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第38話  敵の中の味方


 レイラは平民街から貧民街へと移動していた。陰鬱な雰囲気に加えてたまに見える人も怪訝な顔をしている。


「うぅ〜以前来た時は皆さん歓迎してくれましたのに……やっぱり変装しているせいですの?」


 今のレイラは大富豪の娘のレイラ・カーターではない。身なりも普通の誰も名を知らない一人の少女にしか見えなかった。


 レイラは目があった人に勇気を振り絞って歩み寄った。


「あの、この薬を作った人を知りませんの?」

「……あー、……あー」


「あ、失礼しましたわ」


 様子がおかしいのは一目見て理解出来たが話しが通じる様子もなくレイラはすぐさま引き返そうとして


「あー、——薬、服……売ったら、金に……買える」

「え?きゃっ!?な、なにするんですの!?」


 男はレイラの服を乱暴に掴み引き寄せた。

 目は虚で口からはヨダレを垂らしなにを考えているのかわからない。

 しかしレイラでも身の危険が迫っている事ぐらいは理解できた。


「は、離して!服を離して欲しいですわ!」

「あ、あ……。大人しくしろ!このクソガキ!」


 「ひっ!?だ、誰か……助け……あ。ダメですわよ」




 男が急に大声を出した事によってレイラは身をすくませた。慌てて助けを呼ぶ事すらも躊躇った。


「靴も売れる……髪の毛……皮は……」

「全部売ったら……買える……買い戻せる」


「それよりもキレイなままで……その方が……高く売れる」


 世間知らずな事を差し置いてもこのような場所に来る事自体が自業自得だ。

 ここはレイラが知っている煌びやかな世界ではない。

 弱い者は穴にこもりどぶネズミのようにコソコソ嗅ぎ回るしか生き残る方法などない。


 いつの間にか大の大人数名がレイラを取り囲んだ。

 その中には片腕が歪にはえた女性も含まれており他とは違う目の色をしている。



「このお嬢ちゃんになにかする気かい?見つめるだけで満足出来ないゴミ共がっ!」


 女性は好奇心に満ちた表情で男たちとレイラを交互に見つめていた。


「あー、お前も……女、高く売れそ「はっはぁ!あたいを女性として見てくれるとは嬉しいね!」


「ごあっ!?ご……」


 女性が腕を軽くしならせて男の額めがけて指を弾いた。男の額から血が噴水のように飛び出して泡を吹いてその場に崩れ落ちた



「ただのデコピンだからさ。安心しなよ。さぁて……残りの奴等もかかってきな!あたいの奇跡が続いてる限り殺さないからさぁ!」


……

「ひ、ひぃぃ!人、人殺しぃ!」


 周りにいた最後の男は這いずりながら逃げ出した。

 レイラと女性の近くには死体としか思えない人々で溢れている。


「わたくしを助けてくれましたの?」

「そう見てたのならそうしておこう。でもね、だとしたらあたいはお嬢ちゃんを助ける為にコイツらを殺しちまったんだよ?この罪はお嬢ちゃんが被りなよ」


 レイラは倒れ伏した人に軽く目を向けた。

 自分を襲おうとした人間に同情する訳ではない。

 それよりも……


「死んでませんわよ」

「ほう?心臓を止めてるんだよ。なにをもって生きていると言えるんだい?」


「わたくしは夢で沢山の人の死を見てきましたわ。知らない人に大事なお友達、家族、その人達はみんな——身体からなにかが抜け落ちていましたのよ。ここにいる人達は動いてないだけですわ……だから死んでない」



「……。あたいはミリアム・ジェントって名前だ。お嬢ちゃんの名前を聞いていいかい?」


「ミリアム……わたくしの名前はレイラですわ。助けてくれてありがとうございましたわ」



「純真な思いを素直に受けるのは気持ち悪いから正直に言っておこうか。あたいは羨望の奇跡……魔法って捉えてくれて構わないよ。その弊害でつい助けちまっただけさ。普段なら助けない」


「奇跡……加護の一種ですの?」

「まいったね。そっちの方が近い。でも神様が与えてくれた慈悲とあたいに刻まれた苦悶を同列に語っちゃいけないんだよ」


「んー、よくわかりませんわね。あ!そうですわ!わたくしこの粉について調べてるんですけどなにか知りませんの?」


 レイラはポケットから小瓶を取り出そうとしたがミリアムはそれを手で制してよく見もせずに答えた。


「それはメネントが作った薬だよ。吐き気がするから出さなくていいよ。それにさっきお嬢ちゃんはそこで気絶してる奴等は死んでないって言ってたよね……正解だ」


 ミリアムがレイラを引き寄せ後ろへと下がらせた。心臓が止まっている男性の一人が暗緑の血反吐を吐きならが身体を起こし始めた。



「ごあ——あが……あがあぁああ!!!」



 雄叫びをあげる男性、いや、もはやこの人物は人間ではすらない。



「……ま、魔物?」


「メネントの薬を口にした奴は過去の因果……あたいに言わせたら確率で魔物になる。下手に触れるんじゃないよ。罪を押し付けられてレイラも同じになっちまうからね……さて、どうしようかね」


 ミリアムは懐から鉄の塊を取り出し魔物のに額に向けた。


「……堕ちろ ザップショット」


 声と同時に空が青白く輝き魔物は押し潰されミリアムが持っていた鉄の塊はその場で溶け落ちていた。



「やはりまだ追いつかないかい。こんな状態で末子様を屠った奴を倒せるのかねぇ?残りは時代遅れの拳銃で始末するとしようか」








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