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第39話  贖罪



 倒れ伏した人達が魔物と化していく中ミリアムは淡々と銃弾を眉間に撃ち込んでいく。

 人間と急所が変化している魔物もいたらしく数名の魔物は今もなお呻き声をあげていた。


 レイラにしてみれば鉄の塊を向けたと思った瞬間、魔物に大怪我を負わせた魔法のような出来事だった。

 

「魔物に化けてましたの?」

「違うよ。勤勉……知り合いの考えでは『過去を引きだす薬』だそうだ。こいつ等の前世は魔物だったんだろうね」


 レイラは黙っていようかとも思ったがミリアムが自分に良くしてくれる事もあり恐る恐るその事実を告げた。


「あの……わたくし……その薬を舐めちゃいましたわ」

「舐めた程度ならちょっと物忘れしにくくなる程度だよ。定期的もしくは一度に大量に摂取する必要があるから泣きそうな顔しなくても大丈夫さ。ちなみにどのくらいの量を舐めたんだい?」


「……こう——ざざぁって」


「それは流し込んでるだろう!舐めるってレベル超えてるじゃないかっ!!」


「ひぃ!ごごごめんなさいですわ」

「あ、あぁ……別に怒っちゃいないよ」


「わたくしも魔物になっちゃうんですの?」

「あたいが見た限りだと人間は1割弱の可能性で魔物になるね。一応勤勉に解薬方法がないか聞いといてあげるけど期待しないでおくれよ」


 レイラはその場にへたり込んでしまった。興味本位で訳もわからない粉を食べてしまった結果、低確率で『魔物になる』と宣告されたのだ。


 レイラはやり場のない感情を小瓶に込めて思い切り地面に叩き——破片が飛び散るかもしれないので壁に向かって放り投げた。


「こんなものーー!うぇえぇえい!!」


 パリィィンと小気味良い音を立てて瓶は砕け粉が宙を舞った。その時レイラとミリアムは同時に気付く。


「あ!これ吸っちゃったら無関係の人も魔物になっちゃいますの!?集め——集めなきゃ!」

「……」


 慌てて宙に舞った粉をかき集めようと試みたが、風流されて数秒後には影も形も消えていた。


「あ、あ、ど、どうしましょう。わたくしのせいで」

「お嬢ちゃん……これ」


 ミリアムは風に流される前に全てとはいかないが少量の粉を掴んでいた。その顔は疑問に満ちている。


「あ!悪い粉ですわ!全部捕まえてくれましたの!?」

「……いや、これ……小麦粉だよ」


「え?小麦粉って……クッキー?」

「たしかに小麦粉は材料の一つだね。あたいったら一人で勘違いしてたようで……恥ずかしくなってきたよ」


 ミリアムにしてみればメネントの薬を調べようとする勇気ある少女のつもりだったが実際は小麦粉、おおかた良質な小麦を探そうとしていたのだろうと言う結論に至った。


「心ちゃん、小麦粉のなにを調べてましたのかしら?」


……



 柊心の調べ物は小麦粉という結論に至ったのでミリアムと手を繋ぎながら貧民街を歩いて回っていた。


 奥に行けば行くほど街はカビの臭いがキツくなっており地面に項垂れている人たちの目には正気がなかった。


 レイラにはその光景が信じられなかった。


「半年前は皆さん元気でしたのに……」

「どこか——。データにあるね。富豪の娘の誕生祭の時だね。あの時は食料に酒を振る舞ったらしいね……半分はメネントのせいもあるけど、もう半分はその富豪の娘のせいでもあるよ」


「どういうことですの?」

「貧民街の奴等は味を占めちまったんだよ。泥水を啜って生きながらえてたところに極上の甘味が振る舞われた。虫を食して命を繋いでいたところに本物の食事が与えられた……元の生活に戻れないんだよ」


「働いてちゃんとした食べ物を買えばいいんではないんですの?富豪さんのせいにされても困りますわよ」


 レイラの貧民街の人を見る目つきが変わった。自分ではなにもせずに与えられる事を待つだけ。

 そして今も動こうとせずに誰かからの慈悲を待っている。



「……何度も頑張ったはずだ。真っ当な暮らしに憧れていたはずだ。でも届かなかったんだよ。大勢が享受出来た幸福に届かず憧れるだけ……レイラがどれほど偉いのか知らない。でもね。羨望する事そのものを否定してはいけないよ」


「う……ミリアムの言ってる事は難しくてよくわかりませんわ」

「わからなくていいさ。あたいも長年生きているけどさ、いまだに救いの道なんてわからないんだから」


 先程までより明らかに冷たくなったレイラは少しだけしょぼくれて考え始めた。


「わたくしの尊敬する先生が言ってましたわ。『ご飯食べて寝てれば幸せ』だって」

「はは……なんとも怠惰な先生だね」



「決めましたわ!……ここの人達に食料を運ぶのをミリアムにも手伝ってほしいのですけどお願いできます?」

「時間もあるから構わないけど何処から調達するんだい?あたいはここの通貨を持っていないよ」


「お金はわたくしも持ってませんわよ。ですけどお金も食べ物もたくさんあるところから貰っちゃえばいいんですのよ!」


「……面白そうじゃないか。どこを襲撃する気だい?」




「わたくしのお家ですわ!」





ーーレイラとミリアムのおまけーーーー



「そう言えば此処って相談に乗ってくれるんだって?」

「随分昔にそんな事してましたわね。なにか困り事があるなら相談に乗りますわよ」


「あたいの能力に【羨望の奇跡・苦悶】と【嫉妬の罪業・罪過】があるんだけどさ、【羨望の奇跡】は他者を羨ましがる感情で発動するんだけど、もう一つ嫉妬の発動条件を作者が考えてないんだよ……どうすればいいかな?」


「えぇ〜……わたくしが答えていいのかわからないガチなのがきましたわね」

「まいるよね……あと数話……第44話で発動する予定なんだけどね。もう無条件でもいいかな?」


「別にいいんじゃないですの?あ!でもわたくしに使うのはやめてほしいですわ!わたくしに使うのなら条件は【ブクマ1000突破】これが使用条件になりますわよ」



「何言ってるかわからないけど多分大丈夫さ。おませなお嬢ちゃんを返り討ちにしてやるだけだから」


「それならいいですけど、因みにどんな能力ですの?」

「簡単に言ったら時間を止める」


「へー」

「驚かないのかい?」



「そんな事出来る人沢山いそうですわ」

「……はは。それはなんとも……まいったね」



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