初めこそ満足に言葉も喋れず、知性というものはなくフラフラ歩き回り迷惑にしかならない魔法だが、根気よく周りが知識を覚えさせれば、ある程度の言う事は聞き使用者の良きパートナーとなる。


 とは言え基本はレイラだ。

 レイラ以上の事は出来ず、どれだけ努力してもオリジナル以下にしかなれない事は複製品本人が一番理解している。


「ぴえっと、つまりパパーパのお家のお金でここにいる人達に食料を与える——っと」


「そうですわよ。貴女にはこの犯行予告状をパパに届けて欲しいんですの!」

「くだらな」「なにかいいました?」



「ぴよええ?それよりもお金を食料に変える手筈は大丈夫ですのお?成功してもママーマの事ですから……カーター商会では使わない方がいいですわよお」


「どうしてですの?お金はお金ですわよ?」


「あぅぅ、説明が面倒ですわあ。そこの左腕だけやけに細い無骨なお方……貴女は何処か闇で取り引き出来る市場は知っていませんこと?ダロス王都ならそう言った場所は沢山あるはずですわあ」


 ミリアムは考え込むまでもなく一人の人物が頭に浮かんだ。この世界に来て数少ない知り合いのうちの一人が。


「……金さえ貰えれば何でもやる奴は知っているね。金次第で簡単に裏切る奴なんだけど……」


「その手の類は逆に信用出来ますわあ。わたくしが直接お話ししますから何処にいるか教えてくださる?」


……



 複製レイラは犯行予告状を持ってミリアムが教えてくれた人物の元に向けて上品な歩き方でスタスタと行ってしまった。


「レイラのクローンって頭良さそうだね」

「当然ですわよ!わたくしと同じくらい優秀なんですのよ!……変な喋り方さえしなければ……ですけど」


「同じねぇ……。皮の見た目だけは本当に同じだね」







ーーーーミリアムとレイラのおまけーー



「あたいの仲間に関しての相談なんだけどさ」

「唐突ですわね。はい。それがどうしましたの?」


「あたい達【七つの美徳】には美徳に関する能力が備わってるんだけど……あたいは羨望。他には摂食だったり、純潔だったり、寡欲だったりと色々あるんだよね」


「はいはい。そのへんは本編で説明出来ないからウェルカムですわよ!」

「そこで相談なんだけどさ……【勤勉】で思いつく能力ってあるかい」


「きんべんきんべん……辞書は何処にありましたっけ——」

「未登場の奴も含めて全員決まってるのにジャサファの奴は決まってなくてね……羨ましくもない可哀想になっちまってさ」


「わたくしが決めていいんですの?とっても凄い能力にしますわよ?」

「そうしてくれると助かるよ」


「その惜しみない一途さがもたらす奇跡!

勤勉の奇跡は【ピーマンを生で食べる】能力ですわ!」

「……ジャサファの奴も喜ぶよ」


「その代わり悪い事に使っちゃダメですわよ!」

「逆にどうやったら悪事出来るんだい?」




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